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vs大分トリニータ

先週のルヴァン杯から1週間、ついに開幕したJリーグ。選手たちのコメントからも優勝へ向けた意気込みを感じられるが、それは我々サポーターも同じ気持ち。カップ戦専用のチャントが「シャーレをピンクに染めよう」と昇華したことからもサポーターの期待値は窺い知れる。今季のセレッソには去年のアイディアをベースにした保持・非保持の局面における積み上げ、坂元と西川による右サイドの補強、豊川と小池による王者鹿島の成分がある。まだまだ目立たない存在ではあるが、元日本代表の名良橋さん、記者の河治さんら一部の有識者は優勝候補と挙げており、嬉しいことこの上ない。ただ偉いのは優勝候補ではなくあくまでも34節終了後に1位に君臨するチーム。気を引き締めてシャーレを掲げに行きたい。その1/34が長居で始まった

【左右に揺さぶりまくる大分vs中を固めて数的優位で守るセレッソ 】
ペトロビッチの薫陶を受けた片野坂は去年とベースを変えないものの、対セレッソ戦でいくつかの策を施していた。その1つは大外に孤立させる香川。リヴァプールなどもよくやっているアイソレーション(孤立)と言われる手段だが、中央の守備が固いチームに中央を空けさせるためには守備陣を横にスライドさせなければならない。ただし後ろを経由していたら守備側のスライドが間に合う。だから1発で逆サイドへ展開することでスライドを強要させ、中央の密集を空けることを目指していたのだろう。特に大分はロティーナの中央の固さを嫌というほど知っているからこそ、左右に大きく揺さぶってきた。これはルヴァン杯決勝で川崎に対してペトロビッチ札幌の福森が仕掛け続けた方法とも合致する。そうすることでスライドが間に合わず、中が空いてクロスに飛び込むスペースが生まれたのがルヴァンカップの札幌の1点目だった

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ただ、大分にはポドルスキやソウザのような弾丸パスを繰り出せる選手がいない。このことがパスミスを誘発して、何度もセレッソを救っていた。一方のセレッソとしては当然逆サイドに蹴らせたくない。そのためサイドでは数的優位を作る守備でセットしていた。このタスクが求められるため、なかなかFW奥埜を外すことはできないのだろう。シーズン途中でしれっとFWになったが、今季も継続する様子だ。セレッソは相手のユニットが2枚なら3枚で、3枚なら4枚で対応する守備を構築している。こうすることで大分は同サイドの密集地帯に迷い込む構造になっている。その結果アイソレーションの立ち位置にいる香川になかなか一発でボールを届けるのが難しくなっていた。そのため、大分はまずSBの裏を狙い、ダメならハーフスペースにOMFが急停止して貰うことでビルドアップを進めてきた。

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試合の流れとしてはお互い様子見の状況から、4分には瀬古のミスから危ないシーンを迎えたが、ジンヒョンのナイスセーブで事なきを得た。ここで大崩れしないメンタルは瀬古の強みだろう。普通の19歳なら(いや、19歳でなくても)自信を失いかねないプレーだったが、慌てることなくその後はしっかりとセレッソの堅守を支えた。
最初は大分のペースで始まったもののセレッソが保持すると、セレッソの保持の狙いが明らかになった。肝となるのはレーンを被らせない松田と坂元の立ち位置。これまでの試合では坂元が受けたところを外や中から松田が追い越すシーンも多かったが、大分戦では横並びのような立ち位置を取ることが増えていた。ピッチリポーターが「松田、坂元のポジションを入れ替えるように指示した」と言っていたが、確かにこの指示以降は内側松田、外側坂元の時間帯が増えていた。この動きは効果抜群であった。松田はOMFの町田を釣って中央に誘い込み、仕掛ける力がある坂元が大外で受けて突破したことでゴールの起点となる4連続CKの1つ目獲得に繋がる。

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さらにゴールシーンではニアの木本が動いてスペースを空けてブルーノメンデスが飛び込む形だった。それまでもショートコーナーで相手を動かしていたが、今回はニアの選手が動くことで飛び込むスペースを作っていた。健勇が2017年にこの形でゴールを量産したが、今季はメンデスにその役割をお願いしたい。
前半の各選手のボールタッチをしていた平均ポジション(下図)に表れていたが、その後セレッソも清武、坂元(右サイドは松田の場合も散見)をハーフスペースに配置し、丸橋、松田(右サイドは坂元の場合も散見)を押し上げて幅を取ることでCBやボランチから清武、坂元へボールを入れたいようだった。ただ大分も人数を配置して網を張っている。その時はメンデスを斜めに走らせることで相手のCBを釣り出そうとしていた。ただし大分の守備は固く、思った以上に苦戦していた

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【木本が受けに入るタイミングを修正してビルドアップがスムーズに / 守備では半ば4-3-3のような形でも戦える柔軟性】前半はほとんどボールを持たれ、取り返してもビルドアップに苦しんだセレッソ。縦に蹴るボールはメンデスがキープできればチャンスだが、キープできなければ相手の保持に移行する。これはロティーナの目指す「保持=相手が攻めてこないので理想的な状態」というゲームモデルとかけ離れる。そこでなかなかビルドアップに参加できていなかった木本の立ち位置やタイミングを修正した。一度相手の背後に立ってからライン間に出てくるようにしたことで、相手のマークを掻い潜る回数が前半より増えていた。また貰いに来るタイミングが早まったことで、後半からは前半よりもスムーズにボールを保持できるシーンが増えた。またセレッソの守備で興味深かったのは、これまでの4-4-1-1の五芒星を形成してメンデスを頂点に奥埜がストーン役になって中央を固めるのではなく、4-3-3のような形でSHを押し出す形を何度か取っていたこと。前半はポジションのアンマッチから坂元や清武が押し返されていた分、自慢の攻撃力が削がれていた。それを解消するためにより前に圧力をかけたいというチームの意図が表れていた

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一方、59分には大分がビックチャンスを迎える。58分から約1分間に亘って右へ左へと後ろで回して大分はチャンスを窺っていた。この時清武と奥埜は前のプレーの影響で立ち位置が入れ替わっており、FWの後ろにスペースが空きがちになっていたため、デサバトがその位置を気にして立ち位置が前のめりになっていた。そこで田中がデサバトと松田の中間ポジションを取っていたのだが、DFラインでのビルドアップから松田のマークが香川に向いた瞬間、松田の裏を取って田中はデサバトを振り切った。そのためSBがつり出されたときにボランチやサイドハーフが穴を埋めなければならないロティーナのルールにほころびが生じ、ヨニッチが仕方なく中央から引き出されることとなった。CBを中央から動かさないロティーナ流塩漬け戦法にとっては最も嫌な攻撃になったシーンだろう。しかし、そこからヨニッチをかわしてあげたクロスを逆サイドの松本がシュートまでこぎつけるも運に見放されてポスト直撃。この試合の運が如実に現れた瞬間だった。

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実は大分は何度もこの形を作ろうとDFラインで横に動かしてSBが食いついた裏を狙るチャンスを窺っていた。だが、先ほども述べたようにセレッソがユニットによる守備で数的優位を常に作るのでなかなかこの形は実っていなかった。ただ大分はどんな相手でもこのアイディアを活用できるだろうし、シュートも回数が増えれば入るもの。今季の大分も相変わらず強いだろうな、と予感させられた。さらに大分はアディショナルタイムの最後のプレーでは知念が強烈な左足シュートを放つもこちらもまたもやポスト直撃。これがなければ大分が勝っていたし、少なくとも大分としては勝点1~3を失った印象だろう。

【まとめ】
勝ちはしたが、大分が今季も上位争いを演じそうな試合だった。「勝ちに不思議の勝ちあり」という亡き野村監督の名言通りの試合になった。ホッとした人はたくさんいたが、スッキリして帰った人はおそらくほとんどいないんじゃなかろうか。これもまたJリーグの楽しさ・面白さが日常に帰ってきた証である。1/34は運にも恵まれて幸先の良いスタートだった。次節の鳥栖戦も期待したい

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