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スッキリしなくていい、モヤモヤしたい

私の父は映画好きで、こどもの時はよく一緒に映画を見ていました。

父はハリウッド映画のアクションものが好きで、とにかく筋肉マッチョマンがハデに暴れて最後は爆発をバックにキレイなおねーさんと抱き合ってエンディング、みたいな映画が大好きだったのです。

映画がおわった後に「スッキリしたなー!」と父は嬉しそうに笑っていましたが、ひねくれ者の私にはどうもしっくりきませんでした。

父はラストに余韻がのこるような終わり方はキライなようで、”ジュマンジ”という映画を見たあとに「スッキリしない終わり方だったなぁ」としばらくブツクサ文句を言っていましたが、逆に私は”こういう終わり方もいいな”なんて思っていました。

☆☆☆

大学生のころ、映像文化論という講義があり、映画を見てるだけで単位がもらえるので人気の講義でした。

単位ねらいのヨコシマな気持ちでうけた講義でしたが、先生の紹介してくれる映画はどれも好みの作品で先生の説明もおもしろく、大好きな講義となっていました。

その中で特に印象に残った映画に『さよなら子供たち』というものがあります。

あまり有名ではありませんが、影と冷たさを感じる映像が印象的なとても美しい映画です。監督ルイ・マルの自伝的作品でもあります。

ストーリーをざっくり説明すると時代は第2次世界大戦中のナチス占領下のフランスで、カトリックの寄宿舎で暮らす12歳の少年ジュリアンが主人公です。

あるとき、寄宿舎に転校生ボネがやってきます。どこか影のある少年のボネでしたが、ジュリアンは次第に彼と友情を深めていきます。

つかの間の平和な時間で友情を深める二人でしたが、ある日寄宿舎にゲシュタポがやってきます。
ゲシュタポは二人の教室に現れ「寄宿舎の校長である神父が、ユダヤ人をかくまう活動をしている」ことを告げます。今までのボネの不思議な行動から、ジュリアンはボネがユダヤ人であることに気づいて思わずボネの方を見てしまいます。
その視線から、ボネが神父にかくまわれているユダヤ人であることがゲシュタポにバレてしまいます。

そして神父とかくまわれていたボネたちユダヤ人の少年らはゲシュタポに連行されることになり、神父が「さよなら、子供たち」とジュリアンたち寄宿舎の子供たちに告げて神父とボネは寄宿舎の扉から出ていきます。

そして、虚ろに扉をみつめるジュリアンと、親友のボネたちが出て行ったときの半開きのままの扉が写しだされ、”神父と少年ら達がその後収容所で亡くなった”ことがただ字幕で表示される、というラストです。

その映画を見て、映画をみた後に心にのこるやるせない感じがたまらなく好きなんだということに初めて深く気がつきました。


答えが欲しいわけじゃない、悩むのがすき

今までは映画の話をしてきましたが、映画に限らずに心の中がモヤモヤするのが好きです。

話は変わりますが、数年まえに職場の後輩と仲良くなり一緒にジョギングをやっていた時期がありました。

後輩といってもそのとき私は30過ぎ、後輩はハタチ前なのでかなりの年齢差でした。

ジョギング中、後輩から毎回悩みについて相談され走りながらいろいろと話すのが定番の流れになっていました。

相談の内容はいろいろでしたが、恋愛のこと、将来のこと、自分自身のことなど若者によくある悩みではありましたが、毎回よくそんなに相談することあるなぁ、と思うくらい細かいことにも真剣に悩んでいるようでした。

ある日、「そんなに悩むことがあるなんて、もしかしたら悩むのが趣味かもね」と言ったら後輩から「そんなわけないでしょ!」と突っ込まれてしまいました。そのあとその言葉を反芻してみると、どうも”悩むのが趣味”なのは私自身だったことに気がついたのです。

☆☆☆

”悩むのが好き”な私は、どうも分かりやすい答えを提示するのが好きなテレビ番組や、いわゆる解説系youtuberといったものはしっくりきません。

これが唯一の答えです!分かりやすいでしょ!」みたいに押し付けられてる感じがして、”こっちで答えは考えるからほっといて”という気持ちになるのです。

モヤモヤした気持ちを抱えながら、ある日ふとしたことで自分なりの答えがみつかる、そんな瞬間が好きなんです。

☆☆☆

そんなわけで、最近はモヤモヤを提示してくれる媒体としてよくポッドキャストの番組を聞いています。おすすめのモヤモヤ番組は次の2番組です。

墓場のラジオ

ポッドキャストの老舗番組で、軽快なトークのシブちゃんと聞き上手なノブちゃんと組み合わせのバランスがよく、ずっと聞いていられます。
生きづらさを感じるほど細かい悩みをかかえるシブちゃんのエピソードトークや、毎月最後の仏滅の日に定期的に開催される「みんなのどうしようもないモヤモヤする話」を共有する回など、爆笑しつつも心にモヤモヤがのこる感じがとても良いです。

リンクは「トライポフォビア談義」です。
GIF動画が永遠に動き続けることを想像して恐怖したり、家に置いてきたぬいぐるみが気になって勉強が手につかないなど、シブちゃんの想像力の豊かさが笑えます。


新型オトナウィルス

コテンラジオなど多数のポッドキャスト番組を手掛ける樋口さんと、こども向けプログラミング教室の代表を務める古林さんの番組です。
二人が普段かかえているモヤモヤを話し合い、答えが見つかることもあればアサッテの方向に話が進んでとりとめがつかないときもあるなど、話の先が予測できない感じが良いです。

リンクは「モノを所有すること」の回です。
人からなにかモノをもらうことを”猫をもらうことと一緒”と表現したり、自分が食べたものを写真にとってクラウド上に保存するなど、樋口さんの独特の感性が爆発しています。

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