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エンゲージメントとは?言葉の理解を深めることで目的を言語化する!

近年、「エンゲージメントを高めよう」と頑張っている企業を多く目にするようになりました。
自社もエンゲージメントを高めなければ!と思っているかもしれませんが、そもそも「エンゲージメント」についてしっかりと理解していますか?

以前「地頭力」について書いたときもお伝えしましたが、言葉の意味は企業によって異なる場合があります。
よく耳にするからといって鵜吞みにするのではなく、自社が納得する形で言語化しておくことが大事だと思います。

今回は「エンゲージメント」について理解を深めていきながら、私なりのエンゲージメントを検討したいと思います。

「エンゲージメント」を調べてみた

私も会社員時代にエンゲージメント施策を担当していたので、肌感覚ではわかっているつもりになっていたのですが、フリーランスになって逆にエンゲージメントがわからなくなっていました。

Engagementを辞書で調べると、約束・契約・婚約・(歯車などの)かみ合い…という意味で、今回の「エンゲージメント」とは少し違いました。

HR系メディア各社が「エンゲージメント」について解説していたので、数社ピックアップしてみます。

カオナビ人事用語集

人事の領域で用いられる場合、従業員の会社に対する、
● 愛着心
● 愛社精神
● 思い入れ
といった解釈をします。従業員一人ひとりが組織に愛着を持ち、従業員と企業が一体となってお互いに成長し合い絆を深める関係をイメージするとよいでしょう。

TUNAGUエンゲージメントコラム

会社と従業員、従業員同士のタテとヨコ双方の信頼関係が築かれている状態のことをいいます。会社と従業員、従業員同士が貢献したいという気持ちでつながっている関係や、愛着心という言葉でも表現されることがあります。

HR大学

人事・組織開発における「従業員エンゲージメント」とは、従業員が会社の向かっている方向性に共感し、自発的に貢献したいと思う意欲のことを指します。一言で表すなら、「従業員の企業に対する信頼の度合い」といえますが、わかりやすいようで実は定義があいまいです。このため、本来の意味で従業員エンゲージメントを高めるには、企業がそれぞれ独自の「従業員エンゲージメント」を定義する必要があるのです。

HR大学の引用でも書かれていますが、エンゲージメントの定義は似ているようであいまいです。
「愛着」や「信頼度」が共通しているようですが、会社に対する愛着とはどのような状態でしょうか?どのような行動を取っていたら信頼していると言えるのでしょうか?
共通してポイントになるのは従業員側が「自発的」に会社に関わりたいと思えるかどうかのように感じます。

エンゲージメントを調べている中で、エンゲージメントと混同しがちな用語があると知りました。似た用語と比較することでより定義しやすくなると思いますので、次項で整理したいと思います。

エンゲージメントに似ている言葉を調べてみた

先ほど引用したHR大学の記事内で、「従業員エンゲージメントと混同しがちな用語」が紹介されていました。

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この中で「従業員満足度」と「ロイヤリティ」について、私自身が整理ができていないので、あらためて意味を調べてみます。

◎従業員満足度

従業員満足度とは、職場環境や社内の人間関係、働きがい、福利厚生、給与などの要素で計測される従業員の満足度のことです。従業員満足度は英語で「Employee Satisfaction」と呼ばれ、頭文字を取った略称のESと表現される場合もあります。
ーMiTERASコラム「従業員満足度を向上させる3つのメリットと取り組みを詳しく解説」

従業員満足度は、エンゲージメントを高めるために社員にアンケート等を取って測る指標として用いられることが多いです。

HR大学では「従業員満足度を高めることは大切ですが、必ずしも企業の業績に結びつくものではない」としていますが、MiTERASでは「従業員満足度が高い企業は生産性も高くなる場合が多」いと述べています。

従業員満足度が業績に結び付くかどうかについて、どう研究されているのかについて調べたところ、「ES(従業員満足度)が上がるとCS(顧客満足度)が上がる」という研究結果が出ているそうです。

ESとCSの相関図を上記サイトから引用すると下記の通りです。

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従業員満足度は業績アップの一助になっているようですね。

では、従業員満足度はどのような項目で測るのでしょうか?
みずほリサーチ&テクノロジーズの従業員満足度調査サービス アンケートのコンセプトの質問項目は全75問あり、その中の15問が例示されていました。

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エンゲージメントの説明で出てきた「愛着」や「信頼」は、「会社へのロイヤリティ」の中の「社員尊重」や「理念共有」に含まれているような気もします。

質問をどのようにするか次第になりますが、エンゲージメントは「自発的」に会社に関わることがポイントだとすると、「満足」すれば自発的に動く…とは言えないと思います。
従業員満足度を高めた先に、エンゲージメントがあるのではないでしょうか

◎ロイヤリティ(loyalty)

アンケートの項目の中で「ロイヤリティ」が出てきましたが、こちらもエンゲージメントと混同しやすい用語です。

HR大学ではロイヤリティを「忠誠心」と意味付け、「ロイヤリティの高さが企業への貢献につながる場合もありますが、企業と従業員は明確な主従関係になるため、従業員自身の判断力や想像力が育たず、指示待ち人材になってしまう、といったネガティブな結果を招く可能性もあります」と述べています。

ここで冒頭の私のツイートに関連しますが、「愛社精神=ロイヤリティ=エンゲージメント」となるかがポイントとなります。

「忠誠心=エンゲージメント」は、私も違和感を覚えるのですが、「忠誠心=愛社精神」なのでしょうか?

goo辞書で英語の意味を調べると下記の通りでした。

1(公約・義務などへの)誠実,忠実≪to,for≫
2(君主・政府・主義などへの)忠義[忠誠,愛国](心)≪to,for≫(◆献身的な感情の意を含む)
3〔通例-ties〕愛国的な行動[言動];(友人・種族間などの)献身的な愛情
4〔通例-ties〕印税

献身的な感情の意として「愛国」が意味に含まれているようです。

愛国と聞くと、戦時中の盲目的な一面がある印象を持つ方が多いと思いますが、「愛する」ということ自体は盲目的ではないと思います。
「献身的=自分を犠牲にしてでも相手に尽くす」なので、自分を犠牲にまで仕事をしてしまっては人事としては困るのですが、だからといって従業員自身が判断していないとまでは言えないと思います。

愛社精神を英訳すると「loyalty to the company」なので、愛社精神=loyalty=忠誠心となります。英訳すると同じですが、「忠誠心=愛社精神」については、愛社精神に「服従」の意味まで含まれているかは捉え方次第のような気がしました(言語学者ではないので正確な説明はできなくてごめんなさい)。
みずほリサーチ&テクノロジーズの調査で「ロイヤリティ」を使っていましたが、項目を見る限りは「服従」的な意味は含まれていないように思います。

上記までを踏まえて「エンゲージメント」と「ロイヤリティ」の違いを考えると、どちらも「自発的」であるので一緒になるのかと思ったのですが、私が納得できる違いがありましたのでご紹介します。

「顧客エンゲージメントと何が違うの?」と思われるかもしれませんが、2つの違いはそれぞれの調査プロセスに起因しています。ロイヤリティはNPS(Net Promoter Score:ネット・プロモーター・スコア)という指標を使うのに対し、顧客エンゲージメントは顧客が実際に起こしたアクションにもとづき測定されます。

要するに、ロイヤリティは「顧客の感情」に焦点を当てて調査した指標であるのに対し、顧客エンゲージメントは「顧客の行動」に焦点を当てて調査した指標だということです。
ーBizAppチャンネルブログ「顧客エンゲージメントとは?ロイヤリティとの違いを解説

「顧客エンゲージメント」はマーケティング用語になりますが、「従業員エンゲージメント」に置き換えても差し支えない内容だと思います。

以上、2つの用語をエンゲージメントと比較しながら調べた結果、従業員満足度とロイヤリティは近しいものがあり、エンゲージメントとは焦点の当て方が違うようです。
アンケートを取る際は、どこに焦点を置いているかを理解してアンケート項目を作成した方が良いでしょう。

エンゲージメントとは「コアファン度」だ!

前項までで、会社に対する愛着や信頼が高まった結果、自発的に貢献したいと思えるようになったらエンゲージメントがあると言えるとわかりました。
すると私の中で「この考え方はファンベースに通ずるのではないか」と思い当たりました。

「ファンベース」とは佐藤尚之氏著のタイトルで、「企業や商品の支持者であるファンを大切にし、中長期を視野に売上や価値の上昇を狙うという考え方」です。

ファンベース自体はマーケティングの文脈で語られていますが、私は、考え方は人事施策に通じると考えています。

佐藤氏は、ファンとは「企業やブランド、商品が大切にしている『価値』を支持している人」と定義しています。そして、ファンは全体の20%くらいの少数で、その少数のファンの支持を強くすることで顧客生涯価値(LTV)を上げていく施策がファンベース施策です。

会社を知ってくれた人

ファンの入り口に立った人(会社に関わってくれる人)をファンにする施策は下記3点です。

・その価値自体を、アップさせること →「共感」を強くする
・その価値を、他に代えがたいものにすること →「愛着」を強くする
・その価値の提供元の評価・評判を、アップさせること →「信頼」を強くする

そして、ファンをコアファン(全体の4%くらい)にするために下記のように施策を切り替えていきます。

共感 → 熱狂
愛着 → 無二
信頼 → 応援

コアファンとは、積極的に会社の魅力を外部に伝えたくて仕方がない人です。「企業の事情や方向性をわかった上での偏愛な人」と述べられています。まさに、自発的に会社に貢献したい人=エンゲージメントの高い人と言えると思います。

ファンベース施策は、全員をファンにしようという施策ではありません。最低限の働く環境を改善することは全員にとって喜ばしいことかもしれませんが、ファンベース施策とは違います。

自社のコアファンとはどのような人なのか、その人たちを増やしていくにはどのような施策を考えるべきなのか、それがエンゲージメント施策を考えることなのだと私は思います。

最後に追記しておきたいのは、コアファンは従業員とは限らないと考えています。働き方の多様化は進んでいます。コアファンの人のキャリアプランによっては雇用関係ではない方が関わりやすい場合も出てくるので、会社への関わり方が多様化できたらいいなと思います。

今回はここまで!次回をお楽しみに。

◆◇しごとば劇場◇◆
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