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映画感想:樹海村(ネタバレ注意)

 約1年ぶりの記事だが、決してこのnoteの存在を忘れていたわけではない。
 このコロナな世の中、クソ田舎から映画を観る為に人の多い都会へ行くのを、ずっと自粛していただけなのだ。

 緊急事態宣言中に何を言ってやがると思うかもしれないが、許してほしい。地元、そして映画館のある街で、コロナ感染が日にゼロ、もしくは一桁まで抑えられ、尚且つクラスターが長期にわたって起きていないという点を踏まえての決断である。
 我がクソ田舎は都市ほどコロナの洗礼を受けていたわけではないが、クソ田舎の人間なりに、自粛意識は持っていたつもりである。
 まあ、身の周りには何にも考えず、平気で都会へ繰り出していた者もいるのだが。そこは個人の意識の問題なのだろうけど。
 僕は数えるほどしかコロナ感染者が出ていないクソ田舎の人間なので、差別されるのが怖くて滅多に出掛けなかった。田舎は陰湿で前時代的な考えの人間ばかりなので、もし感染したら絶対に差別を受けるだろうなと考えていたからだ。

 まあ、ぶっちゃけると、危険を冒して映画館に行くほど、見たい映画がなかったということもあるのだが。

 ともかく、約1年ぶりに映画館に赴いたわけだが、せっかく人が久しぶりの映画館に感激しているというのに、後ろに座席キックマンがいたり、わざわざ離して席を取ったのに隣に座ってきて内容をいちいち喋りまくるバカ集団がいたり、何回もペットボトルを落とすバカがいたり(持ち込み禁止だぞ!)、コンディションの悪い映画体験になってしまった。

 しかし、そんな悪環境下でも、面白かったぞ!樹海村!

 犬鳴村がウケて、村シリーズとして作られた今作。
 実在した犬鳴村とは違い、樹海の中に作られていたという架空設定の村と、有名なコトリバコの話を混ぜたシナリオなのだが、これが良かった。樹海にまつわる都市伝説と、コトリバコの要素を、上手くミックスしているのだ。

 僕はコトリバコの話は洒落怖の中でも印象が薄く、あまり好きなほうではないのだが(コトリバコの話自体そこまで内容はなく、どちらかというとそれにまつわる考察の方が本番だし、そっちの方が面白い)、かつて差別を受け、樹海に捨てられた者たちが作った村、そこで作られた呪いの箱、それに魅入られた一族という話に昇華したのは、作劇的に大正解だったように思う。

 また、突撃配信者が樹海にて配信をするというブレアウィッチな冒頭に、音声チャットでの交流(この時の呪怨のTV、もしくはクニコ?のオマージュが嬉しい)や、オカルト系Vチューバ―の動画など、描写がきちんと現代ナイズされているのも嬉しい。こういうのって、わざとらしくすると本当に滑稽に見えてしまうのだが、配信のコメントや音声チャットでの会話、そのオフ会メンバーのしょうもない人物造形のリアルさなど、とても丁寧で感激してしまった。(配役がみんな絶妙にハマっていて良い)

 洒落怖のコトリバコを扱ったことに関しては、洒落怖の定番である若者集団がヤバいものに触れてエライことになり、お祓いをするという入りから始まって、関わる者すべて巻き込んでいき、次第に一族の話にシフトしていくのが心地よかった。ヘルレイザー的でありながらも、親子の物語に帰結していくのも良い。清水崇作品お得意の、過去と現在が交錯し、現実と幻想の境界が混ざり合っていく作劇も、今回はすっきりと見られるし。

 他にも、場面場面に、今までJホラーが培ってきた多様な恐怖表現が詰め込まれているのだ。前述したオマージュ以外にも、黒沢あすかの磨りガラス顔芸(真顔が既に怖い!ほん怖の黒髪の女オマージュ?)、インターホン越しの佇み幽霊、ぼやけた背景での首切り、さっきまで話してた相手が次の瞬間・・・など、劇場で「いよっ!Jホラー!」と手を叩きたくなった。
 オマージュでいうと、森ホラーとして死霊のはらわたをリスペクトしていたことに、思わずニヤけてしまった。病室の場面で、フェティッシュ!と心の中で叫びました。
 残酷表現も容赦なく、指の切断に始まり、塚地武雅の飛び降り(犬鳴村でも飛び降り表現は白眉だった)と、カメラのフラッシュによるサブリミナルな箱の制作風景など、ちゃんとゴア描写に力を入れていたのも好感。


 今まで、嬉しい嬉しいと語彙力のないことを性懲りもなくつらつら書いてきたが、許して欲しい。見たかったJホラーを見れたことに、本当に感激しているのだ。
 そして何よりも、今作を観て嬉しかったことは、CGが安っぽくないのだ!

 クライマックスで、Jホラーの真骨頂ともいえる不気味ムーブが出てくるのだが、今回は樹海村ということで、木の根やコケを纏った(パイレーツオブカリビアンのフライングダッチマン号の乗組員の森版みたい)ゾンビ的な奴らがうじゃうじゃと襲ってくるのだが、これがCGで表現されていて、とても怖い!
 蔦や木の根がゾンビと一体化しながら這うように襲ってきて、まるで樹海そのものがゾンビと化して襲ってくるように見えるのだが、この映像がまったく安っぽくないのだ!
 映像が安っぽいというのは、前作の犬鳴村でも不満だった点であり、特に終盤の摩耶がトンネル内で襲ってくる場面は、不気味ムーブが少々前に出過ぎていて怖さが薄れてしまっていた。(誇張しすぎた米津玄師みたい)だが、今作はそんな犬鳴村のヒットを受けて予算が増えたのか、安っぽさが全くないのだ!おかげで、ちょっと食傷気味だったJホラー不気味ムーブに、触手のような木の根と蔦というスパイスが加えられたことによって、新たな恐怖表現が産み出されている。それが極まったラストのシーンは、儚さもあってまた・・・。

 これは本当に嬉しかった。Jホラーが少しずつ息を吹き返している瞬間を目撃したようで・・・。
 犬鳴村を見た時は、「ちょっとショボいけど、これくらい頑張ってくれたのなら・・・」と、少し贔屓目に見ていたのだが、樹海村は忖度無しに大手を振って面白い!と喜べるのが、心から嬉しいです。

 まとまりなくつらつらと書いてきましたが、今後も、村シリーズは発展していってほしいです。ここまでCG表現ができるのならば、クリーチャー色の強い姦姦蛇羅なんかもできそうだし。
 でも、もう次は3作目なんだし清水崇監督、ゾンビものやりたそうだから、振り切りまくって巨頭オ村なんてどうですか?襲い来る巨頭クリーチャーをぶち殺す、今度は戦争だ!なアクション色の強いJホラーも見てみたいです。

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