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こども大綱に「不適切な指導」が載りました!

2023.12.22
こども大綱が閣議決定されました。

こども大綱を作成する前段階としてこども家庭審議会で作成・公表された中間整理には、学校での「体罰」「不適切指導」という言葉は書かれていませんでした。
そこで、考える会でパブリックコメント提出と、公聴会やこども若者いけんの会にメンバーが参加させていただき、不適切指導とこどもの自殺対策について意見をさせていただきました。

その結果、「体罰や不適切指導の防止」という項目が設けられたり、こどもの権利侵害の一つとして書き加えていただくことができました!!

全文は実際に提出した意見書を見ていただければと思いますが、文量を減らして、こちらにも書かせていただきます。

不適切指導に関して

「不適切な指導」について加えてほしい理由
・令和4年12月改訂の「生徒指導提要」の中で、「教職員による不適切な指導等が不登校や自殺のきっかけになる場合もあることから、体罰や不適切な言動等が、いかなる児童生徒に対しても決して許されない」とされました。
  このことは法務省と文部科学省から、「令和4年度 人権教育及び人権啓発施策(年次報告)」として、国会にも報告されました。その後、令和5年3月29日付で文部科学省から各都道府県教育委員会等あてにも通知されました。
・不適切な指導は、こどもの権利条約の四つの原則(①差別の禁止②児童の最善の利益③生命・生存・発達に対する権利④意見を表明する権利)が守られていない深刻なこどもの権利の侵害です。

「不適切な指導」を書き加えてほしい箇所
以下のようにいくつか提案させていただきました。その結果、大綱ではたくさんの箇所に「体罰、不適切な指導」という言葉を書き加えていただくことができました(大綱P7.9.10.15.37)。

◆p.8 虐待、いじめ、経済的搾取、性犯罪や性暴力などの権利の侵害からこどもを守る。
→虐待、いじめ、体罰・不適切な指導、経済的搾取、性犯罪や性暴力などの権利の侵害からこどもを守る。

考える会パブリックコメント

不適切指導の別項目を作ることも要望
具体的には以下のようにご提案しました。結果、「体罰、不適切な指導の防止」という項目を作っていただけました(大綱P30)。しかし、不適切指導の調査や相談先の確保は、記載していただくのが難しかったようです。


◆(体罰・不適切な指導の防止)
教育的根拠のある安全な生徒指導が現場で徹底されるとともに、教職員のみならず、こども自身とその保護者も不適切な指導への知識を身に着けていけるよう啓発していく必要があります。さらに、不適切な指導を想定した相談先の確保、調査・分析や再発防止の検討ができる仕組みを整備することが求められます。

考える会パブリックコメント

大綱P30
(体罰や不適な切指導の防止)
体罰はいかなる場合も許されたものではなく、学校教育法で禁止されている。また、生徒指導提要においても、教職員による体罰や不適切な指導等については、部活動を含めた学校教育全体で、いかなるこどもに対しても決して許されないと示されていることを踏まえ、教育委員会等に対する上記趣旨の周知等、体罰や不適切な指導の根絶に向けた取組強化を推進する。

こども大綱

「(犯罪被害、事故、災害からこどもを守る環境整備)」(大綱P23)への要望
以下のようにいくつか要望していましたが、こちらは反映されませんでした。

◆(地域スポーツでの体罰・不適切な指導の防止)
学校内で行われる部活であれば、学校教育法による体罰禁止が適用されます。しかし、地域移行によって民間人等が部活動の監督や指導員をした場合、不適切な指導に至っては拘束されない可能性があります。そのため、 地域移行後の監督や指導員も、体罰・不適切な指導を禁止することが求められます。
◆(いじめや体罰・不適切な指導等による後遺症へのケア)
いじめや不適切な指導等は、いじめや不適切な指導が止まったり、加害者側が反省したとしても、その傷が癒やされないことがあります。中には、学齢期だけでなく、数年、数十年に渡りトラウマとなるほどの後遺症が残ることがあります。精神疾患を抱えたり、社会的ひきこもりになる場合もあります。そのため、後遺症の視点を持ち、実態調査や分析、ケアが必要になります。

考える会パブリックコメント


以上のように、取り扱っていただけなかったところも多々ありますが、不適切指導に関しては、ゼロからの要望であったにも関わらず、遺族や当事者の思いを一定程度汲んでいただけたと感じられる結果となりました。

こどもの自殺に関して

こどもの自殺に関しても要望しましたが、そちらは書き加えていただくことは難しかったようです。

「こどもの自殺」が書かれている箇所の違和感
以下のように要望しましたが、括りが変更されることはなかったです。遺族としては、やはり、こどもの自殺と犯罪を同じ項目として振り分けていることには、今も違和感があります。

「(7)こども・若者の自殺対策、犯罪などからこども・若者を守取組」(大綱P22)ですが、こどもの自殺と性犯罪は発生するプロセスも介入方法も全く違うため、一つの項目にまとめるのではなく、分けて書くできです。

考える会パブリックコメント

(こども・若者の自殺対策)(大綱P22)への要望
こどもの自殺対策について書いてあるのは、このページのみです。

(こども・若者の自殺対策)
こども・若者の自殺対策については、自殺に関する情報の集約・分析等による自殺の要因分析や、SOSの出し方や心の危機に陥った友人等からのSOSの受け止め方に関する教育を含む自殺予防教育、全国展開を目指した1人1台端末の活用による自殺リスクの早期発見、電話・SNS等を活用した相談体制の整備、都道府県等における多職種の専門 家で構成される対応チームの設置促進等による自殺予防への的確な対応、遺されたこどもへの支援、こども・若者の自殺が増加する傾向にある長期休暇明け前後の集中的な啓発活動など、体制強化を図りながら、自殺総合対策大綱及びこどもの自殺対策緊急強化プランに基づく総合的な取組を進めていく。

こども大綱 P22

上記内容は、「こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議」で示された短期目標である「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を中心に書かれています。
しかし、短期目標だけではこどもの自殺対策は不十分です。
そこで、以下のようなことを加筆してほしいと要望しました。

しかし、ご検討いただくことは難しかったようです。

・SOS の受け止め方に関しては、こどもの友人だけでなく、こどもと関わりのある大人も正しい知識を身に着けられるよう取り組むことが求められます。
・大人はこどもよりも強い立場になってしまうことがあるため、大人がこどもを意図せず追い詰めないように、また、追い詰めてしまった際に速やかにこどもの安全を確保できるように、知識と対応力を身につける必要があります。
・精神科医など自殺の専門家による心理学的剖検の再開も検討すべきです。

考える会パブリックコメント

「(犯罪被害、事故、災害からこどもを守る環境整備)」(大綱P23)にCDRへの要望

こどもの自殺とは別の項目にCDRについて書かれています。
そのため、以下のように要望させていただきました。

チャイルド・デス・レビュー(CDR:Child Death Review)の体制整備に必要な検討を進める。

こども大綱P24

CDR はこどもの死を無駄にしないために、こどもの死因を究明する制度です。「こどもの自殺対策緊急強化プラン」でも「CDRの体制整備に必要な検討を進める」と書かれている通り、こども大綱でも、事故・災害だけでなく、こどもの自殺を含めた、亡くなったこどもの全件調査も究明の対象とすべきです。

考える会パブリックコメント

要望は反映されませんでしたが、こちらはその理由が「こども大綱(説明資料)」で説明されています。

修文に結びつかなかった理由・考え方
CDRモデル事業においては、自殺の事例も含め、同意の取れた事例について対象としているところです。CDRの在り方については、引き続き必要な検討を進めることとしています。

こども大綱(説明資料)


その他、個人でも公聴会に参加したりパブコメを提出したりして、それぞれが意見をお届けしました。
その中で、個人的に思っていることを書かせていただきます。

こどもの自殺対策の検討が閉鎖的
「こどもの自殺は議論がされていると感じられないが、どの部会が責任を持って考えてくれているのでしょうか?」と質問したところ、「こどもの自殺対策は部会ではなく関係省庁の連絡会議を作ってプランをまとめています」とお返事いただきました。
そのことを受け、「公聴会やパブリックコメントで出た意見を関係省庁の連絡会議に届けて、意見が反映されたこどもの自殺対策を進めてほしいです」と要望しました。
しかし、パブリックコメントや公聴会を経ても、こども家庭審議会の中間整理で公表された内容からほぼ変化が加えられることはありませんでした。
残念ながら、今回はこどもの自殺対策に関して、開かれた場で様々な方の知恵や思いを反映させて進めてくださっていると感じることができませんでした。

自殺事案から学ぶ姿勢の不足
こども大綱でも、自殺“予防“のことが多く書かれていますが、自殺してしまった子の命をもっと大切に扱ってほしいと思います。即時的な統計に頼らず、しっかりとした調査で個々の自殺の背景や要因をしっかりと調べてもらえば、防げるはずの自殺が見つかるはずです。

自殺してしまった子の周りの子どもへの視点が不足
「こどもの自殺対策緊急強化プラン」によると、大綱で書かれている「遺された子の支援」とは、おそらく「自死遺児」のことと思われます。
自殺してしまった子の周りには、遺された同級生や兄弟姉妹がいます。「こどもの自殺」のことを書いている項目なのであれば、大人ではなくこどもの自殺が起きた時の、周りのこどものケアについても書いてほしかったという思いもあります。

自殺のハイリスク者への視点が不足
自死遺児が後追い自殺などの自殺のハイリスク者だと考えるのであれば、遺された兄弟姉妹を含めていただくのはもちろんのこと、自殺未遂の子や被虐待児などの支援が抜けていることも気になります。


最後に

考える会のメンバー以外の方にも不適切指導について沢山ご意見を出していただき、関心を寄せていただき、誠にありがとうございました。

不適切指導は権利侵害であるとハッキリ書いていただけて、項目も新設していただけて、中間整理で「不適切指導」という言葉すらなかったとは思えないほどです。
多くの方のご意見や関心を寄せてくださる姿勢が届いた結果だと思うと、本当に心強い思いです。

こどもの自殺対策は、今後の実行計画等で様々な意見を踏まえて考えていってくださることを期待します。

引き続き、不適切指導によって将来が変わってしまったり、命を落としてしまう子を減らせるよう、できることを一緒に考えていただけますと幸いです。



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