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”評価”とは一体なんなのか(後編その5)

プロ雑用です!
評価に重大な影響を与える認知バイアス3つの最後は、
「脳は、好き嫌いを、良し悪しに変える」です。


脳は、好き嫌いを、良し悪しに変える

損切りできない脳

人は1万円を得る喜びより、1万円を失う落胆のほうが大きいと、さまざまな実験で明らかになっています。これは手にしてないものより、今所有しているモノを過剰に重要視するという特性があるからです。
これを損失回避バイアスと呼ばれます。

この損失回避バイアスは、人・物・金などの物質的な現象以外、スキルや経験も含めて人の所有意識に含まれることすべてに適用されます。
これまでの話の通り、それは「自動的に」に行われます。

集団・群れにおいても、新しいメンバーを得ることよりも、古いメンバーを失うことのほうが、心理的ストレスが大きいことがわかっています。集団に入るためのハードルは、その集団が長く続いている、すなわち歴史が長ければ長いほど上がっていく性質があります。

小さい頃より大きくなってからのほうが、入りやすくなる、という組織はありません。組織は企業であれ大学であれ、規模に比例して入るためのハードルは厳しくなるのが一般的です。

身内びいきは当たり前

人同士の距離感は、他人→身内に近づくにつれ、重要度や優先度が高くなる事は、みなさんもお分かりでしょう。
古く長く、苦労を共にした仲間のほうが、昨日知り合った人よりも重要なのは、ごく自然で当たり前と言えます。ほとんどの人は、他人の子より、自分の子のほうが可愛いと思うでしょう?

自分の所有物を過大評価してしまう傾向は、人の基本的な偏向であり、自分自身に関係のあるものすべてにほれこみ、過度に楽観的になってしまうという、もっとも全般的な性向を反映している。

予想どおりに不合理

自分に親しい存在というのは、自ずと高評価になりやすいことは、群れを維持し、子孫を多く残すための有利条件だからです。よって、後から入ってくる新参者は、評価されにくい傾向があります。
これは、群れを作る他の社会性動物でも同様のことが観察されます。

情より利益が優先される場合

そして、この傾向は上記までの話と、真逆のパターンとしても発生します。そのパターンの代表的な例を2つあげて解説します。その二つのパターンは以下のようなものです。

  • 新参者が集団、あるいは上位者(支配層)にとって多くの利得(プレゼント、貢物など)を持参してくる場合

  • 群れの上位者(支配層)自らの意思で、新参者を群れに引き入れた場合

前者の場合は、物であれば物質的金銭的な価値、事であればそれが群れにもたらす将来的に明らかな利益によって評価されます。わかりやすいのは営業マンが顧客を引っ張ってくる場合など。

後者の場合は、一見奇妙ですが、上位者(支配層)が、その新参者を引き入れた際に支払った代償(損失)の大きさによって判断されます。すなわち、多くの価値を支払って得たものが、より高い評価になるということです。

自分の決断がほんとうは直感、つまり胸の奥底で望んでいるものから来ている場合、わたしたちはときに、その決断が合理的に見えるように仕立てたくなる(中略)とくに重大な選択をするときは、自分のくだす決断が理にかなった慎重なものだと思いたいがために、だれでも必要以上に頭を回転させてなんとか正当化しようとする。

予想どおりに不合理 より

私は間違ってない、と信じたい

ある商品を買った人は、買った後に「評価の高いクチコミを高評価にする」ということが分析で明らかになっていますこれはその商品を買ったことが、間違いのない行動だったと、評価の高い口コミを見ることで強化することで、自分の判断が正当であったと信じ込もうとするからです。

商品が高価であればあるほど、その傾向が顕著にあらわれます。100円のお菓子より、1000万の車の方のほうが、失敗したあとの後悔が大きいですよね。だから後からでも自分の正当性を獲得したいのです。
これも、損失回避バイアスの特性です。
人間は「自分が間違ったと認めることが何より恐ろしい」のです。そしてこれは、集団のなかで地位が高く責任が重くなるほど、より強化される傾向があります。

歴史を振り返っても、王の寵臣が悪政を振るい国を滅亡させた話、招いた人物に騙されて重用すべき臣下を不当に扱ったために国が滅亡した話など、類例は枚挙に暇がありません。

過去と今の感情に一貫性があるかどうかが重要

人は、自らの行いの間違いに気づきずらい、というよりたとえ間違いに気づいたとしても、自分の過去の判断とそれに伴う感情が強烈に反発するため、「正しくあろう」とすることがとても難しい。それどころか、間違いを他人から指摘されればされるほど、いかに自分の行動が正当であるかを、さまざまに主張するものです。陰謀論にはまりやすい人はこの特徴が顕著に出ますが、そうで無い人にもこういった傾向は例外なくあるのです。

たとえば自分が正しいと思い込んでいる意見に反対する人を排除しようとするなんて、どこの組織でもよく見かけますよね。

一時の感情ならともかく、それが長く続いてしまうのはなぜでしょうか?
間違いをなかなか認めることができない、というこの傾向は、恣意の一貫性で説明されます。

恣意の一貫性の基本的な概念は、たとえ最初の価格が「恣意」的でも、それがいったんわたしたちの意識に定着すると、現在の価格ばかりか、未来の価格まで決定づけられる(したがって一貫性がある)というものだ。

予想どおりに不合理 より

恣意の一貫性はマーケティング分野でもよく利用される人の基本的な行動パターンの一つです。マーケティング用語としてはハーディング、アンカリングと呼ばれています。

人は自分が以前とった行動を基準に良し悪しを考えます。たとえその行動が間違ったものだと気づいたとしても、次の行動では、前回の判断を正当化するために更に強化された行動をするという特性があります。つまり一度間違えると、ずっと間違え続けるのが、人間としては当たり前なのです。
逆に言うと間違えを認めることが感情に反した異常行動なのです。

今の評価は過去の評価に依存する

直近の評価が高い人は、次の評価も高くなりやすいということが実験によって明らかになっています。高評価を与えているものこそ、群れを維持するためには必要だと過去に判断したのだから、次の評価を下げることは、それが間違っているということ。そんなことは、ほとんどの場合認められない、と自動的に判断している、ということです。

さて、今回で評価に重大な影響をあたえる3つのポイントの解説が終わりました。3つのポイントは改めて記すと以下のようなものでした。
1.脳は、最初に”好き嫌い”で判断している。
2.脳は、連想して”好き嫌い”を強化する。
3.脳は、好き嫌いを、良し悪しに変える。

次回からは、このポイントを振り返りつつ、人間がなんのために評価するのか・何を評価しているのか、について語っていきたいと思います。

それじゃ、また👋

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