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卓上遊技再現演義『楊範・鄭令蔓伝』あとがき

ジーぽん(文章担当・GM)

 さきもりのおさ文章担当のジーぽんです。「楊範・鄭令蔓伝」完結しました。
 それなりに長い完結したストーリーをちゃんと仕上げたので、ここであとがきのようなものを書いてもバチは当たらないでしょう。

1 キャンペーンの立ち上げについて

 さて、楊範・鄭令蔓伝もシリーズ名に卓上遊戯再現演義シリーズとある通り、TRPGリプレイが元になっています。当時、ヤン編と呼ばれていたこのシリーズは、筆者が関東に出てきた後の、最後にプレーしたキャンペーンでした。

 主人公のヤン・ハヌマットは竜門寺ユカラさんのオリジナルキャラクターで、このキャンペーンをやる前からユカラさんのホームページの看板キャラです。が、この時点では特に背景ストーリーのようなものはなく、どちらかといえばファッションモデルみたいなキャラでした。

 竜門寺ユカラさんと交流して、ヤンくんというキャラについていろいろ話をしてゆくと、この背景の不足がいろいろ問題となってきました。単なるイラストだとしても、背景ストーリーの有無で深みや陰影のようなものがかなり違ってくるからです。そこで企画されたのが「ヤンを主人公としてTRPGキャンペーンプレーをする」というものでした。

 今から考えるとかなり危険な試みだったかもしれません。プレーヤーが一人のキャンペーンですら、キャラクターがイメージ通りの活躍をするかどうかは保証できないのです。ゲームというシステムに乗せる以上、予想外の…サイコロという乱数が悲喜劇を生む例は数しれない…ましてや今回は、他にもプレーヤーがいるという条件でした。

 まあ幸い、他のプレーヤー諸氏は今回の企画に好意的で、もり立てるポジションを買って出てくれました。筆者のキャンペーンで黎明期からプレーに参加してくれているテレマコスのプレーヤー氏の絶妙な誘導もあり、このキャンペーンは大成功に終わったのです。

*     *     *

 本キャンペーンは既にnoteで公開済みの「シザリオン編」の続編に当たります。プレーに使用したシステムもシザリオン編と同じくオリジナルのものです。

 既に大魔道士であり、神々との闘いを繰り広げているテレマコスや、シザリオン編で既にエピックヒーローとしての運命を歩んできたリンクスが加わっているキャンペーンですから、ストーリーとしてははじめから人を超えたキャラクターを前提としていました。まあこれはユカラさんの看板キャラを主人公にすると決めた時点で問題ないと判断しています。ヤン・ハヌマットというキャラがデザイン時点でインド神話のハヌマーンをモデルにしているからです。ご存知の通りハヌマーンは西遊記の孫悟空のモデルと言われていますし、神話でも数々の偉業をなした神猿です。これと関連付けられたキャラとなれば超自然的なストーリーがふさわしいでしょう。

 問題はプレーヤーでした。ベテランで高レベル帯のテレマコスのプレーヤーさんを除くと、残りのメンバーはTRPGの経験が豊富というわけではないからです。通常の世界が舞台のシナリオなら、それでもイメージを理解しやすいのでなんとかなるのですが、敵が半神のような超常的な力を持っている高レベル帯のストーリーとなると、いきなりプレーしてはわけがわからなくなってしまいます。

 解決策としては、足を地につけた中レベル帯の事件から始めて、その中で異様な高レベル帯の世界を垣間見せ、話を広げてゆくという流れです。そしてそのための案内人としてテレマコス(そしてリンクス)が行動するという形しかありません。

 そういう理由から、主人公ヤンの登場時のあり方が決まってきました。制御できない超常的な力を持ち、他人との違いに思い悩む繊細さを持つキャラです。幸いヤンは東洋系キャラという設定にも関わらず金髪碧眼、そして第三の目まであるという特殊な外見です。そして他のメンバーも特技を活かせばヤンやテレマコスの向かう世界に手が届くように持ってゆけば、なんとかセッションが成立する…

 全てがこうして整合性がつき、ようやく楊範伝のストーリーが走り始めたのです。

2 設定をどのように作ったか

 今回舞台となった中原地方は、おわかりの通り地名などは古代中国をかなり流用しています。今まではたいてい地名くらいはそれっぽいものを独自で考えていたのですが、今回は断念しました。古代中国の神話などとの関連がストーリーと深く関わってくるためです。

 ヤンの持つ如意金箍棒が大禹の神器だったという話や、劉衛皇帝自身(そしてかつての王朝の創始者もおそらく)が、神を背負っているという設定にしたことで、古代中国の名称をそのまま使ったほうが良いという考えになりました。

 実際のところ、こういう小説は結局現実とは別世界の別世界線ですから、無理にオリジナルの名前を考えて、世界観の共有に支障をきたすくらいなら、名前を借りることで理解してもらったほうがよいと考えました。
 「中世には硝子板なんて無いんだからおかしい」という話がよく出ますが、それが世界の設定において(技術水準の描写などで)重要な意味を持つなら良いのですが、そうでないならあまり意味のない論議と思うからです。

 さて、キャラを取り巻く世界の設定ですが、実はけっこう後付けでした。フィードバック型の設定の作り方というべきでしょうか。

 基本的には既に行われたキャンペーンの設定はそのままに、追加する必要がある部分だけ設定を加えています。それ以外の部分はストーリーが進むに連れて辻褄が合うことをつなげて、それを設定としました。GM自身がプレーの中で世界を探求していたようなものです。そんなことで良いのかと言われるかもしれませんが、意外なほどうまく機能します。

 ただ、この辺はプレーヤーとの意見交換やプレーの積み重ねによる蓄積も多かったです。プレーヤーも参加して世界設定を作ってゆくという考えで進めていました。また当時は認識していなかったことが、文章化、さらには20年を経て再編したことでわかったこともあります。

 設定集を先に作ってから作品を書くというのは、自分には無理でした。必要な設定の密度を舞台全体に作り出そうとすると、かえってうまくゆかないようです。ストーリーに合わせて設定づくりを並行して進めるほうが自然になる気がします。

3 二十年ぶりに読み直して

 さて、キャンペーンを終えて、小説という形で記録を残して20年の歳月が流れました。今回、竜門寺ユカラさんの同人活動25周年記念ということで、あの頃を思い出して再編集、挿絵の大幅追加と記述の見直しをして文庫本にしたわけです。特に一昨年同様の形で大幅増補して「シザリオン編第一部」「同第二部」を一気に発表したことで、今回の「楊範・鄭令蔓伝」にも多少書き加えた部分があります。

 久しぶりに「楊範・鄭令蔓伝」を読み返してみると、筆者としてはやはり胸熱…懐かしさとあの頃の熱さが思い出されて感無量でした。この辺はシザリオン編のあとがきでも書きましたか、ヤン編でもやはり同じです。もちろん昔書いた文章ということもあって、ちょくちょく手を入れざるを得ないところもあるのですが、ともかく若かった頃の日々が思い出されて熱いです。

 読み直してみると、今のライトノベルでは避けられる、主人公が苦悩し、責任を背負うような要素もあり、今風ではないとも思います。少なくとも無双系じゃないですし… 

 しかし終盤に向けての盛り上がりから一気に強敵アナスタシアと対決し、そのまま最終決戦の火蓋が切られる展開なんかは、よくこんなストーリーをプレーして、小説化できたなと思ってしまいます。当時の俺、凄かったのかも(笑)

*     *     *

 最終巻なのですが、挿絵に烏丸毛虫さんとFOXさんが参加してくださいました。烏丸毛虫さんはしばらくご無沙汰していたのですが、筆者の「みぎてくんの本」シリーズなどでは時々挿絵を寄せてくださった、古い付き合いの友人になります。今回、久しぶりにコンタクトを取って「楊範伝」再版という話をしたところ、とても懐かしがってくださり、快く挿絵に参加してくださいました。

 FOXさんは当時のプレーヤーの一人で、こちらも初版の頃にも挿絵を頂いていたのですが、今回再掲を快諾していただきました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。


竜門寺ユカラ(表紙担当・ヤン・ハヌマットプレーヤー)

表紙等イラスト担当、竜門寺ユカラでーす!

『楊範・鄭令蔓伝』は半ばライフワークであり、長ばなしにお付き合いいただけたら幸いです!

☆ヤンくん誕生

楊範・鄭令蔓伝の主人公でもある『ヤン=ハヌマット』が生まれたのは高1の夏休み。クラスメイトが森林学校に行ってる最中、自分は鼻の手術で一週間入院してる時描いたのが始まり。
(そもそもの陰キャ傾向も相まって余計にクラスメイトとの距離が…余談)

ヤンくんはオリキャラだけど、マンガ描いたりではなく、ひたすらかっこいいポーズやキンニクを追及した立ち絵がメインでした。

大学で漫研に入り、一度だけマンガにチャレンジしたとき、いわゆる『お約束』に満ちた「おマヌケな風の又三郎」といったストーリーで…そのころからヤンくんは『強いけど押しの弱い男』イメージでした。

☆『ぢ・がらくてぃず』活動開始〜

そのころ、パソコン(Power Macintosh 7200/90)を何とか買い、テレホーダイでインターネットを始め、個人サイト『ぢ・がらくてぃず』運営開始。

コミケにも初参加(ビッグサイトの初め頃)もちろん初めての同人誌はヤンくんをメインとした

『ぢ・がらくてぃずカラーイラスト集(コピー誌)』

これを買ってくれたのがなんと!文章担当ジーぽん氏。
それ以来のお付き合いですなー。(*´艸`*)

その後しばらくして、ジーぽん氏から「ヤンくん主役のTRPGをやろう!」とお声がけいただき…そのあたりのくだりはジーぽん氏のあとがきにあるとおり。

そしてリプレイ小説『楊範・鄭令蔓伝』として全10巻にまとめられたわけですが、当時「オンデマンド印刷」はまだ登場しておらず「文庫本」同人誌は高嶺の花!
なにせオフセット印刷になるので

  • 「最低100部」

  • 「ページ数にほぼ比例する価格」

  • 「版が小さい程切断回数増えるため割高」

ときて、ン十万円当たり前…

もちろん、今でも文芸サークルさんA5本で出す方もいらっしゃいますが、
それでもページ数多くなる小説本は当時かなり割高でした。

故に弊サークルが編み出したのは

『カラー表紙自家PP加工コピー本』

具体的な作り方は動画にまとめています

それから約20年、ここ10年は2次創作メインの弊サークルでしたが、
オンデマンド印刷の普及により、文庫版制作コストは大きく下がりまして。改めて『楊範・鄭令蔓伝』を「文庫版化」したいなーという機運が高まり、現在に至るわけです!

いやー!サークル『ぢ・がらくてぃず』立ち上げ25周年記念事業ともいえますな\(^o^)/

☆表紙絵裏話

元々、全10巻だったのを文庫本4冊にまとめるにあたり、
1つマイルールを課しました。それは

『過去の表紙絵をリメイクする』

そうなると、文庫版1つにつき旧2〜3巻分をまとめることになりますが、
それが想像以上にキツかった/(^o^)\

壱 壮途編

これはまだ旧1〜2巻分のまとめなのでそれぞれ表紙、裏表紙に配置するだけ。
しかし!今自分の絵柄で描くとヤンくんガチムチに/(^o^)\
しかも、20年ぶりに描く各キャラを掴むのにもかなーり苦労!

それにしても群像で描いてたりとか当時頑張ってたなー\(^o^)/

弐 邂逅編

結構難産だったが出来は満足

こちらも旧3〜4巻で表裏配置。
それにしても、表紙側(旧3巻表紙)は自分の作品でも突出した出来で、
ホント当時どうやって描いたか分からないレベル/(^o^)\
特に、右上の恐竜たちが朝日をバックに現れる表現は難しく、
実言うとトレスした(1敗)

裏表紙は単純にキャラ立ち絵だが、大女祭アナスタシアの衣装、当時ジーぽん氏から
「中世の女性装束で。冠みたいなのがデカイやつね。」
と言われ、そんなの知らなかったので悶絶した思ひ出…

参 登竜編

レイアウトに苦労した・・・

旧5〜7巻まとめで配置が難しくなる。
掲載キャラ7名(モンスターゴウエツ含)

しかも、中ボス『賓眉人』絵は当時でも出色の出来
かつこの巻にしか登場しない。
テレマコス以外はもう表紙に出ないメンツなので外すことも出来ず、
配置に非常に苦労した/(^o^)\

本来、表紙カバー絵の他に挿絵も数枚担当だったものの体調が思わしくなく、そちらは武器鍛冶帽子くんに頑張ってもらった🙏🙏🙏🙏

敵は過去の自分。超えていなければならないプレッシャー…
それくらいカバー絵は馬力が必要なのよ…

肆 覚醒編

肌色面積多め

これまた旧8〜10の3巻分。
とはいえ旧8と10巻の圧倒的な出来にくらべ、旧9巻表紙絵(ロウハンとアナスタシア)はあまり出来が良いとはいえず、事実上8と10の配置。
とはいえ、今回ロウハン、アナスタシアはよく描けたと思う(*´艸`*)

ロウハンの出来が気に入っており、あとユウジンが最終巻に載らないのは忍びないため、カバー下のペーパーバック表紙に。

表裏ともにヤンくんがスッポンポンだが!それは過去の表紙絵がそうだったからである!それだけである!(圧)

にしても、またも『ヤンくんガチムチ化』に悩まされる/(^o^)
特に表紙側。
裏表紙側の帝国女神シルエットはトレス(2敗)

☆お気に入りの挿絵

挿絵全てについて語ると多すぎるのでお気に入りのヤツをば

ヘタレヤンくんに呆れる二人

ヤンくんは『ヘタレ』とされてるけれども「カッコイイ」絵ばかりだったので、
ここまでヘタレ感が「描けた」というのが自分でも嬉しいポイント\(^o^)/

黒多めでよくまとまったと思う

いわゆる『格ゲーのマッチ画面』をイメージ。
ジーぽん氏にも高評価いただきましたー\(^o^)/

☆ということで

アツく語ってきた『楊範・鄭令蔓伝』
一旦お話は終わりましたが、実のところまだまだ先の展開が構想されています!
もしかしたら、続編がでるかも?????

お付き合いありがたやー(*´艸`*)


武器鍛冶帽子(挿絵担当)

 挿絵担当の武器鍛冶帽子です。

 今回、楊範・鄭令蔓伝全4冊、挿絵をガッツリ描かせていただきました。メイン絵師の竜門寺ユカラさんが表紙で大変なので、割当もけっこうたくさんいただき光栄です。
 セッション当時のことはあまり僕からは語ることはないのですが、実は一つだけネタがあります。厚紙フィギュアのことです。

 最近のTRPGはどんな感じなのかわからないのですが、ヤン編をプレーしていた当時も戦闘シーンになると、タイルを並べてフィギュアを使って戦闘を解決していました。今みたいに3Dプリンターで出力できるオリジナルのフィギュアなんてなかったので、厚紙に色鉛筆でマイキャラを描いて、アクリルのスタンドに立ててゲームをしていたものです。ヤン編のころになると、インクジェットプリンターも手軽になりましたので、敵の兵士などはCGで作って印刷したものもありました。この厚紙フィギュアづくりはとても楽しく、僕もいろいろ頑張ったものです。

 今回当時の厚紙フィギュアの写真をここで少し掲載しようと思います。

ヤンくん(竜門寺ユカラさん作)
テレマコス(武器鍛冶帽子作)
ユウジン(武器鍛冶帽子作)

*     *     *

 さて、挿絵の方ですが、神絵師でもなんでもない僕が描くので現時点ではこれが限度です。

 挿絵はどうやら大きく分けて二つの描き方があるようで、イメージイラスト系とコミックのようなシーン切り抜き系になります。イメージイラスト系の場合、キャラが小さかったり全く入らず、世界観を表現する景色が描かれている場合もありますね。

 僕は今回、あえて両方描いてみたのですか、絵描きさんによって得意不得意があるようで、僕も色々苦戦しました。イメージイラスト系だと、ストーリーの世界観をある程度把握していないといけませんし、シーン切り抜きの場合はアクションなんかを描いたり、映像としての工夫が必要だったりします。まあこれだけたくさん描かせてもらったので、少しはうまくなってたら嬉しいのですが…

 竜門寺ユカラさんを見習って、お気に入りの挿絵を2枚ばかり選びました。

魚眼系の構図は初めてだったので…
半神ジャコビー、頑張りました

 僕は今後もジーぽんさんの新作で、挿絵とかを担当する予定なのでよろしくお願いします。

 それでは次回作でまたお会いしましょう。


46万字の壮大なストーリーを堪能していただけたら幸いです。

ところで、サークル『ぢ・がらくてぃず』は
今後もコミケを中心に活動継続してまいります!

竜門寺ユカラ作品はpixivにも掲載していますので
よろしくお願いします!!!

それではまたお会いしましょう☆

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