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追想のローズマリー

ローズマリーは、古くから、記憶や思い出の象徴とされてきた。地中海原産のこのハーブと Memorization が、どう関係するのか。

気になった人は続きをどうぞ。


『Ophelia』Sir John Everett Millais

Ophelia: “ There’s rosemary, that’s for remembrance. …”

オフィーリアの「ローズマリーは思い出のために」は、錯乱してからのセリフなので、なんとも痛ましい。

“Rosemary is for remembrance between us day and night. Wishing I may always have you in my sight.”  ーClement Robinson

「思い出のローズマリー 昼も夜もふたりの間に
いつもあなたが目の前にいますように」ークレメント・ロビンソン


ギリシャ・ローマ文明にて。死者たちは、その手元にローズマリーを添えられ、学生たちは、頭や髪にローズマリーを飾ったという。

最も古く文献で確認されるのは、約5000年前。大昔から、ローズマリーの薬効として、思い出の保存性や記憶の固定性が、信じられていたのだ。

ローズマリーは、本当に、記憶力を高めるのか。


ある研究で、ローズマリー・オイルに触れると、長期記憶が約15%向上すると示唆された。

植物は、光合成→ブトウ糖→炭水化物や脂質を生合成。根→窒素をとり込み→アミノ酸やタンパク質を生合成。これらの生合成過程で、さまざまな植物化学成分を合成。その数、1種類の植物で数百におよぶ。

ローズマリーのもつ化学成分の中で、記憶力に影響を与えているのは、ウルソール酸やロスマリン酸であろう、と推測されるそうだ。

この結果が発表された後(2017年)、英国最大の健康食品業者の、ローズマリー・オイルの売上が2倍に。試験シーズン中は、さらに売れた。


いにしえの知恵、いや勘か、すごい。

ミイラ作成の過程で、ハーブが使われていたのは、防腐効果を事実上(目視で)確認していたからなのは、理解できる。

しかし、ローズマリーの化学成分が記憶力に影響するというのを、まるで確信していたかのような人々の行動。これには、驚かされる。


おまけ

ラテン語の「rosmarinus」(海のしずく)。海岸に沿って自生していたことから。語源はこれだ。

ローズマリーのローズはバラではない。だが、英語の「rosemary」は、聖母マリアが幼いイエスを連れてエジプトへ向かう際、ローズマリーの中にイエスの身を隠した。すると、美しい花が咲いた。このエピソードからだ。マリアのバラ(花)でもあるのだ。


参考文献