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孤独な魂

分かり合えると思ってたアイツも結局、ただの他人でしかなかった。期待して近づいたアイツは、思っていたような人間ではなかった。また、だ。他人に勝手に期待して、勝手に失望する。これで何度目なのだろう。


似た精神を持つ魂はあるのかもしれないが、同じ魂は一つとしてこの世には存在しない。気の合うように思える仲間も、会うといつも話が弾む彼も、精神的に近しい部分で、偶然許容の範囲内の妥協点を見つけることが出来ただけだ。生まれてきた場所も、育った環境も、周囲の環境も、両親の思想も、触れてきた文化も、人間関係も価値観も思想も哲学も、みな違う。結局、根本的な所で人間は分かり合えない。分かり合えているフリをしているだけだ。大抵どちらかが痛みを抱えている。傷付いている。他者はいつもそれを、見て見ぬフリをして、知って知らぬフリをしてやり過ごしている。友達が多くたって恋人がいたって毎日誰かと過ごしていたって、いつまで経っても魂は孤独だ。偉大な魂も、崇高な魂も、みな同じく魂の孤独に苛まれていたのだろうか。家族と食卓を囲む時も、友人と夜がふけるまで語り合う時も、僕はいつも深い海の中にいる。孤独な魂を引き連れて、また孤独の海に還っていく。



またどこかで産声が上がった。人は一人で生まれてきて、死ぬときもまた、一人で死んでいく。


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