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F1レビュー2022 第10-12戦 盤石のレッドブルと悩めるフェラーリ

だいぶ久しぶりのF1レビューとなりました。
なかなか見る時間が取れず、実際見ることができなかったGPもありました。
毎レース見てレビューを書くのは思ったよりも難しかった…。

そこで、毎戦見て感じたことを簡単にまとめ、数レース分まとめてnoteにアップすることにしました。

ちょっと長くなったり、少し前のGPをだいぶ後からアップすることになりますが、お付き合いいただければと思います。

今回は、第10戦イギリスGP、第11戦オーストリアGP、そして先日の第12戦フランスGPを振り返ってみます。

第10戦 イギリスGP

衝撃のビッグクラッシュ!

今年のシルバーストンでインパクトが大きな出来事だったのが、オープニングラップに起きた周冠宇のビッグクラッシュ。
あのクラッシュを見てびっくりしてしまった方へ、F1マシンの安全性を踏まえて少しお話ししておきます。

マシンのコクピット上部、ヘルメットの真上に、空気を取り入れるインダクションポットがあります。現在はPUの冷却やエンジンの吸気などに使っているようですが、もうひとつ重要な役割があります。
それは、マシンがひっくり返った時にドライバーの頭部を守ること。

「ロールフープ」という部品で、これがないとマシンが横転した途端、ドライバーの頭部や首に致命的な損傷を与えてしまいます。

しかし、今回のクラッシュでは早いうちからマシンがひっくり返り、そのまま引きずるようにコースを横切ってサンドトラップへ突っ込んでいきました。
結果、ロールフープは跡形もなく壊れ、なくなってしまった。
ドライバーの頭部を守るはずの部品が、これでは意味がありません。
既に動きはあると思いますが、今後ロールフープの強化をレギュレーションで改善してほしいですね。

この状況で周を救ったのは、コクピットの頭部保護デバイス「Halo(ヘイロー)」。
Haloは長年研究されてきた頭部保護デバイスとして、2018年よりF1で採用。
以後、オープンホイールのカテゴリーに次々と設置が義務付けられています。
F1でも数回に渡り重大事故からドライバーを守ってきましたし、今回も周の命を守ってくれました。
最初は「カッコ悪い」とブーイングもあったデバイスですが、今や異を唱える人はいないでしょう。

それにプラスして、タイヤバリアの手前でマシンが飛び上がり、床面からフェンスに激突したことで、マシンが持つパワーを分散させたことも大きかったと思います。
もし、横転したままサンドトラップを滑るように進み、そのままタイヤバリアに突き刺さっていたら、周の体へ大きなダメージを与えていたことでしょう。

スピードが落ちない事でマシンに大きなパワーが生じ、サンドトラップの抵抗もさほど受けずに、タイヤバリアに「点」でぶつかってしまうと、マシンに与える衝撃は大きく、コクピット内のドライバーにも相当な衝撃がかかります。
そういう意味では、ホームストレート上で発生したアルボンのクラッシュの方が、ドライバーへの衝撃が強かったと思います。

しかし、今回はタイヤバリアにぶつかる直前にマシンが飛び上がったことでパワーが分散され、マシン床面という「面」でぶつかってくれたおかげで、さらに衝撃が吸収され、周は無傷で済みました。
見た目のインパクトは絶大でしたが、いくつもの幸運が重なったクラッシュだったともいえると思います。

そして、自らのマシンに接触したことで、クラッシュの一部始終を目の当たりにしたラッセルの行動も素晴らしかった。
マシンを止め、周を助けようと一目散に駆け寄りました。彼らはアンダーフォーミュラから共に闘う仲。
それでも、かつてのセナの姿を彷彿とさせましたね。

※周冠宇選手のTwitterより。 
大きなクラッシュ後にも関わらず、元気な姿を見せてくれました。

スペクタクルなレースへの道のり

序盤のクラッシュでレースは赤旗中断。
レース再開後、ルクレールがフロントウィングにダメージを追ってしまい、ペースが上がりません。
フェルスタッペンもアルファタウリの同士討ちで飛散したパーツによりフロアにダメージを負い、優勝争いから脱落。

反面、ずっとペースの良かったサインツ。タイヤ交換のタイミングも理想的。
序盤にウィング交換を行なっていたペレスも、ハードタイヤでじわじわ上位を伺っていましたが、その後出たセーフティーカーが決め手となって、終盤のバトルへの参加権利を得ました。

そして、ラスト10周のスペクタクルレース!
 ルクレールのペースが上がらず、サインツが難なくトップを奪取。
46周目、ペレス、ハミルトン、ルクレールの攻防! 最終ターン、3ワイドでハミルトンが2台を抜くが、すぐにペレスとルクレールがやり返す。 後ろからアロンソも近づく。
48周目。手負いのマシンで懸命にガードしていたルクレールだったが、善戦虚しくハミルトンが前を行く。

波乱とスペクタクルバトルのレースを制したのはサインツ。
うれしい初勝利!
デビュー時からフェルスタッペンの影に隠れるようなキャリアでしたが、着実に実力を積み上げ、フェラーリで得たチャンスをモノにした勝利でした。
まだチームメイトの後塵を拝するレース展開が多いですが、今後もっと勝つ姿が見たいですね。


第11戦 オーストリアGP

なぜ、何度もフェルスタッペンはルクレールに抜かれたのか? 

前日のF1スプリントではフェルスタッペンの方が速かったのに、レースではタイヤ交換の戦略も含めてルクレールの方が上でした。

フェルスタッペンはルクレールに抜かれた直後にタイヤを交換しても、思ったほどペースが上がりません。無線で「マシンバランスが一定にならない」と訴える一面も。 

対するルクレールも後半トラブルに見舞われましたが、レースペースは明らかにルクレールの方が上。アンダーカットを狙ってタイヤ交換するフェルスタッペンをものともせず、コース上で何度もオーバーテイク。

見る側にとってはエキサイティングですが、フェルスタッペンにとってはフラストレーションがたまるレースだったと思います。


エキサイティングな5台のバトル!

25周目、中団争いでエキサイティングなバトル!
ギャップが縮まったマグヌッセン、アロンソ、ノリス、周、シューマッハが団子状態でバトル開始!
後方からノリスがアロンソ、周、シューマッハを一気に抜き、マグヌッセンへ襲い掛かる!
2台の攻防が続くも、そのすぐ後ろにアロンソ、シューマッハ、周も虎視眈々と狙う。
ターン5でマグヌッセンの横に並ぶノリス。しかしマグヌッセンも簡単には譲らない。
一触即発の好バトル!

結局、マグヌッセン、ノリス、アロンソ、シューマッハ、周の順で落ち着きましたが、シルバーストンに続いて、多数の車同士が争う場面が増えてきました。
まるでインディカーレースのような3ワイドの攻防がF1でも見られるなんて!

アルファタウリはどうしてしまったのか?

ガスリー、角田共に謎のペースダウン。最近2台とも上位に顔を出せなくなっています。
原因は調査中とのこと。しかし、次戦でアップデートを用意しているようです。

 ペースが上がらない分、中断~下位に沈みがちとなってしまうと、他車との接触などのリスクが高まり、リザルトにも影響します。 

ガスリーも散々ペナルティを喰らってしまいました。
 次戦のアップデートに期待したいですし、鈴鹿までに改善していってほしいところです。

第12戦 フランスGP

チームプレーを発揮したフェラーリ

 FPからサインツの調子が良く、予選でもQ2で最速。
こりゃQ3が楽しみだ、と思ったら、ミストラルストレートでルクレールにトウを使わせる作戦に。 
そりゃしょっぱいなぁ!と思っていたら、PUのマテリアル交換で既定数を超えてしまい、10グリッド降格することを後から知りました…。

グリッド降格が決まっている場合、多くはQ1をマシンチェックに費やし、次の日に向けてさっさと予選を切り上げてしまいます。
しかし、フェラーリは好調のサインツにQ3まで残るよう指示。チャンピオン争いをしているルクレールをサポートするよう命じます。
その期待に余裕で応えたサインツ。Q3では見事な仕事ぶりで、ルクレールがポール奪取。

今年のフェラーリの状況を見るに、多分この後、ルクレールも同じような状況に陥ることになると思います。
チャンピオン争いが激化する前に戦略的に4機目を投入し、グリッド降格を受けるチョイスをするはず。今後のフェラーリの戦略にも注目です。

予選といえば、ガスリー、オコンのフランス勢はちょっと残念な結果に。
その分角田が頑張ってくれました。


角田無念…オコンに当てられた!

 レースはスタートからハミルトンがペレスの前に出て3位。 
後方では序盤にオコンと角田が接触。角田はスピンを喫し、最後尾まで下がってしまう。 せっかく上位からスタートできたのに勿体無い…。 
オコンには5秒加算のペナルティ。角田もしばらく走り続けましたが、残念ながら後にリタイアとなってしまいました。

ペースの速いルクレールだったが… 

レースはトップのルクレールが突き放し、フェルスタッペンが跡を追う展開。 フェラーリのペースが速く、微妙に差を詰められず、抜くことも難しい。

しかし18周目、トップのルクレールが単独スピンでクラッシュ! 
無線では「スロットルが…」と言っていたが、結局は自分のミスからのスピンだったそうです。 どうもここ最近のフェラーリは歯車が噛み合わない。

このスピンのおかげで、セーフティーカーが導入。 
各車タイヤ交換を済ませるものの、今度はサインツが作業に手間取り、やっと出たところにアルボンのマシンが。アンセーフリリースで5秒ストップのペナルティを課されてしまいました。

ペースの上がらないペレス。しかもVSCで… 

3位を走っていたペレスがどうもペースが上がらない。 後ろからラッセルに突かれる状態。 

48周目の周のスピンによりバーチャル・セーフティカーとなり、各車ペースダウン。
 51周目にレース再開…?画面はグリーンにならない?中継をみているこっちも混乱してしまいます。 始まったの?まだなの? 

そんな状況に翻弄され、結局ペレスはラッセルに抜かれて4位。 
どうやら、レースコントロール側のトラブルだったようです。 
これがシーズン終盤だったら、去年のアブダビのようになってしまう可能性も考えられる。しっかり対処してほしいですね。


ペースだけならサインツのレース? 

最後はフェルスタッペンが逃げ切り優勝。
メルセデスが久々のダブルポディウム。予選でも復調の兆しは見せていたものの、レースペースがなかなか速く、気がついたら上位にいる存在。

今回はレースペースだけならサインツのレースだったと思います。 
PUのマテリアル交換でペナルティを受けてしまったのは仕方ないにせよ、どのセッションも速く、レースでも誰よりもオーバーテイクを見せてくれました。

残念なのは中盤のアンセーフリリースと、終盤のタイヤ交換。 十分なペースで3位まで上がったものの、このまま走り切るのは難しいとチーム側の判断だったようです。結果、順位を5位まで上げ、ファスてストラップも記録。 

ただ、ペースが速いフェラーリだけに、単純なミスやトラブルがなければもっと面白いレースができるのに…とちょっと残念に思ってしまいますね。


今後の展開は?

ここまで盤石の強さを見せているのはレッドブルとフェルスタッペン。
トラブルに泣く場面もありますが、トップに立つとその座を譲らずにフィニッシュする。
彼の勝負強さもありますが、チームの体制が盤石であるとも言えると思います。

その反面、速さはあるのにトラブルに泣いたり、戦略がうまくいかなかったりと散々なフェラーリ。
走り切れば上位に食い込むことができるのですから、ひとつひとつ改善して、終盤にはエキサイティングなタイトル争いを見せてほしいですね。

そのフェラーリの存在を脅かすメルセデス。
気づいたら2台とも上位を走っているし、ここのところポディウムの常連になりつつあります。
しかし、完全復活には程遠いようにも思えます。
根本的にクルマを見直す必要があると思うし、実際ファクトリーではとっくに取り掛かっていると思います。
成果は来年出てくるはず。その時には、レッドブル、フェラーリと三つ巴の争いが見たいですね。

期待の角田もずっと苦しんでいますが、フランスGPで投入したアップデートが功を奏したのか、久々にQ3まで残ってくれました。
ただ、ガスリーもあまりいいところはなく、マシンの状況も不透明。
こればかりは見守るしかありません。

ポールリカールでは、F2を走る岩佐歩夢がフィーチャーレースで初優勝。
日本人ドライバーの活躍も見逃せませんね。


さて、次戦ハンガリーGPが終わると、F1は約1ヶ月のサマーブレイクに入ります。
つまり、夏休みです。
エンタメ業界はみんなが夏休みをとる時期が掻き入れ時なのに、なんで休むの?と思うかもしれませんが、これはレギュレーションで決まっているのです。

F1界の悩みの種だったのが、各チームの開発費用の高騰。
対策としてプライベートテストの禁止や、PUの台数制限の導入など、コストを下げる手をいくつも尽くしてきました。その一環がサマーブレイクなのです。

夏休み期間はチーム活動は一切禁止!とレギュレーションで定めているため、その期間チームスタッフは働いてはいけません。
ファクトリーでの作業も、ドライバーのシミュレーション作業もダメ!
それにより、スタッフの人件費や部品代が抑えられる、というわけです。

約1ヶ月グランプリが見られないのは寂しい気もしますが、再開したらヨーロッパラウンドのクライマックス、そして舞台は再びアジア、鈴鹿へ。
こうやって書くと、ようやくグランプリが戻ってきたなぁ、と思ってしまいます。
楽しみに待ちましょう!

タイトル画像、および本文内の引用はF1公式Twitterより使用させていただきました。
ルクレールとフェルスタッペン。今後のタイトル争いはいかに?

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