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実践!デジタル・ミニマリスト

脱スマホ依存

 最近、『スマホ脳』と『デジタル・ミニマリスト』を読んだ。こういった本が巷で流行っているというのは、皆多かれ少なかれスマホに依存していることを自覚していることの証左であると思う。

 『デジタル・ミニマリスト』によれば、スマホ依存から抜け出すためには「デジタルデトックス」では生ぬるいらしい。同書で挙げられている対策は、かなり過激なものであると言える。以下がその具体的な対策、「デジタル片付け」である(101頁から引用)。

  1. 三〇日間のリセット期間を定め、かならずしも必要ではないテクノロジーの利用を休止する。

  2. この三〇日間の間に、楽しくてやりがいのある活動や行動を新しく探したり再発見したりする。

  3. 休止期間が終わったら、まっさらな状態の生活に、休止していたテクノロジーを再導入する。その一つひとつについて、自分の生活にどのようなメリットがあるか、そのメリットを最大化するにはどのように利用すべきかを検討する。

 今回は「1」を中心にお話しする(おそらくこれが一番ハードルが高い)。要は「必要のないアプリはスマホから削除せよ」ということである。いくつか注意点があり、まず「便利」と「必須」を混同してはならない。ふつう便利だからスマホにアプリを入れていると思うが、それが果たして必須なのか否かという基準が必要になる。多少の不便も受け入れる必要があるかもしれない。また、PCで確認できるものはできるだけスマホを用いないようにするなど、ルールを設けるのも大切だ。

 今回は詳述しないが、ステップ2、すなわちスマホを触る代わりに行う活動を見つけるというのも重要である。というのも、空き時間にすることがないために退屈を感じ、リセットに失敗するケースが多いらしいのだ。

 この記事は、『デジタル・ミニマリスト』を参考に、2023年5月28日から同6月28日までの1ヶ月、「デジタル片付け」を実践した記録である。

始める前に

 私の場合、デジタル・ミニマリストになれる土壌があった。そもそもアプリの数が少ない。少し古いiPhoneで調子が悪くなることも多く、かつ容量もそんなに大きくないためである。ゲームはやらないし、動画をスマホで見る習慣もなかったので、YouTubeなどの動画アプリもない。

 アプリ以外で利用できるのなら、スマホにアプリはインストールしていない。例えばこのnoteだが、スマホのアプリは入れておらず、編集はすべてPCで行っていた(今もPCで執筆している)。同様の理由で地図アプリや翻訳アプリもない。InstagramやFacebookなどのSNSも、アプリではなくブラウザで見ているので、すでにいくつかのステップはクリアしていた。

 ポッドキャストやSpotify、ラジオアプリは、以前使っていたさらに古いiPhoneにインストールしている。電子書籍は専用のタブレットを用意している。もちろんタブレットでも動画を見るなりなんなりいろいろなことができるのだが、そういうことは一切しない。いわば古いスマホをオーディオ再生機器として、タブレットを電子書籍リーダーとして使い、メインのスマホと役割分担しているのである(一つのデバイスで複数のことができるのがスマホのいいところだと思われるだろうが、それが逆だというのがデジタル・ミニマリストの考えである)。

 野球速報アプリもファンであれば必携なのだが、本当にきりがないのでずいぶん前にアンインストールしていた。

 それと、普段からスマートウォッチを使用していて、通知は腕の振動でわかる。どのような通知が来たかは手首の液晶を見ればわかるので、いちいちスマホの画面を見る必要もない。さらに、習慣として就寝の際にスマホも電源を落としていたので、夜中ついついスマホに手が伸びることもない。朝のアラームもこのスマートウォッチに一任している。

 そんなわけで、脱スマホには比較的移行しやすい生活であった。

消したアプリ

 さて、いよいよアプリの削除である。iPhoneにはアプリの削除だけでなく、「アプリを取り除く」ということもできるので、4週間後必要になりそうなアプリはひとまず「取り除いて」おいた。以下は主なアプリについて述べる。

Twitter

 まず削除したのはTwitterである。Twitterの通知なんて(私の場合)後回しにしていいものしかないのだから、もともと通知は切っていた。しかし、用もないのにTwitterを開き、見たいのだか見たくないのだかわからないまま画面を眺めるということはよくあった。前述のとおりほかのSNSはすでにブラウザで閲覧していたので、そこにTwitterが仲間入りするだけであった。

ポイ活アプリ

 私の朝はポイ活(ポイント活動)で始まる。動画を流したり広告をクリックしたりするだけでもろもろのポイントがゲットできるのだが、そんなちまちました習慣(しかも朝の)にうんざりしていた。貯まっていたポイントは使えるものは使いきってしまい、アプリは削除した。

万歩計アプリ

 万歩計アプリ、これもポイ活アプリの一種と言えるかもしれない。位置情報サービスと連動したアプリで、歩数をためたり地図上の「住民」に話しかけたりすればポイントが貯まる、といったアプリである。健康のために歩く目的で入れたアプリだが、スクリーンの地図とにらめっこしながら歩いていては、ほんとうに健康のためになっているのかわからないし、何より危ない。それだったらいっそスマホを置いて、景色を楽しみながら歩いた方がどう考えても心身どちらにとっても健康的だろう。これは長年やっているし、遠く離れた家族もやっていて共通の話題なので、完全に削除はせず、いつでも再インストールできる「取り除く」にしておいた。しかし、当然少なくとも1ヶ月は触れない。

ニュースアプリ

 ニュースアプリも思い切って消した。贔屓のプロ野球々団の調子がいいので気になるが、まあ仕方がない。テレビでもラジオでも、まとめて情報を得ればいいやと思った。どうしようもない芸能ニュースを見てしまう自分に嫌気がさしていたので、ちょうどよかった。

残したアプリ

 すべてのアプリを消したわけではなく、以下のものは残した。

LINEほか

 LINEはもっとも主要な連絡手段なので残した。ただ、LINEはPC版があるので、極力そちらを使うようにした。通知が来たとしても急用でない場合は、あとでまとめてPCで見る、といった感じである。ほかのメールアプリも同様アプリは残し、PCで確認できるものはまとめて確認することにした。

Radiotalk

 ゲームもしない動画も見ない私にとって、おそらくスマホで最も使っているアプリがRadiotalkである。毎朝7時からRadiotalkでライブ配信をしているのと、週2回ポッドキャスト配信をしているのとで、こちらは残した。毎朝勉強になるし、番組も運営していかなければならないので、残すのは当然である。ただし、使うのは原則自分が配信するときだけで、リスナーとしては本当に聞きたい番組だけ聴くことにした。

 Web版のRadiotalkから音源をアップロードできるので、これを機にポッドキャストの収録はPCで録ることにした。Audacityは使い慣れているので、むしろスマホより編集もやりやすくなった。

キャッシュレス決済アプリ

 バーコード決済を含むキャッシュレス決済アプリも残した。現金をごちゃごちゃするわずらわしさから解放されるので、メリットの方が大きいと踏んだ。

健康管理アプリ

 さきに述べたように、スマートウォッチを使っているのだが、それと連携しているアプリがある。これを削除してしまうと連携が解除されてしまうので残した。このアプリで運動や睡眠の記録が確認できるのだが、スマートウォッチの液晶でも確認できるので、スマホでこのアプリは見ないことにした。

1ヶ月後

 さて、1ヶ月が経った。「デジタル片付け」のステップ3、テクノロジー(アプリ)の再導入である。再導入の基準は簡単に言えば「ガチのマジで必要なもののみ」で、「なんかメリットありそうだなあ」程度のアプリは失格となる。結論から言うと、私の場合Twitterを含め、再インストールを決心したアプリはゼロであった。

使用時間

 前述のとおり、毎朝7時からRadiotalkでライブ配信をするので、少なくとも30分はスマホを使っている。それを含めても、この4週間のスマホ使用時間はだいたい1時間弱であった。ただRadiotalkでライブ配信をする日だけはプラスで1時間ほど使用した。

 結局スマホでやっていたことをPCでやるようになっただけではないかと思うかもしれない。しかし、寝っ転がってスマホを使うことがなくなったのは大きい(あんな情けない姿、とてもじゃないが人様にお見せできない)。PCだと「ちょっとすきま時間に」というのがなくなるので、ダラダラSNSなんかを見ることもない。すきま時間についつい触ってしまう、それがスマホの怖いところだ。

生活の変化

 スマホでSNSもしない、メッセージのやり取りもしない、必要なときだけPC上で行う──。こうなると、私にとってスマホはなんでもできる便利なハイテク機器から、毎朝Radiotalkでライブ配信するだけの機械となった。もちろん四六時中Radiotalkで配信するようなことはない。スマホ(というかライブ配信機器)が手元にあったってすることがないのだから、別の部屋に置くようになった。何か連絡があってもスマートウォッチの通知が来るし、十中八九緊急の連絡ではない。

 本当にSNSは魔境だと思う(複数の意味で)。「いいね」をもらうために、ましてや「いいね」を与えるためにSNSを使うべきではないということが、まざまざとわかる。わかっているけどやめられないのだ。いわゆる承認欲求というやつで、『スマホ脳』でも『デジタル・ミニマリスト』でもキーワードとなっている。

 それと出先でスマホを取り出すことも減った。電車やバスなど、移動中にスマホを見ることもない。せいぜいキャッシュレス決済アプリで買い物するときくらいで、スマホを持たず外出することも増えた。

おわりに

 ここに記したすべてはできなくとも、FacebookやInstagram、TwitterをPCやブラウザで見る習慣を始めるだけで、多くの人は脱スマホができると思う(これは『スマホ脳』でも推奨されている)。しかしそれは理屈の上での話であって、やはり多くの人が挫折するだろう。そもそもやろうともしない、これをスマホで読んでいるあなたです(オンバトみたいになってしまった)。それでいてスマホ依存の危機感はあるので、気休めばかりのデジタルデトックスを中途半端に試してみて、またスマホ漬けの生活に戻り、根本的な解決には至らない。

 というわけで、どうせ皆出来やしないだろうからお勧めもしないが、私自身はデジタル・ミニマリストを実践してよかったと思う。スマホから離れると、「自分の意志でやっている」感が増す。これが結構大事な気がする(このことは『デジタル・ミニマリスト』にも書いてある)。

 むろん、私の場合もここから「リバウンド」してしまう可能性も十二分にある。アプリを再インストールしなくてはならないという手間がある分だけ、リバウンドのストッパーになっていると思う。

 少しでも気になった方は、ぜひ『スマホ脳』や『デジタル・ミニマリスト』を読んでみてはどうだろう。こちらはお勧めする。


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