し。

探さないでね。来世で探してね。

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探さないでね。来世で探してね。

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Fiction. but

「気が変わったら教えてね。」 僕は君の目から視線を床に落とし、声を詰まらせながらそう伝えた。君は優しい笑みを浮かべながら「あなたもね。」と僕の目を見て呟いた。 僕に対する愛情が薄れたり、飽きてしまって君の気が変わったらいつでも言ってねと常々言っていた。これは保身だったのだろう。 僕は当時、最愛の人に見限られることを極端に恐れていたのだ。 昔から自分の本当の気持ちを外に放つことが苦手だった。何をするにも相手や周りの感情を勝手に理解した気になって、全てを他者に委ねて生きて来

    • 死想

      イキモノの命というものは、夜闇を照らすために、明滅する蝋燭の灯りよりも儚く脆く美しい。それはヒトに限らず、生きとし生けるもの全てに該当するであろう。  我々は際限があり、散ることが約束されてるモノにこそ、美と愛おしさを感じ、傲慢にもそれを求め続ける。そして、それに耽美する。しかし、ヒトとは脆弱性に満ち溢れている。いとも簡単にイキモノを殺戮し続けてる事実とは裏腹に、滑稽なほどに死を恐れる。そんなヒトを、憎らしくも、愛らしいと思ってしまう私がいる。  いかにもこの世界を俯瞰してい

      • 慚愧

         この野蛮で悲壮的な星に生まれ落ちてしまったことで、私の中に生まれた数人の私。全員の人格、さらには人数さえ把握している訳ではない。そして、知りたいとは微塵も思わない。  この世に生を授かってから現在まで多種多様な人間との交流という名の感情の航海を余儀無くされてきた。荒波に飲まれ、削られ、砕かれた挙句の果てに生まれてしまった可哀想な生き物こそが私の中の私であると認識している。  『私以外の私達』にはなんの罪もなく全ての責任は、本体である当人の『意思や心の弱さにある』と言い切るこ

        • 余剰、正体

          なんとも形容し難い不快感を抱えて目が覚めた、肌を突き刺すような鋭い寒さの朝。私は何気なく時計に目をやると、時刻は午前5時を回っていた。別に早寝早起きの習慣がついていたわけでもなく、むしろ昼夜逆転気味だった生活を送っていた私にとってこれは非常に稀有な事態である。その上、正体不明の不快感の輪郭も掴めぬまま完全に脳が起きてしまったのである。 この頃からだろうか、1日を終え床に入っても私が眠りに落ちるのは、決まって日が登ってからになったのは。とりわけ、何かするべきこと、したいことが

          燃ゆるその花はとても儚く。そして美しく。

          あなたとって一番好きな、大切な花はあるだろうか。 その花は散るから美しいのだろうか。移り変わる季節に追随するように咲いて、枯れてを繰り返すことが果たして本当に情緒的であるのか。 物事の捉え方は人の数だけこの世に無数に存在する。しかし、果たしてその全てが肯定されるべきものなのだろうか。私はそうは思わない。 時に人は、その花の寿命に着目し「有限性」に感銘を受けそれを美徳とする節がある。確かに、四季によって移り変わる景色を演出する花たちはとても情緒的で儚く美しいかもしれない。

          燃ゆるその花はとても儚く。そして美しく。