沈丁花禄郎でごさいます EP 10
絵理奈と真美は大学の授業が午前中で終わったため、カフェでお茶を飲んでいた。
真美「そういえば、沈丁花さん、英会話スクールやってるみたいよ」
絵理奈「英語勉強して何になるのかな?」とアイスコーヒーを口にしながら言った。
真美「いや、違くて、経営してるらしいよ笑」と笑った。
絵理奈「経営?マジ?信じられない!初耳だわ」
真美「と言っても近所の小さい教室みたいな感じなんだってさ」
絵理奈「あの人絶対英語できないでしょ。怪しいなあ、ほんと」
真美「沈丁花さん、屋台のラーメン屋さんやる前はカラオケボックスをやりたか
ったんだって」
絵理奈「ふーん、そうなんだ」
真美「沈丁花さん、簡易スペースを建てたんだけど、建物が完成した後にカラオケの機材を搬入しようとしたら建物の入り口のドアが小さくてカラオケの機材が運び込めなかったんだって。それで断念したんだって」
絵理奈「プッ」
「バカじゃないの」
真美「今度、沈丁花さんの英会話スクール覗きにいってみない?笑」
絵理奈「お断りします!あの人とかかわると、優雅なわたしたちの生活が乱されるもん」
真美「そう?」
絵理奈「うん」
数日後
絵理奈と真美と西園寺の三人は沈丁花の英会話教室の体験レッスンのしおりを持って英会話教室の前にたっていた。
絵理奈「なにこの『沈丁花メソッド』って。腹立つわあ」
教室は町内会の会館の小さなスペースで行われていた。
真美・西園寺「こんにちは!見学に来ました!よろしくお願いします!」
絵梨奈は怪訝な表情を浮かべていた。
沈丁花「いらっしゃーい」と手のひらでおでこをかきあげた。
教室にはお婆さんが三人とお爺さん二人、あとライママと掟カローラがいた。
真美「この英会話教室は『パンプキン』っていうんですね。」と沈丁花に向かって言った。
沈丁花「そうよ」
絵梨奈「シンデレラのカボチャの馬車から取った感じですか?」と尋ねた。
沈丁花「いいや? 雑誌のパンプキンから取っただよ。」
絵梨奈「そんな雑誌聞いたことないですど…」
沈丁花「パンプキン知らねーのけ?近所のバアさんに『良い記事が割と多いからとってくれ』言われてな。そんでもって、おいら毎月定期購読してて、精読してるだよ」
絵梨奈「ちょっと、何をおっしゃってるのかわからないですね」
西園寺は教室の全体を見渡した。
「あの壁に貼ってある写真は誰ですか?」と西園寺は誰にともなく尋ねた。
生徒の田中ウシが答えた。
「あれは、リサ・ステッグマイアーだよ」
西園寺「ハリウッド女優さんなんですかね?」
田中ウシ「そうみたいよ」
掟「嘘教えるんじゃねーよ」と呟いた。
西園寺「じゃあ、あの人は誰なのですか?」
今度は生徒の富田昌枝が答えた。
「あれは、アグネス・ラムってんだーよ」
西園寺「へえ。あの方もアメリカのスターさんなんですか?」
富田昌枝「そうみたいよ」
掟カローラ「いい加減なこと教えるなよ…」
西園寺「ああ、あの写真人はわかります!タレントのJOYさんですよね」
生徒三人「んだんだ」
掟「JOYに関してはもう、アメリカというより群馬だからな」
教室の囲みテーブルには信玄餅とウドの酢味噌あえとほうじ茶が置いてあった。
真美「ハンバーガーとマッシュポテトとコーラじゃないんだ」と呟いた。
生徒の田中ウシはこの教室のリーダーだった。
田中ウシ「じゃあ、まずBGM をかけようけかねえ」とこえをかけた。
田中ウシは生徒のおじさんに「曲かけて」と指示した。
従順な生徒のおじさんはラジカセを操作し始めた。
田中ウシは「早くしなさい。モタモタしてないで!」
見学者三人「モタモタ」笑
田中ウシ「ほら、早くしなさい! ノロノロするんじゃないよ!」
見学者三人「ノロノロ」笑
従順なおじさんはラジカセ操作に手間をかけながらもなんとか曲をかけた。
わらべの『もしも、明日が』が教室内に流れた。
絵理奈「微妙に学習意欲を低下させる曲だなぁ」と呟いた。
西園寺「絵理奈さん、失礼ですよ」と小声で言った。
真美「そうだよー」と口を揃えた。
その横でライママがパジャマにはんてんスタイルで気持ちよさそうに踊っていた。
それに触れるものはいなかった。
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