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一気に150万も下がる請求-事故物件の請求金額は交渉次第?!

遺品整理現場での知っ得シリーズ

今回は賃貸物件で起きた自殺の損害賠償が交渉次第で一気に150万円も下がった過去の相談事例をもとに、事故物件の家主側からの請求金額の妥当性について考えてみるというお話し。

過去の相談事例となりますが、ご相談者の方のご家族が賃貸物件で自殺をし、家主から想定外の金額の請求をされているというご相談です。

今回のケースですと自殺ということですので、明らかに入居者側に過失があり、相続人や連帯保証人としては何がしかの責任は負わなければならないところではあります。

ご家族の方は最終的な手段として相続放棄という方法も残っていますが、相続人のおひとりが連帯保証人でもあったため、連帯保証人としては相続放棄をしたとしても、連帯保証人としての責任が残りますので、家主との交渉は避けることができないといった状況です。

そうした状況で、これまでに遺品整理や未払いの賃料等の支払いなどは行ってきたそうなのですが、最後の請求として室内の原状回復費と今後の入居募集に掛かる家賃保証としての逸失利益としての損害賠償の請求書が届いたそうです。

ただ、今回の自殺ではご家族の方の発見が早く死後1日も経過せずに発見されている状況ですので、室内の汚れというものはありません。

そうした場合に原状回復費用として連帯保証人としてどこまで負担しなければいけないのか?という部分が問題になります。

また、逸失利益の部分としての損害として家賃の6年間分を損害として請求されてきているとして、上の原状回復費と合わせて約500万ほどの請求となっています。はたして、この原状回復費と逸失利益としての損害賠償は適正金額なのか?という部分で悩まれてのご相談です。

ご相談にあたっていくつかの確認事項を教えて頂き、過去の判例や一般的な考え方を織り交ぜて、現在の状態や大家さん側の立場としての捉え方なども説明させて頂きました。

詳細はここでは申し上げられませんが、過去の事例から導き出せるいくつかの方針をお伝えすることで、ご相談者の方も家主側からの請求の妥当性や実際の請求ラインについては掴んで頂けたようで、次回の家主側との交渉でその点を話されてみるとのことでした。

こちらのアドバイスが多少なりとも参考になったら嬉しい限りです。

このご相談では後日再度、ご連絡があり、前回の相談時のポイントを踏まえて家主側と交渉をした結果、相手側も譲歩してくれたとのことで、当初の金額より一気に150万ほど減額に応じてくれたそうです。

ただ、難しいのがここからで、更に値下げ交渉ができる余地があるのか、または家主側としても限界まで譲歩しているとしたらこれ以上は裁判だ!となってしまっては、家主側、相談者側双方にとって時間と費用が無駄になってしまう可能性も高くなります。

行政書士としての立場上、どうしても相手との交渉の矢面には立てませんので、あくまで一般的な事例や有効な方法を示して、ご相談者の知識を補うサポートしかできないところが歯がゆい部分でもありますね。

ただ、今回の事例のように根拠のある内容をもって、家主側と交渉することで相手方の譲歩を引き出せるケースは珍しくはありません。

なぜなら、賃貸物件における孤独死や自殺といった事故の場合の家主側の請求というのは基本的にはそれほど根拠がなく、家主側がこうしたいという希望が乗っかった金額だからです。

ですので、賃貸物件で事故が起きた場合には家主側としては少しでも次ぎの募集がしやすいように、室内は綺麗にリフォームしますし、遺族側の費用でリフォームするなら、ついでに設備も一新してしまおうと、事故とは関係ない部分までまとめてリフォームしようと考えることもあるでしょう。

併せて、入居者が決まらない間の家賃の補填として、できるだけ長期間の家賃保証を請求するということも、家主側の視点で考えればなんら不思議ではありません。

つまり、家主側としては、入居者側の過失で被害を被っているので、被害者としてはこれぐらいは請求したいという希望が乗った金額が、遺族や連帯保証人に届いているというわけです。

ただ、遺族や連帯保証人がそれをそのまま支払う必要があるかどうかはまた別の問題であり、いくら位の賠償が適切なのかは当事者の話し合い又は裁判での判断ということになります。

ですので、賃貸物件で事故が起きた場合の家主側の請求には法律的な根拠が乏しい部分も多く、家主側の過大な請求となっている箇所が散見されることも珍しくはありません。

それゆえ、そうした過大な請求と思われる箇所について、遺族や連帯保証人側が、過去の事例や判例を基に、ここの請求はおかしくないですか?と示すことに大きな意味があります。

ここで大切なのは、合理的な根拠を示すということ。賃貸物件で起きた事故案件で当事者双方が揉めてしまうのが、感情的に言い争ってしまうケースが多いからです。

それは、当事者双方がなんの根拠もなく、

「これだけの事をしでかしたんだからこれ位は払ってもらうのが当たりまえだ!」

「部屋もたいして汚れていないのにそんな金額が掛かるわけがない!」

と、見積書に示された金額の根拠とそれを支払う必要のある合理的な根拠に欠ける話し合いをしている為、当事者双方が納得できずに、ずるずると話し合いが長引いてしまう結果となるわけです。

賃貸物件での事故は専門家でもなければ、そうそう経験するような案件ではありません。

コロナ禍であって、こうした孤独死や自殺といった一般的に事故物件と呼ばれるような案件は増加してきています。

それに従って、貸主側と借主の遺族側などで原状回復費や損害賠償についてのトラブルも増加するにつれて、今回のご相談と同じような悩ましい問題は出てきます。

こうした悩ましい部分については国土交通省が事故物件用のガイドラインの作成に2020年に着手しているのですが、進捗の報告が全くない状況ですので、コロナ禍で事故物件の事案が増える状況でもありますので、完成が待ち遠しい限りです。

事故物件用のガイドラインが出来上がるまでは、従来通り過去の判例などを基に解決策を模索していくしかありません。

もし、事故物件の当事者になってしまったような場合は、なるべく早くお近くの弁護士等の専門家に相談にいき、どういった解決策があるのかを確認しておくことが大事です。

専門家に相談する前に状況が進んでしまうと、取れる手段も減ってしまうこともありますのでご注意ください。

遺品整理・死後事務のご相談は名古屋第八行政書士事務所までどうぞ~。

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