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ユニットシャッフル越境コミュとそのチーム分けを振り返る

アイドルマスターシャイニーカラーズで毎月公開されるイベントコミュにおいて、毎年夏(8 月)と冬(12 月または 1 月)に公開されるものは普段のユニット内でのストーリーではなく、複数ユニットが登場します。

サービス開始から長らくは公開時点で 283 プロに所属している全アイドルが登場するコミュとなっていましたが、その形式は 2020 年 12 月に公開された『明るい部屋』が最後となります。その後 7 つ目のユニット SHHis が加入してからの 4 つの越境コミュ『アイムベリーベリーソーリー』『#283をひろげよう』『ロング・ログ・エンドロール』『線たちの12月』は計 25 名のアイドルがいずれか 1 つのコミュのみに登場しました。

今回は、 5 周年を目前にしたこの時期に、それぞれの越境コミュの簡単な内容の振り返りと、選抜されたメンバーの共通した人物像についてまとめて振り返ろうと思います。

※この記事にはコミュについてのネタバレがありますので、各個人の判断でお読みください。
※越境コミュ以外にも、これまでの各育成シナリオ・イベントコミュの内容にも触れる場合があるのでご注意ください。
※個人の感想(・こじつけ)です。

『アイムベリーベリーソーリー』と「愛」

『アイムベリーベリーソーリー』はまさに幸せと愛について思いを馳せる物語でした。

プロデューサーが企画する櫻木真乃、田中摩美々、幽谷霧子、園田智代子が生花店でのボランティア研修を体験しながら、アンティーカに所属する霧子、摩美々を発端として同ユニットメンバーの月岡恋鐘が出演するスマートフォンアプリゲームをプレイしていき、そのゲーム内で月岡恋鐘が演じる女性についてそれぞれが思いを馳せる。
多忙を極める SHHis の二人もボランティアメンバーと送迎の車中や事務所で交流をし、一見独立に動いていたストーリーがすべて『あい』を考える物語として集約していく。

SHHis 初のイベントコミュ『OO-ct. ──ノー・カラット』の次のイベントコミュとして公開されたこともあり、SHHis の二人が揃って登場すること、さらには夏越境にもかかわらずメンバーが 283 プロ所属アイドル全体ではないことにより意外性と恐怖心を携えて公開されました。

報酬カードのイラストのような暗く陰鬱とした雰囲気が常に漂っているコミュでしたが、登場人物については、それぞれが自己・他者を愛することが行動原理になっていることが多いように思いました。

櫻木真乃:『はこぶものたち』を代表に、向き合った事象のあらゆる方向に光を当て救われてほしい、そうなるような取り組みをしたいという「博愛」の心を持った 283 プロの「まんなか」。
月岡恋鐘:自らを突き動かすだけでなく、その輝きによって周りの人にも元気を与えられる「自己愛」が芯にある転生のアイドル。
田中摩美々:かつて表面的な愛情だけを注がれていたために「他者からの愛を渇望する」ことを自ら理解し、同じ孤独を感じている人へと手を差し伸べられるアイドル。
幽谷霧子:その生い立ちにおいて「慈愛」を自ら遂行することを身に着け、他者を愛するということを哲学できるアイドル。
園田智代子:自身のあり方と実態、周囲からの評価を認め、足りていないところを克服した上で自分らしくある生き方ができるような「自己愛」を持ったアイドル。

一方で SHHis はこれらの「愛」を持ち合わせず、自分へ手を差し伸べることのできない様子や他者が愛を求めていることを察知できない様子が対照的に描かれていました。

これらに加えて、作中のゲームにも登場する「あい」というフレーズにもある通り、『アイムベリーベリーソーリー』では「愛」をテーマにしたメンバーの選出がなされていたように思います。

それはそれとして、およそ 1 年越しで恋鐘が演じた「寡婦」の回収をするなんて当時は思わんよ……。

『#283をひろげよう』と「慮」

いつも通り仲が良すぎるイルミネーションスターズや、こじあける桑山千雪、当然のように小糸匂わせマウントをしてくる樋口円香など、破壊力の高い打撃を繰り返した狂気の Twitter 企画と連動した 2022 年新年コミュの『#283をひろげよう』。

283 プロの新規ファン獲得を目的とした SNS での広報活動を、八宮めぐると市川雛菜を主な視点人物として、他には樋口円香、西城樹里、桑山千雪が自主的に広報活動を行うストーリーが軸となります。また、千雪が司会を務める音楽番組へ出演することになったストレイライトのレッスンと本番の様子を芹沢あさひにスポットを当てて追いかけ、稀にシナリオ内に映りこみました。

話の軸としては、めぐる・千雪の他ユニットの出演に対する悔しさや羨望を雛菜が直接会話の中で感じ、自他の行動理念を隔絶するという形で尊重する生き方をする雛菜がその他人の行動理念の解像度を少しだけ上げて、雛菜の中でのアイドルと努力の関係を更新するというストーリーでした。

このイベントコミュのメンバーはそれぞれが「慮」がテーマとなっている人間のように感じています。

八宮めぐる:帰国子女として友達関係を渡り歩く術としての「配慮」を鍛え上げ、それゆえにその配慮をしないことに恐怖を覚えすらしてしまうということは【チエルアルコは流星の】と『Star n dew by me』で八宮めぐるの行動原理を構成するものとして取り上げられていました。
西城樹里やさしい一等賞
桑山千雪:アルストロメリアの年長者などの理由で「遠慮」してしまうことと自分自身がわがままに輝くことの葛藤は桑山千雪のコミュの一つのテーマです。
芹沢あさひ:あさひはほとんどのメンバーと対照的に「他者のことを慮ることを学ぶ」ことが pSSR や共通コミュでテーマとなっている場面が多いです。
樋口円香:自分の在り方とそれに対する他者からの捉えられ方について「深慮」した結果恐怖が生まれ、それをプロデューサーと解消していくというのが共通コミュでよく語られます。
市川雛菜:自分と他者の行動原理は断絶したうえで尊重しあう、ある意味で悲観的な配慮によって自分の生き方を全うしている姿はよく雛菜幸福論とも言われます。

『ロング・ログ・エンドロール』と「道」

2019 年の夏越境『サマー・ミーツ・ワンダーランド』の続編に位置づけられるちょっと不思議な物語。

『ずっとここにいたくなる』というキャッチコピーのホテルの宣伝大使としてホテルでの生活を満喫する様子を撮影することとなった三峰結華、小宮果穂、有栖川夏葉、大崎甜花、大崎甘奈、黛冬優子、和泉愛依。
1 日目からやや不穏な雰囲気を漂わせたまま、2 日目の夕方にホテルの近場の神社で行われている夏祭りへプロデューサーも含めた一行が赴くことに。夏祭りを回っているとプロデューサーがアイドルたちと連絡がつかなくなり、様々な生き物の面を付けた人々がプロデューサーとアイドルの目の前に現れます。「とことわに」という挨拶をしてきたりそこに留まるよう誘ってきたりする面の人々に対して、

このイベントコミュに登場するアイドルは全員求道者とも言えるメンバーで、プロデューサーは彼女たちと進むべき「道」を一緒に模索している立場だからこそ、変化を恐れその場にとどまることを望む狐面の少年への声掛けができたのでしょう。

三峰結華:もともとアイドルオタクで、なおかつ聡明な結華は、Pラブ的な側面も強いアイドルですが、アイドルであるということを客観的に捉えてどうふるまうかを常に考えている求道者と言えるでしょう。
小宮果穂:「ヒーロー道」としてのアイドルの在り方を放クラのメンバーやプロデューサーと一緒に歩んでいく姿が様々なコミュで描かれています。
有栖川夏葉:有栖川夏葉が有栖川夏葉として歩むアイドル道は常にカッコいい(感想)。
大崎甜花:様々なコミュで「頑張る」ことに考える甜花は常に「一歩一歩道を歩むこと」とそれを応援することについて哲学しているアイドルです。
大崎甘奈:「アイデンティティを探して自分の道を見つける」ことから始まり、変化への恐れと覚悟も甘奈コミュのテーマになりがち。
黛冬優子・和泉愛依:ストレイライトは求道者集団。

道を歩む上で変わることも必要で、それを楽しみだと思ったと言ってくれた甘奈に、泣き。

イベコミュが進んでいくにつれてアイドルが自立していく一方で、プロデューサーが人の弱さに優しく向き合うシーンが 2022 年はちょくちょく見られました(『かいぶつのうた』とかも)。

『線たちの12月』と「憧」

シャッフル越境のトリとなった 2022 年 12 月のイベコミュ『線たちの12月』。

町内会が行っている火の用心の夜回りにボランティアで参加することになった白瀬咲耶、杜野凛世、浅倉透、福丸小糸。ユニットをまたぐ形でのペアで活動日誌を書くことに。
それと同時並行的に、他事務所が主に用いるレッスンスタジオでの投機集中レッスンに励む風野灯織は、斑鳩ルカに彼女の事務所の練習生だと思いこまれて親しげに一緒にレッスンする過程が描かれます。

「見えるもの」と「見たいもの」にまつわる祈りと願いの物語ですが、このイベントコミュに登場する 283 プロのアイドルにはそれぞれ「憧」れを強く持ったメンバーのように思います。

風野灯織:学園祭に来ていたアイドルに憧れて、自身もアイドルになりたいという王道っぽくて 283 プロでは珍しい動機でアイドルをやってる灯織。誕生日おめでとう(記事公開日)。
白瀬咲耶:父親との時間がなかった寂しさゆえの「他者との関係の中にあることへの憧れ」とそれを実現するための振る舞いこそが白瀬咲耶という人物像の根幹。
杜野凛世:プロデューサーへの恋焦がれる姿という意味での「」れが動力の一つとなっているアイドル。
浅倉透:何も起こらなかった日常抱えていた非日常への憧れをアイドル活動を通じて満たしていき、その存在を周囲に利用されていく過程が描かれるのが浅倉透のコミュです。
福丸小糸:幼馴染の 3 人を追いかける姿から、最近ではどのような憧れられる姿になるかというところも描かれ始めています。

シャニマスの思想コミュの一つである『くもりガラスの銀曜日』の内容にも間接的に言及していきながら、斑鳩ルカが見えているものについて描いたのはシャニマスの 12 月を浴びるには十分すぎる内容でした。

最後に

半ば強引な関連付けとなりましたが、各シャッフルイベントコミュで描きたかった思想の部分に対応したアイドルが選出されているのだなとこの記事をまとめながら改めて感じました。
それぞれの思想についてもアイドル物の王道ながら扱い方がシャニマスらしいものばかりです。

SHHis に始まり斑鳩ルカに終わったシャッフル越境というのもあって、これら 4 コミュが(これまでのイベントコミュで既に伏線となっているものもありますが)、これからの 283 プロの物語の下敷きとなるのかが楽しみですね。

とりあえず、この記事を書いている 2023 年 3 月 4 日時点ではただただ 5th に怯えるのみ……。

↓前回の無理矢理分類記事。


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