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vsヴィッセル神戸

【試合前雑感~厳しい連戦、ここ2年勝てないノエスタ】

2018年と2019年は僅差(だが勝てる気もしなかった)でヴィッセルにアウェイで敗れているセレッソ。しかしヴィッセルもここまで5試合勝ちがなく、ホームでは清水戦以降勝ちがない。とは言え首位川崎とは引き分けているし、メンバーの能力も国内トップクラス。ここ数試合はローテーションや怪我の影響もあったが、今節のヴィッセルはほぼフルメンバーを揃えてきた。対するセレッソは連戦を考慮して清武⇔柿谷、坂元⇔西川、片山⇔丸橋を交代。西川は今季初先発となった。

2試合連続でメンバー外の藤田に関する情報が出ていないが、恐らく怪我かコンディション不良だろう。しかしメンバーが誰であろうと川崎に追いつくには勝つしかない。これまでの積み重ねが試される試合が始まろうとしていた。

【33分までのヴィッセル~WBを起点にサイドで数的同数or数的優位】

セレッソの守備は中央に4-4のブロックを固めてくるので、サイドにスペースが空くのは周知の通り。ヴィッセルのWBは国内トップクラスの西、酒井が担っており、そこに対角のボールを正確に蹴り込めるイニエスタ、山口、大崎、フェルマーレンが揃っている。なので、まずビルドアップの目指す場所は両WB。そこからゴールを目指すルートは2つ。最優先ルートはセレッソのサイドバックをWBが引き出し、その背後のハーフスペースを狙う形。

それが狙えないなら逆サイドへ展開して同じ形でサイドバックの背後のハーフスペースを狙う。
次に最優先ルートのハーフスペースを進めない時はカットインするルートを使う。この時、西がカットインすれば藤本がDFラインと駆け引きしてボールを受ける形があり、右利きの酒井、イニエスタがカットインすれば中へのセンタリングやシュートも選択肢として持っていた。

実はヴィッセルはサイドで数的同数or数的優位を作るため、左右非対称な陣形(右サイドだけダンクレーを上げる)を設定していた。この仕組みがあることで、何度もFWライン、MFラインを簡単に超えてセレッソのDFラインとの勝負できる状況を作っていた。しかもセレッソの4-4のブロックは必ずボールサイドに寄る。そのため逆サイドを大外に張らせるておくアイソレーション(isolation:隔離・孤立)は揺さぶるのにとても有効だった。

実際にこの形を駆使する大分との開幕戦ではセレッソはかなり苦しんでいた。セットプレーをものにしてなんとか勝てたのももう半年以上前の話である。

さて、サッカーの守備陣形は裾が足りない布団に例えられるらしい。どこかに寄ればどこかが足りない。セレッソは真ん中とボールサイドを密にするので、反対側は空いてしまう。それでも逆サイドに振られても最後はやられないし、ただただ殴られているだけでもないのである。だから年に2試合(多くても4試合)しか対戦しないセレッソ以外のサポーターがセレッソのこの練度の高い守備網に面白さを見出すのは難しいだろう。

【セレッソ~10 Heroic Wolves One Stupid Boy】

先述した通り、神戸は仕組みでセレッソのSBを釣り出してくる。でも釣り出されたら埋める、狭める、隠す、スライドする。セレッソはいつも通り徹底して守っていた。33分までは。
(余談になりますが、ベッカムがW杯で報復行為したときのMirror紙の見出しが「10 Heroic Lions One Stupid Boy(訳:10人の勇敢なライオン(イングランド代表のエンブレムはライオン)と1人の愚かな少年)」でした)

しかし退場したstupid boyは地球がひっくり返ってもピッチには戻れない。ここですぐさまロティーナは手を打つ。西川に替えて片山を投入し、奥埜-デサバト-片山でMFラインを組成し、柿谷を1トップ下とする5-4-0を形成する。この時は良くて引き分け、大敗も覚悟しなくては・・・と思いながら、祈るように試合を見ていた。

しかしこの5バック+3MF+1トップ下は神戸が数的同数or数的優位を作りたいサイドでの守備をより強固にした。まずWBに対してはSBが出るのかSHが出るのか迷うのではなく、SBが出ることが明確になる。そしてその裏に走り込んでくる古橋や山口には外側のCBが対応。そしてイニエスタやダンクレーが持っても片山、奥埜が対応する。
つまり今までマークの受け渡しに割いていた思考を選手から削ぎ取り、やるべきことに集中できるようになった。
これによってヴィッセルはセレッソのサイド2枚に対して3枚で勝負を仕掛け、中央の選手を引っ張り出そうとしていたのに、常に3vs3で対応されるようになって目詰まりが生じていた。

しかも割り切って最初からDFラインが下がっているので、裏抜けが得意な藤本や古橋が走り込むスペースもなくなってしまった。

しかしセレッソは裏のスペースを消しておきたいので、DFラインを上げられない。そのため、クリアが多発し、ボールは押し込むヴィッセルに拾われる。とは言え、セレッソにもボールを取り返す時間はある。そこでボールを持つとまずターゲットになるのが身体能力ピカイチの片山、そしてたまに相手のマークを躱した丸橋だった。

しかし片山とのマッチアップには百戦錬磨のフェルマーレンが構えており、なかなか勝てない。そして競り勝っても周りに選手が少ないので中々拾えない。
そんな状況の中、セレッソは丸橋がサイドで起点となってファールを貰う。このFKは一度弾き返されるが、拾ってボールを回収して山口、サンペールを躱したデサバトがピンポイントクロス。これを柿谷がダンクレーの前で逸らし、見事に先制点を取ることに成功した。この時、FKの流れから木本が上がっており、ダンクレーは直前まで木本を見ていた。そこで背後から飛び込んでくる柿谷のマークの受け渡しに失敗。これが試合の分かれ道となった。

失点したので点を取りにいかないといけないヴィッセルは、フェルマーレンやダンクレーも上げて前の枚数を増やす。しかしセレッソの守備陣は自分たちの立ち位置を守り、責任を持ってボールを弾き返し続ける。イニエスタも個の能力で剥がして来たが、最後まで何とかシャットアウトできた。

【試合後の独り言~お互いにやるべきことがハッキリしたことが奏功】

退場者が出てマークの受け渡しを減らす5バックにシフトしたことで、マークの受け渡しやスライドの回数が減った。やるべきこと、やらなくてよいことが明確になった結果、ヴィッセルの攻撃を受けながらも致命傷を負わずに済んだ。
しかし守るだけでは勝てない。攻撃面でできることは限られているが、実はロティーナはかなり負けず嫌いらしい。(以下URLご参照)

https://futabanet.jp/soccerhihyo/articles/-/80954?page=1

守備の整備が最優先なので、HTの短い時間に「勝つため」に施された策はあまり無かっただろうが、ロティーナのHTコメントは「セットプレーのこぼれ球を拾おう」だった。幸いにもセレッソには背の高い選手がいたし、セットプレーでは相手の守備陣形が崩れている。その読み通りにが試合が進んだのは、さすが負けず嫌いで経験豊富な監督に率いてもらってるんだなぁ、とただただ脱帽した。
実はロティーナがセレッソの監督に就任する前、尹晶煥の後任と噂されるのはどんな監督だろうか、とたまたま東京VのPO(大宮戦)を観ていた。この時も30分くらいを残して0-0の状況で退場者を出すのだが、その時の東京Vも同じくFKから得点を取って守り切っていた。こういう展開では、守備を固くすることで勝利を手繰り寄せられるのかもしれない。
さて、暫定勝点差5から"暫定"の2文字が取れた。正真正銘の勝点差5である。川崎戦後には勝点差が10あったところからやっと半分まで縮めることができた。とは言え、川崎も落ちて来ない。圧倒的な攻撃力で得点を積み上げ、Jリーグを席巻している。この近そうで遠い背中を追いかけるためにも、足元に迫る復調した常勝軍団鹿島を長居で迎え撃ちたい。

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