2020/05/最近読んだ本などについて(その4)

おはよう。

5月は当社比で割と本を読んだのだけれど、大作漫画が2作含まれていて頭の中が整理し切れないでいる。

感想を書き出すと割とスッキリ理解出来るので、早めに書けたらなぁと思いながらも今回はそれ以外の感想を書いてしまった。


・内田樹/サル化する世界(文藝春秋)
よく文藝春秋のネット記事で内田先生の記事が流れてきて、物凄く丁寧な言葉で怒る人だなぁと思っていて、憂う印象が強い人とか、当たり散らすだけの人とはその丁寧さが違うなぁと思ってようやく本を買ってみた。
フランス語を教える先生だったり、武道を教える師範だったりという経歴を重ねられてるようで、あぁ、人に教える仕事をされてるのかと妙に納得した。
全部を肯定的に読む訳では勿論ないのだけれど、しっかりとした分析をされて、その上でここはどうなのか、こういう風にすべきではないかと述べられていて内田先生の意思がとても解りやすくて良かった。
個人的には英語教育のあり方の話であったり、AI時代を生きる若者への提案であったりが面白かった。
母国語についての話もとても興味深かった。
一番なるほどな、となったのは面倒で幼稚な老人はいかにして生まれるのか、また今後増えるであろうという予想、その先生の分析に基づく理由だった。
ドラッグストアで店員に訳の分からない文句を垂れている老人をコロナの影響による自粛期間中に見かけた。要点を得ない、何の説得力もない、ただ自分がいかに辛いかを述べるだけの内容で、店員さんが可哀想だった。(店員さんは毅然と対応されていたので安心したけれど、お疲れ様ですという感じである)
僕は高齢化社会で単純に分母が大きいが為に面倒な人の割合が多く、また老化による幼児退行で我慢の効かない老人が増えるからだと漠然と思っていたんだけど、先生の説明は物凄く納得がいった。
人口ピラミッドのボリューム層がどれだけ経済を左右するターゲットたるか、またそうなるように育てられてきたか、などなど。
嫌な思いを味あわされた方にこそ読んで貰えたらと思う。はー、そういう見方もあるのか、と。
今後もこの層は自分たちに都合良く生きていく人が多いだろうし、それを都合良く利用する人も多いだろうから、それらに根こそぎ食い尽くされてしまう未来を、特にここ最近の政治動向なんかを見ていると思い描かずにはいられない。
中々に確率の高い最悪のシナリオという感じである。
ただ、幻に夢みていた世代が去りつつある今、何を大切にすべきかは段々選びやすくなるんじゃないだろうかという気もしている。
自分で決めるには自分で考える力が必要であり、それを多少なり得るには自分で動かなければならないと改めて思わされる。自分がそうなれてるとは全然思えないけど、こうして考えをしっかりと、ハッキリと表明してくれる先輩方をこちらも上手く利用して、少しずつでも鍛えていけたらと思う。
巻末の堤未果さんとの対談が本著の予告編として機能している様に思うので、そこを読んでみて面白そうだなと少しでも思ったら買って間違いないと思う。

・柚月裕子/臨床心理(角川文庫)
孤狼の血シリーズが面白過ぎて他の作品にも手を出そうと思ってデビュー作を購入。
自分の正しいと思った事に本当に真っ直ぐで、その為なら人を巻き込んで犯罪行為を行っても仕方ない、という個人的に滅茶苦茶嫌いなタイプの主人公で正直前半は内容や展開が頭に中々入らないくらい溜息をつきながら読んでいたのだけれど、物語が動き出してからはそこまで気にならず読めた。
知的障害者施設の入所者の自殺に端を発して、何故自殺を選ばざるを得なかったのか、そこに隠された醜い闇の世界を暴いていくという物語。
臨床心理士の主人公が患者と、時に友人の警察官と協力して捜査を進めるのだけど、火サス(死語なんだろうか?)によくある異業種探偵モノだとして、火サスと違って主人公が人懐っこさが無くて頑固過ぎる為に、捜査上仕方なく行う犯罪行為の数々にも共感する事が出来ず、人を巻き込んで片棒担がせながらという印象が拭えないあたりが残念だった。
人の感情が色でわかる「共感覚」を持つという患者と主人公の友人である警官のやり取りが凄く良くて、あぁ、この絶妙な関係性の為に主人公がいたのかなぁと思うくらい好みの空気感だった。
バッドエンドすらあり得るのでは、と思ってしまう程にハラハラするという意味ではこの無鉄砲さは魅力なのかも知れない。(実際にハッピーエンドなのかバッドエンドなのかはネタバレになるので言及しない)
正義感が強過ぎるキャラクターは好きなのだけれど、自身はともかく他者を守れない振るい方をされると何やってんの感が出て来てしまう性格の読者なので、これはもう物語と割り切れない僕に問題があるのだと思うけれど、そういうところが大丈夫な人にはオススメ出来ると思う。

おやすみ。

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