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第60回感染管理抄読会        感染の発生率を減らすための人工呼吸器関連肺炎予防バンドルに対する看護教育の影響:品質改善プロジェクト

2024年1月の抄読会の文献をご紹介します。

論文タイトル
The Impact of Nursing Education on Ventilator-Associated Pneumonia Prevention Bundle to Reduce Incidence of Infection: A Quality Improvement Project
感染の発生率を減らすための人工呼吸器関連肺炎予防バンドルに対する看護教育の影響:品質改善プロジェクト

この論文を選択した理由
勤務先の病院で呼吸ケアチームに所属し、院内での研修も行っています。私は人工呼吸器関連肺炎に関する研修を担当するのですが、研修受講者の意見の中には、「予防のためのケアが必要だと理解していても、そこに時間を割くことが難しい」といった反応を示されることがありました。人工呼吸器関連肺炎は、看護師が行うケアが予防に繋がることが分かっていても、それを継続してもらうことの難しさを感じていました。今回、人工呼吸器関連肺炎の予防のために、集中治療室の看護師に対してどのような教育方法を実践し、効果があったのかを学びたいと考え、この文献を選びました。

書誌情報
Dimensions of Critical Care Nursing. 2024 Jan-Feb;43(1):40-46.
DOI: https://doi.org/10.1097/dcc.0000000000000615

抄録
背景:人工呼吸器関連肺炎 (VAP) は、患者の予後不良、入院期間の延長、医療資源の枯渇、医療費の不必要な増加につながる医療関連感染症である。
目的: このプロジェクトは、VAP 感染の全体的な発生率を減らす、証拠に基づいた VAP 予防バンドルの重要性について、看護師を教育することを目的としている。
方法: 患者(n = 146)は、レベル 1 外傷センターの 14 床の神経外傷外科熱傷集中治療室(ICU)で行われたこの準実験研究プロジェクトに登録した。データは、看護教育介入前後の神経外傷外科熱傷 ICU に入院した患者のカルテレビューから収集した。VAP率の違いと看護知識の向上が主要評価項目とした。
結果:人工呼吸器使用日数は17.45 日から 13.42 日に短縮され (P = 0.085)、ICU 滞在期間は 24.77 日から 17.62 日に短縮した (P = 0.035)。患者の検査データは、白血球値の改善(P < .001)、酸素必要量の減少(P < .001)、および VAP の診断基準を満たす患者の減少(P = .073)を示しており、患者の転帰の改善を示唆していた。
考察:結果は、看護師の知識または口腔ケアバンドルのコンプライアンスに統計的に有意な変化がなかったことを示唆している。しかし、医療提供者の教育後の患者データの改善は、看護師への継続的な教育が入院期間と VAP 感染に関連する多大なコストの削減にプラスの影響を与えることを示唆している。

クリティーク・ディスカッションを終えての感想
今回、アメリカの救命救急センターICUで行われた教育に関する実践報告に関する内容の論文のクリティークを行いました。論文を読んでいくなかで、肺炎の改善にフォーカスをあてたものか、看護師の教育にフォーカスをあてたものか、結果の示し方にも偏りがあるような印象がありました。ディスカッションのなかでも、研究目的・結果・考察において一貫性がない、研究者にとって良い結果を示そうとしたかったのではないかという意見がありました。改めて研究計画の段階で、目的や意義についてしっかりと考えをまとめていき、一貫性をもった結果を示していくことが大切だと学ぶことができました。
今後、自分が研究を行っていくなかで、研究としての一貫性が示せているか、なぜその研究に取り組みたいと考えたのかについて、しっかり示していけるように、学びを深めていきたいと改めて考える機会となりました。

担当:博士前期課程 T.A.

感染管理抄読会は、2024年1月で第60回を迎えました!!
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

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