仮説とともに読みほぐす『バイ・スパイラル』作中ゲームのあらすじ
諸注意
※こちらの記事は 2023 年 8 月 21 日に公開されたイベントコミュ『バイ・スパイラル』のネタバレを含みます。諸々ご注意ください。
はじめに
こんにちは蜷川です。
皆さんは『バイ・スパイラル』読みましたか?
幽谷霧子の鼠径部と同時に公開されたイベントコミュでしたが、シャニマス全体としては(形態は他のアイドルと異なるものの)斑鳩ルカが 283 プロに所属してから初めての越境イベントコミュになります。
案の定と言いますか、想定された通り斑鳩ルカが登場し、2021 ~ 2022 年度での 4 つの越境コミュから再度メンバーがシャッフルされたでのイベントコミュとなりました。
この前例を踏まえると、今後も夏と冬の越境コミュを使って 2023 ~ 2024 年度のスパンで 4 分割されたイベコミュが展開されていくことが予想されます。
さて、今回の議題は『バイ・スパイラル』本筋そのものからは外れて、作中で大崎甜花がプレイしているゲーム「ライトアンドダークネス」(以下 LaD)のあらすじについて仮説とともに読みほぐしていきます。
ライトアンドダークネス(LaD)のあらすじ要点
それでは早速各話に散りばめられた全文を一度通しで読んでみようと思ったのですが、文字に起こすと 1000 字を超えるので(1000 字を超えるあらすじ?)、この記事の最後に付しておきます。
あらすじの内容を要約するとだいたい以下の流れになります。
光の魔法使いがもたらす光によって国がし繁栄し平和が訪れた
手負いの闇の魔法使いが現れ、国と民はよくないもの、価値のないものとして闇の魔法使いを遠ざけ、闇の魔法使いも人と生きることを拒絶し、闇に姿を隠した
光の魔法使いはその姿を憂い、手を差し伸べたが、闇の魔法使いはそれを拒んだ
ある日、光の魔法使いが賊徒に捕えられてしまい、国に闇が訪れ、民はなすすべなかった
光の魔法使いは賊徒たちの傷だらけの身体を見て、光は国の民全員に届いていなかったことを知った
民は闇の魔法使いに救いを求め、闇の魔法使いは光の魔法使いを捕えた賊徒のところに向かい、光の魔法使いの解放を求めた
賊徒は解放の見返りとして金貨を要求するが、金貨もなく魔法を使う力も残されていない闇の魔法使いは金貨よりも価値のあるという傷だらけの自らの腕を差し出した
同じように傷だらけだった賊徒たちは光の魔法使いを開放し、闇に溶けていった。
光と闇の魔法使いはいつかまた会うことを約束し旅に出た
今回のイベントコミュはまた例のごとく複数の話を同時並行しながらも共通のモチーフで一本に話に仕上げる形式ですが、『アイム・ベリーベリー・ソーリー』と比べると特にその構造自体は非常に読み取りやすい形で展開されていたイベコミュだったかと思います。
その中で、以下のような対応を考えることができるでしょう。
光の魔法使い:既存 283 プロメンバー(特に大崎甜花)
賊徒:A(2022 年エイプリルフールではない方)
闇の魔法使い:斑鳩ルカ
「しっかり考えないと光が照らされないままの人がいて、そこに働きかけていくことが重要だ」ということは例えば『はこぶものたち』で語られてきた内容になりますが、「素直な輝きで照らすことだけでは救えない存在がいる」ということは『YOUR/MY love letter』の登場人物「unknown」の描写からよりさらに一歩踏み込んだ主張になっているように思います。
斑鳩ルカが救えるのはそういった存在だということがこれまでの SHHis コミュの妙にリアルな SNS 描写でもちょくちょく触れられていましたが、今回『バイ・スパイラル』はルカファンになる動機・過程を具体的に描くコミュでもあり、今後の斑鳩ルカ、そしてコメティックの活動の布石となりそうな内容でした。
「コメティック=流星群」説とLaDのあらすじの対応を考える
「斑鳩ルカ・コメティック=流星群」説とは
5.5th ライブのスケジュールとコメティックの楽曲「無自覚アプリオリ」の現在公開範囲での歌詞を考えると、斑鳩ルカ、そしてコメティックは彗星(comet)そのものではなく、彗星から放出された塵が大気圏に突入したものである流れ星・流星群をモチーフとしているのではないか、という説になります。
(詳しくは以下の記事をご確認ください↓)
星が光って見える仕組みを分類してみよう
さて、今回の記事でも簡単に宇宙に関するトピックスを少し整理しようと思います。
昼間は太陽、夜には月やほかの星々が見えるわけですが、それらの光り方は大きく分けて 3 つに分けられます。
1 つ目は恒星の核融合反応による光です。人間にとって一番身近な恒星といえば太陽ですが、例えば太陽の光は地球上の環境とは比べ物にならないスケールの高温高圧環境下で水素原子核 4 つが(2個と2個で最終的にトーナメントみたいに)衝突して最終的にヘリウム原子になる核融合反応が起こっています。この核融合によって放出されるエネルギーが(太陽内をなんかやんやで通過してきて)外に光として放たれます。
2 つ目は惑星や衛星による恒星の光の反射光です。これも身近なものを想像するとわかりやすいと思いますが、例えば月は自ら光を放っているわけではなく、太陽の光に照らされた結果の反射光を私たち人間が「光っている」ように見えるものになります。特に地球から近い月は、その照らされる角度が「月」周期で変わる「満ち欠け」が起こります。これは月自らが光を放つわけではない代表的な現象的証左と言えるでしょう。
さて、宙を見上げた時に見える光については(人工衛星を除けば)これらでほぼ理解することが可能です。さらに、地球から見える惑星・衛星は本当にごく一部なので、夜空の星はほぼ恒星の光と思って問題ないでしょう。
それでは 3 つ目の光の仕組みは何かというと、それがまさしく流れ星が光って見える仕組みになります。
先述の記事では流れ星がまとまって見える流星群という現象と彗星の関連について簡単に説明しましたが、この今回はそれらが光って見える原理についてこちらも簡単に見ていこうと思います。
流れ星が光るプロセスを大まかに分解すると以下のステップに分けられます。
流れ星の元になる塵が大気圏に突入する
塵と大気の摩擦によるエネルギーによって塵が過熱され、一部が蒸発する
さらに有り余るエネルギーによりプラズマ状態というイオンレベルにばらばらに分解された状態になる
プラズマ状態は非常に不安定なので安定な状態に戻ろうとし、その際にエネルギーを光として放出する
実は不安定な状態から安定な状態に戻るときに光を発する 4 のプロセスは、何かとネタとして持ち上げられる花火の光の色を裏付ける炎色反応と同様の仕組みになっています。
ちょうど直近で炎色反応の色の仕組みについて解説している 10 分程度の解説動画が公開されましたので、そちらもお時間があればご確認ください。
(※わかっている人向けの脚注:炎色反応の対象となる分子中の電子脱励起と、プラズマの脱励起は現象として区別しておく必要があります)
以上をまとめると、星の光は
太陽のような恒星で起きている核融合反応によって放出された光
月のような恒星が出した光を惑星・衛星が反射した光
流れ星の構成成分の一部が熱によってプラズマ化した結果放出された光
の 3 つに大別されます。
光の魔法使いと闇の魔法使いは何を魔法へと変換するのか?
さてさて、これまでに星が光る仕組みを簡単に述べましたが、星が光る仕組みとLaDのあらすじの対応を考えてみましょう。
まず、光の魔法使いがもたらす光は自然を豊かにするものでした。上記 3 種別の星の光と照らし合わせたときに、太陽・月・流れ星のうち自然を豊かにするものとして一番素直に対応付けられるのはおそらく太陽でしょう。ここでは太陽に限らず、普段の夜空で見える星の大半を占める星々の括りである恒星をもってして、光の魔法使いは恒星と対応した(恒星の”力”を使った)魔法を使う存在に相当します。自身の内部から放出されるエネルギーによって光輝く星の力と光の魔法使いが対応すると考えてみましょう。
一方で、闇の魔法使いについて考えてみると、魔法を使う力は残っていなく、金貨より価値のある自らの身体の一部を対価とすることで国と民を救いました。これは、恒星のように自身そのものから光を放てず、大気圏突入時に自身を削って光輝く流れ星と対応付けられるのではないでしょうか。
283 プロ既存アイドルを光の魔法使いや恒星、斑鳩ルカを闇の魔法使いや流れ星としたとき、283 プロの既存メンバーが斑鳩ルカを一緒に活動するように働きかけるシーンが今回のイベコミュで多く見受けられましたが、これは283 プロが自分たちと同じように光るように斑鳩ルカへと近寄ることに相当するのではないでしょうか。
実際、斑鳩ルカは輝きと消えることが近い距離にある概念であることを今回のイベコミュでも言及していました。
斑鳩ルカを流れ星としたとき、彼女に輝くことを求めるのは、彼女自身を削りその存在自体を燃やし尽くすことを要求していることと意味合いが近いことになるのではないでしょうか。
輝きのとらえ方を恒星の立場でしか提案できない無垢な善性を終始提示し続ける既存メンバーたちが印象的なイベコミュでした。個人的に初見時から上記のような流れ星と斑鳩ルカを重ねる視点で見ていたので、その無垢な善性の残酷さがまるっと残された印象を持っています。
無垢な善性に対する客観視と解決への道筋というテーマは例えば『はこぶものたち』で展開されていたようにシャニマスではよく扱われる内容ですので、今後越境イベコミュでこの観点から「輝き」という概念へのアップデートがなされることへ期待が持たれます。
彗星自体の光についても考慮してみると
さて、今回は先立って公開していた記事の流れ星の光をベースにして考えてみましたが、彗星自身の光についても考えてみましょう。
彗星が光って見える正体は、太陽から受けたエネルギーにより氷など揮発性の物質がガスとなり、彗星の核をまとうぼんやりとしたガスと一緒に含まれた塵たちが太陽の光を乱反射したものになります。
流れ星とは違う形ではありますが、彗星自身も太陽に近づくことでそれ自身の成分を削り光輝く存在です。
これと LaD のあらすじを考慮すると、闇の魔法使い、そして斑鳩ルカ・コメティックを彗星と重ねることも一つの答えになり得るとも思えます。
ただ、「無重力アプリオリ」の歌詞を踏まえると立場としては彗星より流れ星の視点がより強いと感じるところですので、現段階としては両論のうちいずれかを否定することなく、ともにキープし続けるのが現在の安定択のような気がします。
また、LaDのあらすじ内にある
というフレーズからも、方角や時期に対応して人を導く象徴としての恒星と、刹那的な存在ながら人へ救いをもたらすと勝手に思われている流れ星という対応関係が見られます、「救い」という観点はあまり彗星とはマッチしないため、両論ともに持ちつつも、流れ星説の方にややウェイトを置きながら考えていくのが自然な流れになりそうです。
おわりに
今回は星が輝く仕組みの分類から、「斑鳩ルカ・コメティック=流れ星」説の延長として『ライトアンドダークネス』のあらすじとアイドルの対応関係について考えてみました。
シャニマスくんのオタク仕草全開な記事公開もあり、これからも 5.5 th ライブに向けて様々な情報が出されるかもしれません。震えて待ちましょう。
スカイランタンも「光と願い」の象徴としてイベントコミュで出てきましたが、先述の通り、斑鳩ルカそしてコメティックの存在によりシャニマスとして光輝くことをさらに哲学していくことを期待します。
それでは~。
🐚(以下『ライトアンドダークネス』あらすじの書き起こし)
Appendix. 『ライトアンドダークネス』あらすじほぼ全文
(※シーンを跨いだのりしろ的な重複部分は適宜カットしています)
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