10マインドフル・ステップス 仏陀の次第説法③天の話:後編

皆さんこんにちは。

前回の10マインドフル・ステップス 仏陀の次第説法③天の話:前編では、仏陀の次第説法の天の話の予備知識として必要な五道や天界の説明などをさせていただきました。

今回は、仏陀が天の話を説いた理由や天に赴く方法などについての説明をしたいと思います。


死後の不安を先に解決する

仏陀は一般的な在家仏教徒を対象に説法する場合は、いきなり瞑想修行を前提にした高度な智慧や悟り・解脱の話から始めることは基本的にはほとんど為さりませんでした。

大抵の場合は、布施で功徳を積むことと戒を守って悪行為を避けることを説いて死後に地獄を避けて天界に赴ける方法を先に説いてから智慧のセクションに進むというのが次第説法の基本的なスタイルです。

当時の人々は、戦乱や疫病や厳しい身分制度に基づく差別や暴力の問題などで死の恐怖を現代人よりも身近に感じていたので死後のことは重要な心配事だったのだと思います。

先ずは、一般の人々が悩んでいる死後の不安の問題を解決して安心させてから智慧の話に移行するというのが仏陀の次第説法のプログラムなのです。


天の話はセーフティーネット

現実的な問題として、人々の知的な理解能力や機根や生活環境などは様々ですから説法を聴いても理解出来ずに智慧が生じないケースや社会的な職業や生活環境などの影響で瞑想修行を実践することが難しいという人々も出てきます。

その場合でも、戒を心がけて悪行為を避けて布施などで功徳を積むように説法することで、悟る機根に乏しい人々の場合でもその教えを聴いて出来る範囲で実践して気をつけていれば悪趣に堕ちることを避けて天に赴きやすい状態を保つことができるのです。

本格的に仏教を学んで瞑想実践に入る際にも、功徳を積むことや戒を守ることは基本的には必須になりますので無駄にはならないのです。


天界は一時的な避難場所

苦と楽のバランスで比較すると、人間の世界の場合は基本的には苦と楽のバランスがプラスマイナス0に近い次元だと説明できます。

天界の生命の場合は、共通して人や畜生のように肉体を持たない生命形態なので、基本的には肉体を維持するための食料の生産や確保や配給の問題や病気や怪我などの物理的なダメージで死亡するという問題が起こらないので寿命はとても永く楽を享受する境涯という特徴があると言われています。

悟って輪廻を解脱しない限り、どこかの境涯に生まれてしまうので悪趣よりは善趣の境涯に赴く方が良いのです。

善趣の中でも、人間の場合は転生するタイミングで受肉可能な肉体が用意されてなければならないので確率的には非常に難しいのです。

現実的には、人間から人間に転生するのは非常に希ですから善い業がアクティブ状態の人間が臨終した場合はほとんどが天界に一時的に避難することになるのです。


天界に赴く方法

悪趣に堕ちるような悪行為を避ければ、消去法的に善趣に赴くことになります。

仏教を信仰しなくても、道徳を守って善い行いをして心が明るく清らかに生活していれば、基本的には地獄などには堕ちる悪因が生じないので自動的に善い境涯に赴きます。

反対に、仏教を信仰していても道徳を守らないで人を殺したり犯したり盗んだり詐欺をしたりという悪い行いをして、心がどす黒く汚れている場合は地獄などの悪い境涯に堕ちます。

特に重い罪になる悪行為をしてない人の場合は、五戒を守るようにして新たな悪業を作らないことと、過去の悪業が発動する条件が揃わないように気をつけて明るく元気に生活していれば悪い境涯に堕ちる可能性は低いでしょう。

不安な方は、布施や慈悲の実践なども心がければ更に安心だと思います。

仏陀によると、仏法僧の三宝に帰依して財力や能力に応じて布施を行ったり五戒などの道徳を守る人は基本的には地獄などには堕ちないとされています。

悟らない限りは、輪廻を続けることになりますからこれは一時的な対処法になりますが、とりあえず現世で地獄に堕ちるような大きな悪行為をしたり細かい悪行為を積み重ねたりして悪因を作らなければ、来世には善い境涯に赴くことになるのです。


重要なポイント

・戒を守るように気をつけて悪因を作らなければ、来世に悪い境涯に堕ちるという不安は解消できます。

・現実的には、全ての人々が現世で悟ることは難しい場合もあるので、戒の実践で悪い行為から離れることと、布施などの実践で善い行為をすることを心がけて現世で悟れなかった場合も想定して悪趣に堕ちないように予防線を示しておくことは重要です。

・布施や戒を守ることなどで積まれた功徳は、修行して悟るために必要な糧になりますし、悟れなかった場合でも功徳によって悪趣に堕ちることを避けて天に赴かせるという果報をもたらすので無駄にはなりません。

・仏教では行為の影響を重視しますので、仏教徒であろうとなかろうと、善い行いをしていれば善い境涯に赴き、悪い行いをしていれば悪い境涯に堕ちるのです。

・しかし、これらは一時的な対処法に過ぎないので、悟らない限りは輪廻が続くので不確定要素は残ります。


終わり

今回は、仏陀の次第説法の三番目のステップである天の話についての解説をさせていただきました。

次回は、10マインドフル・ステップス 仏陀の次第説法③諸欲の過患の解説をしたいと予定しています。

ここまで読んで下さった方々に智慧の光が現れますようにと御祈念申し上げます。