鍵忘れ(短歌も)


鍵忘れ選手権があったらトップを狙える。正確に言えば、鞄のどこに鍵をしまったかド忘れ選手権。今日もまた玄関の前で眉間に人差し指を当て古畑ポーズをしていた。
昼前に外へ出て…鍵はかけた気がするから、多分バックの中にある…。ポーチの中に入れたはずなんだけど消えてるってことは、いよいよどこかで落としたか...?いや、なんかジャラジャラと音がするからどこかに紛れているはず。ここか?ノートの間か?と古畑任三郎も戦く推理をしていると、どこからともなく「あったのかいおばさん」が現れる。

「またアンタかい。毎度毎度同じことしてんねえ」

「すみません、鍵がどこかに行ってしまって…」

「鍵に住所を与えないからこうなるんだよ。よくお探し」

「はい、今すぐに…。あ、多分バックの底の端っこの方にありそうです」

「ああ?あったのかい?」

「お騒がせしました。毎回すみません」

「はあ。謝る姿だけは洗礼されていくねえ」
おばさんはどこかに帰って行く。

うちは女性専用賃貸で二重ロックになっている。公共玄関を無事に通過し、自室の前に来る。
...鍵はどこだ。
「アンタまたかい。こっちも暇じゃないんだよ!」

鍵なんかひとまとめにして、ついでにキーホルダーでも付けておけばいいのにそれが出来ない。ジブリ美術館のお土産ショップに置いてあるという、何の作品に出て来るのか分からないシロクマみたいなキーホルダーを鍵に付けるのが夢なのだ。それまでは現状維持で行こうと思う。維持でいいのかな?


今では笑えるちょっとパンチの効いたお話なんだけど、カウンセリングを進めていく中で小学生くらいの時に姉と喧嘩をしたことを思い出した。現在は程よく良好な関係の姉妹だが、小中学生の頃はほぼ憎しみ合っていた。
いつかの夜中の3時ころ、なんでそんなに大きな争いになったのかは忘れてしまったのだけど、取っ組み合いをしている最中に姉が「殺すぞ!」と言ってきた。それを聞いたわたしは台所から包丁を持ってきて、「やってみろや!」と床に突き刺した。売り言葉に買い包丁とはよく言ったものだが、まさか本当に凶器を差し出されるとは思ってなかった姉は怯んでたし、わたしも買った手前後には引けずお腹に力を入れて待ち構えていた。2人とも「おお…」となって見合っており、間に挟まれた包丁も気まずそうにしていた。「い、一旦包丁はしまって拳でやりあおっか」と台所に戻ったところで騒ぎを聞きつけて来た母と遭遇し、包丁を持っていたわたしだけがべらぼうに怒られた。未だに腑に落ちない部分もあるが、深夜の昂りに任せて喧嘩するもんじゃないなと思った。

と言うことをカウンセリングの先生に話したら、「しのざきさんから攻撃的な話を聞いたの初めてかも。他にもあればもっと聞かせてちょうだい」的なことを言われたので、父が嫌いだったので機会をうかがってましたと伝えたら、「あら~」と笑顔でメモしてた。お金を払ってるにせよ、物騒なお話が聞き入れられた経験は初めてだったので、ちょっとビックリ(喜)。前科持ちにも前科持たせにもならなくてよかったね。

今度はキッキッキッと鳴く虫が部屋に入ってしまった。ほんのり切ない。




ノコノコのミイラみたいにあいつらは
不死身でしかも恋をしている

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