”評価”とは一体なんなのか(後編その6)
プロ雑用です!
今日も評価についての続きです。
一体いつまで続くんだ?
おさらい
後編その3からその5まで、評価に重大な影響をあたえる3つのポイントを解説してきました。3つのポイントは以下のようなものです。
1.脳は、最初に”好き嫌い”で判断している。
2.脳は、連想して”好き嫌い”を強化する。
3.脳は、好き嫌いを、良し悪しに変える。
つまり、人は他人を評価するとき、能力の高い人を評価しているのではなく、好ましい人物の能力は高いと評価し、その理由付けを行い、さらにその正当化のために好き嫌いを”良し悪し”に変換している。そしてこれはすべて自動で行われている、ということでした。
典型例のパターン
「おれはBくんを買ってるから、なんとかみんなにも評価させたい。彼はみんなが思ってるよりできるやつなんだ」と、いうようなことは、この典型的な例でしょう。
この評価者は、確証バイアスによってBくんの良いところは瞬時に多数出てきます。さらに、そこには、恣意の一貫性により、もっともらしい理由が加わります。しかし悪いところはほとんど思いつかず、答えが出てくるのに時間がかかります。悪いところが出ても「確かにそういう面はあるが、うんうんかんぬん…」と続くわけです。よく見ますね。
時間をかけて出てくるのはさほど悪いことでもないちょっとした欠点程度のものです。好きなものには確証バイアスも恣意の一貫性も働きませんから、理由がなかなか思い浮かばないのです。
これは逆の場合でも同様です。「みんなはXを高く評価してるけど、俺は違うなぁ。なぜなら●●だし、●●みたいなところがあって…」と、スラスラとダメな点とその理由を挙げることができるのに、良い点はほとんど考えが出てこないのです。
好き嫌いは止められない
行動経済学の様々な研究が示しているとおり、好き嫌いというのは、止めることができません。自動的な本能です。
「なんか嫌い」という理不尽な本能
今日出会ったYさんが、むかし私を理不尽に怒鳴りつけた人に顔が似ている、という単に「似ている」というだけで、関係の無いYさんのことを好ましく思えない…という経験は誰しもあるでしょう。これは止められるものではないのです。
だから、どの組織にも「何度失敗しても挽回のチャンスを与えられる人」と「一度の失敗ですべてを失う人」が発生します。これも、好き嫌いが原因で発生してしまうのです。
「そんなバカな」と思う人は、ぜひ、頭の中に一番キライな人を浮かべてください。そして、その人が自分と変わらない成績なのに、明らかに自分より上の評価を受けていたらどう思いますか?逆に低い評価を受けてたらどう思いますか?それが答えです。
いくらそれっぽい理屈を並べようが、その根源にあるのは、好き嫌いです。評価者が被評価者を評価する根源も、被評価者が下された評価に対して不満を抱くのも、同じように好き嫌いです。
評価制度は多様性を殺す
つまり、評価制度で下される良し悪しは、「自分にとって都合が」良いか悪いかです。つまり群れの中での評価も「自分にとって都合が」良いか悪いかです。都合に影響しない良い悪しは人間にとって「どうでも」良いのです。
評価はすべて幻想である
人が人を評価するということは、「人間はすべて同じものである」「努力と結果は結びつく」という古典的な幻想をベースにしないと成り立たちません。評価制度というものは、制度ではなく幻想なのです。
「仕組みを整えれば有用な評価制度は実現できる」
と、ほとんどの人は思っているでしょう。が、残念ながら人間が多様である以上、根本的に不可能なのです。
機能がちがうものは平等に評価できない
いやそんなことは無い、できる、という方々は、まず、出刃包丁とハサミと刀と十徳ナイフとメッザルーナを、同じ刃物として評価してください。事前のすり合わせなしに、他人と同じ評価になることは、ほんどありえません。種類が増えればもっと困難になるでしょう。
また、サッカーボールとラグビーボールがどちらがボールとして優れているか、あるいはサッカーボールと出刃包丁に対して万人が納得する公平で平等な評価をしてほしいものです。
多様で機能性が曖昧な人間という存在
人間は上にあげた道具ほど単一の目的のために作られた道具ではありません。あえて道具に例えるなら、多機能すぎる道具、であり、しかもその多機能も性能や数、種類がバラバラで一致しません。だからこその多様性なわけです。
単一あるいは測定可能は複数条件の組み合わせによる評価制度は、こういった多様な人間性を否定し、単一の機能をもった道具としてしか見ないということです。しかも、その評価は繰り返してきたとおり、そもそも本能と認知の歪みによって、自分たちで思っているほど公平でも平等でもありません。
ではなぜ、組織は評価制度を欲するのか?
まだまだ続きます。
また次回!
それじゃ、また👋
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