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欧州旅行記⓫「東京 故郷」

 2月、羽田から鎖を引きちぎる様に感じた離陸の快感は、3月、感じる間もなくいつのまにか空の上だった。マルペンサを飛び立ち、コペンハーゲンを経由し、私が鉄道で移動した距離の何倍もを、飛行機はあっと言う間に飛び越す。思えば持っていたのは、羽田-シャルルドゴール、マルペンサ-羽田の二枚のチケットと、一綴りのユーレイルパス・ブックだけだった。逃避行の様に足早な出立は、故郷を求める帰還で幕を下ろす。その間には、何もない様な、そして何かが確かに存在する様な、時間の流れだけがあった。

 隣の座席の男は、ノルウェーから今日、日本に向かうという。随分楽しく話して笑って、何かあれば連絡をくれ、とアドレスを渡した。彼の旅は、これから始まる。私の旅も、またいずれ。
日本の上空遥か9200メートルで、外は驚くほどの快晴だった。目も覚めるほど白い雪を湛えたアルプスから、血管の様に延びる河が見える。日本の大きさを感じる、そして世界の巨大さを。どこへでも行け、どこにでも住め、どこででも暮らせ。まだ囁きが聞こえる、そして今も。憧れは終わらない、また旅がしたい。

東京、故郷。2014年3月18日。

2015年、旅の日記をそのまま形にした、
「Vital of jorney」という本を作りました。
その後、何度か、この2014年の旅を、
思い出しながら文章にしようと試みましたが、
一度も通しで成功することが出来なかった。
今回、noteを通じて、昔の旅ながら
誰かの役に少しでも経てば良いと
書き始めたつもりでした。
でも段々と、自分自身のために、
思い出し改めて噛み砕き、
筆を進めている事が分かりました。
およそ7年前の私は、未熟で独りよがりで、
そして今も未熟で独りよがりです。
それでも書き進めるうちに、
あの頃感じていたことと、今感じることが
大きく違うことに気付きます。
「Vital of journey」は、
今でも脈打ち続けていると、
やっと分かる気がします。

読んでくれて、ありがとう。

この纏りの無い旅行記が、
少しでも貴方のVitalを揺らす、
そんなものであって欲しいと
心から思います。

東京、故郷。2020年9月17-25日。

#旅行記 #ヨーロッパ #日本 #東京

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