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絵本読み聞かせ#5(幼稚園にある絵本100冊)

3月までに幼稚園にある絵本100冊の読破を目標に、子ども達に読み聞かせを進めている。
実際の冊数は30冊を超えたものの、noteの更新が途絶えていたので、書き綴ります。

いつも、何度でも思うことだけれど、絵本は本当におもしろい。



#11 ゆきのひのおくりもの

中国民話の再話である本作は、「情けは人のためならず」を心温まる物語で伝える訓話と言えるのかな。
諺で伝えるより、こうした物語を通じて親子で一緒に学んだり、人に優しくすることが周り巡って自分に還ってきた時に「これがそういうことか」と得心したりする体験を大事にしたい。

#12 火の鳥

原話は秋田県鹿角市に伝わる光る怪鳥伝説だ。
金銀銅鉛の鉱脈が見つかった所以を火の鳥による啓示に求めたところが面白い。川は龍、鉱脈は火の鳥・・・なのだろうか。
本書では、原話には登場しない少女が主人公として描かれている。
母を亡くし幼い妹を世話するヤングケアラーの少女あさは、現れるたびに飢饉をもたらす火の鳥を退治しようと、母が遺したかんざしを片手に山に出かける。
自分が死んだら妹の世話は誰がするのか・・・と葛藤しながら山を登るも、乳を分けてくれた村の女性達が見てくれるだろうと思い直し、火の鳥の元に向かう。
大人達は、あさが山に登ったことに気づき、今まで火の鳥に慄き退治しようとしてこなかったことを悔やみ、村総出であさの後を追う。
その頃、あさは火の鳥と死闘を繰り広げていた。
火の鳥が吐く火炎を避けながら、母のかんざしを突き刺すと、火の鳥は谷底へ崩落した。
火の鳥が落ちたところに、赤銅の鉱脈が見つかり、村は豊かになった。
あさは生きて帰れるだろうかと、とてもハラハラしながら読んでしまった。意を決した子どもに「誰かが助けてくれる」と思わせ、大人は「俺たちがやらないと誰がやる」と肚を括らせる、過酷だけど美しい共同体に対する憧憬を抱かせてくれる絵本だった。

#13 ヘルガの持参金

とても人間臭い、でも人間とは違うトロールのお話。
貧しい家に生まれたヘルガは、好きな男の人(というかトロール)が裕福な家の娘(というかトロール)と婚約するのを指を咥えて見ていた。
自分こそ彼に相応しいと見返すべく、洗濯の代行、化粧品の販売、山の伐採と次々に仕事を遂行し、結婚の持参金を稼ぐ。
そして、その姿を陰から見ていた王様と結婚し、幸せになった。
シンデレラ・ストーリーではあるけれど、持参金を強かに稼いでいくところに現代的な逞しさが感じられて良い。
作者トミー・デ・パオラは『まほうつかいのノナばあさん』で1976年にコルデコット・オナー賞を、そして生涯230冊以上の絵本を作りその貢献を讃え2011年にアメリカの児童文学遺産賞を受賞しているそうだ。
愛らしいイラスト的な絵もこの作者の魅力だ。

#14 夜をあるく

他のレビューを読むと「センス・オブ・ワンダー」という言葉があり、まさにそれだ。
夜は漆黒や藍色より青く描かれ、灯りや懐中電灯が照らす光とのコントラストに惹かれる。
先日書いた『あおのじかん』と色調は異なるけれど、宵闇の先にある暁光を求めて、一家が森を抜け山を登り山間の開けた場所で佇む情景は胸に沁みた。


#15 よるのおるすばん

母を待つ子ども達の様子を梟の雛達の愛らしさを借りて描いている。
幼児にとっては、しっかり者の兄・姉梟より、「おかあさんはどこ?」と不安がる一番下の梟に感情移入しやすいようだった。


#16 ゆき

ゆきがひとひらずつ空から舞い、降り積もっていく様子がページを捲るたびに伝わってくる絵本。文章より絵で読ませる本だった。
雪がひとひらずつ降り積もるうちに灰色の街並みが色彩を帯びていく。
はじめはひとひらだけだったゆきが、どんどん増えていく
街を行き交う大人はニヒルに描かれているけれど、坊やは「ゆきが降ってきたよ」と変化を楽しんでいる。
最後のページで、街は白銀に覆われ、空は青く描かれているけれど、それは雪が最も美しく映える時間だ。
読み重ねれば重ねるほど、心象風景が形作られていくので不思議だ。
作者は『よあけ』や『空飛ぶ船と世界一のばか』で有名らしいので、そちらも読んでみたい。

#17 はたらきものの じょせつしゃ けいてぃー

親が読み聞かせてくれた絵本。バージニア・リー・バートン女史の絵本は本当に大好きで、『ちいさなおうち』はじめ他の作品も幼い頃は食い入るように読んでいた記憶がある。親に感謝だ。
降雪地域で暮らすようになって除雪車の重要性が身に染みてわかるようになった。雪をかき集める時のど迫力も圧巻である。
重機の性能もデザインも街の様子も現在とは異なるけれど、雪の中をラッセルしていくケイティーの力強さや「じぇおぽりす」というコンパクトにまとまった街の全体を俯瞰できる絵に魅了される。


#18 ぼくんちのかいじゅう

『わすれられないおくりもの』というグリーフケアの名作を描いた、スーザン・バーレイスの絵による作品。
わかる、わかるよ、と思いながら読み進めた。
赤ん坊の弟は、兄貴のとっても、そして親にとってもかいじゅうなのだ。
そして、ほぼ何をやっても許される。兄貴にとっては理不尽だけど。
親子の共通体験として読み進められるから面白い。


#19 さかさまライオン

少し無理がある設定だけど、影が本体を動かすという発想がおもしろい。
内田麟太郎さんのお話は滑稽だし文体のリズムも心地よいのか、子どもは何度も読んでとせがんでくる。
長新太さんの少し濁った色遣いも興味を引くんだろうか。
ライオンは黄褐色というより、黄色に緑が混ざったような色になっている。


#20 ヴォドニークの水の館

家が貧しく空腹に喘ぎ、生きる希望を失って入水しようとした少女を水の主ヴォドニークが攫った。川の奥深くにある水の館で少女は食事をふるまわれ、命を救われる。
代償として館の掃除を命じられる娘は、広間のストーブの上に並べられ、決して蓋を開けるなと言われたつぼに触れてしまう。
中にはヴォドニークが溺れさせた弟の魂が閉じ込められており、蓋を開けると弟の魂は外に飛び出し自由になった。
少女が蓋を開けたことを知ったヴォドニークは「同じことをしたら、つぎは命がないぞ」というも少女を罰しない。
しばらくして、少女は意を決し、残りのつぼの蓋を全て開け、水の館から脱出を試みた・・・。
文を担当したまきあつこさんのあとがきによると、少女がヴォドニークに二度救われているという。一度は空腹に喘ぎ生きる希望を失っていた時、もう一度は自らの意思で生きていこうと決意し現実の世界に戻ろうとした時。
読みながら物語に引き込まれ、あとがきを読むことでさらに魅力を感じた絵本だった。
BL出版の世界のむかしばなし絵本シリーズはおもしろい。
これまで『巨人の花よめ』『七人のシメオン』『金の鳥』を読んでみたが、各作者が各国に伝わる昔話をまとめて再話化したものに、絵作家が色彩に富んだ表現で登場人物や情景を描いているので引き込まれる。
こちらのシリーズは図書館で借りるなどして、もっと読んでみよう。


今回はここまで。
感想をまとめるのも一苦労だけど、読んだ時に言語化できなかったことを発見できるので、楽しい作業だ。

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