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「もっと」より「もう」で生きていきたい。〜漆畑希望さん〜

私が感じたあなたの魅力を切り取るshutter

ご依頼者様と対談、感じた魅力や個性、その方らしい考えや素敵な生き方を紹介しています。

あなたが幸せで満たされて生きてゆくために、あなたはどんな成長や進化が必要だと思っていますか?

今回ご紹介する方は、私たちの心をゆっくりと和ませてくれるお話をしてくださいました。

私たちに必要なのは、頑張ることか、もっと成長することなのか、はたまた。

広島で低体重児のコミュニティー「しずくの木」を立ち上げ、三児のお母さんでもある漆畑希望さんをご紹介いたします。

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今回、千葉にいる私が広島でのshutterの対談を3日にわたって5人の方とできたのは(それもみなさん初めまして!)、希望さんのおかげ。

ゆかさん、広島でshutterできますか?とのお問い合わせをいただき、人数が集まれば行きますよ〜、と答えたら

希望さんが友人に声がけをしてくださり、あっという間に5名の対談が決まったのでした。もうここに、希望さんのお人柄と、繋いできたご縁のほどが感じられてしまいます。

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希望さんとのご縁の始まりは、コーチング。子どもの自己肯定感を育むお母さんのためのコミュニケーション講座で、同じティーチャーとして私は千葉で、希望さんは広島で活動していて。

お会いしたことはないけれど、時々、オンラインでお話ししたり、投稿を拝見していて、今回数年越しでやっとの「初めましてのご対面」が叶ったのでした。

子どもの頃に、親族の挙式で訪れて以来の、広島。希望さんが空港まで迎えに来てくださり、初日の対談場所の平和記念公園までドライブして送ってくださったり、「ゆかさん一緒にごはん食べよう」と、晩ごはんに広島のお好み焼きをテイクアウトして、団欒をご一緒させていただいたり。

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初めての土地、初めましての方達の中で、どんな広島時間になるかなぁと、期待と緊張にいた私に、ほっとする時間をくださったこと、とってもありがたくて嬉しくて。

そんな希望さんとのshutterの対談は、フェリーに乗って厳島神社に行く時間と共に、過ごしました。

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現在希望さんは

早産・低体重児・未熟児ママと子どものためのコミュニティ「しずくの木」を広島で主宰、活動を続けています。(現在は世情を鑑みて、オンライン上での活動が主。)

もともとご自身は早生まれで、何をするにも少しゆっくり目だったことからみんなと同じくらいに・・・「普通になる」をずっと意識しながら大人になってきたそうです。

普通になるために、遅れないために、頑張らなくっちゃと。


そうして大人になり、結婚した先で体験した、我が子の早産。

それが、2013年のこと。

突然の出来事に戸惑うばかりの希望さんの目の前の小さすぎる命。(1128gでご出産されたそうです。)

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あまりに小さく生まれた我が子を前に、どうしてちゃんと産んであげられなかったんだろうと言う自責と後悔に押しつぶされるような日々。

でも、そんな日々の中で、我が子は、どんどん、小さな小さな成長と進化を繰り返してゆく。ちゃんと産んであげられなかった、という気持ちがあるからこそ、その小さな変化を・・・・普通に近づいていくその過程を見落とさず見つめ続けただろう、希望さん。

その中で感じたことが

未熟児や早産、低体重で出産を経たお母さんの不安や悩みを受け止める相談窓口や集える場所がないこと、

見逃したくないその成長の過程を、母子手帳に書く場所がないこと、

でした。


私を助手席に乗せて、希望さんがおっしゃったこと。

「変な話、何らかの障害や病名がつけば、病院や行政のフォローが受けれることも多いんです。でも、障害も何もなく、未熟児だった、低体重だった、でも、その後は小さいながらもなんとか育ってはいるというママたちが、その過程で感じる不安や悩みを相談できる専門の窓口はなくて。だからこそ、どうしていいか、本当に困ったし、自分で調べてなんとかするしかなかった。孤独だった。」

私も二人娘の子育てを経験した身ですが、初めての我が子は、何もそう言ったことがない安産だった私でも、母子手帳の成長曲線がいつも気になっていたし、おっぱいを飲む飲まないで大慌て。何をしても泣き止まない我が子を前にどんどん不安になって、泣きながら助産師さんに電話をかけたこともあります。

それが、小さく小さく生まれた、頼りなく見える我が子だとしたら・・・・??どれだけの感情が湧き上がるのか。その不安のほどは、想像しただけで胸がギュッとなるほどです。

なのに、その相談窓口がなかった。

だからこそ、作ったのが早産・低体重児・未熟児ママと子どものためのコミュニティ「しずくの木」だったそうです。(2017年からスタート)

小さな小さな命が育っていく、その過程の、不安だけではなく、喜びもシェアできるようにと。

小さく小さく産まれた命。小さく産まれたからこそ、日々の進化や成長が本当にたくさんある。それはある意味・・・・小さく生まれることがなければ、みることができなかった成長、とも言えるかもしれません。

3000g前後で産まれた赤ちゃんだったら、もうお腹の中でしてしまった成長がそこには確かにあって、お母さんはその変化に希望を見つけ、喜び祈る日々。

なのに、一般的な母子手帳には、それを書く欄はどこにもない。母子手帳の月齢ごとの成長を確認するための項目は、書けないことばかり。目の前の我が子には目覚ましい変化や進化があるのに、一般的な赤ちゃんの成長と比べて落ち込んで、ちゃんと産んであげられなかったと笑顔を失ってしまっては、母子手帳の意味がなくなってしまう。

我が子は、我が子のペースで確かに生きて育ち、今ここにいる。たくさんの成長が毎日に溢れてる。その命の力の証を残したい。記録したい。

そう思った希望さんが、メンバーと一緒に2018年からさまざまな方面に働きかけ尽力し、今年広島で叶ったのが「ひろしまリトルベビーハンドブック」の導入。

未熟児、低体重でお子さんを出産されたお母さん専用の母子手帳のサブブックは

広島県内に住んでいる、出生体重が1500g未満、もしくは33週未満で出生されたご家族、それ以外の低出生体重児(2500g未満)で手帳を希望される方

が対象となっています。

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冒頭には、希望さんの言葉も。

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ここには、早産だったお母さんが抱いてしまう気持ちのさまざま、そしてそれが「あなただけではない」だから、自分を責めすぎないで、ということが書かれていたり、

NICUやGCUでの様子の記録や、退院の日の記録など、忘れたくない、大切な記録を記すことができるようになっています。

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言葉に尽くし難いたくさんの想いを、これまでに感じてこられたのだろうと思います。

自分のお腹の中で育んだはずの命が、あまりに小さく産まれてしまった、その頼りなさの前に感じた懺悔したくなるような気持ちと不安、その反面で、しっかりと育てていかなくてはと、懺悔を義務と希望に変えて背負い頑張った日々。

いろんな気持ちを感じてきたからこそ、そこで感じた孤独や不安が大きかったからこそ、あの時、助けを求めていたご自身がいらしたからこそ、同じような気持ちを抱えているだろう人の力になりたい、役に立つことができたら、そんな思いが今日までの希望さんを導いてきたのかもしれません。

とはいえそれは決して、ハンディキャップではなくて。

この体験を経た希望さんだからこそ、今感じている大切な思いがあると思うのです。

それが「もっと」ではなく「もう」の思考。

小さく産まれた我が子の成長を見逃すまいと生きてきた日々だからこそ、きっと感じること。

私たちはこれまでこの社会の中で「もっと」をたくさん求めてきたし、また、求められてきたのかもしれません。

もっと豊かに

もっと素敵に

もっと成長して

もっと立派に

そうすれば・・・

もっと、追い求めれば

もっと、何かを得たら

もっと幸せになれる、と。

でもそれは果たして本当なのでしょうか。


小さく産まれたお子さんとともに、その小さな成長を一つ一つ捉え見つめ、感じてきた希望さんがたどり着いた場所は

「もう、ある」だった。

毎日毎日、目の前を見つめていたら、そこにはもう、成長が、喜びが、「ある」

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豊かさ、幸せ、お金も、ものも、経験も、功績も。

もっと、もっと、って

そんなに今を不足として未来に手を伸ばさなくても

私たちの足元にはもうたくさんの「幸せ」「豊かさ」はあるんじゃないかな。

もっと得ないと幸せになれない?

ねぇ、それもしかしたら違うんじゃない?

今ある幸せを、見てみようよ。そうしたら「もう幸せなんだ」ってきっとわかるよ。

今「ない」を見て未来の「ある」を探し続けていたら、ずっと「ない」今が繰り返される、きっと。

今「ある」を感じて、幸せを感じていれば、もう幸せでしかない。

そして、その「今ある」は、何で感じられるかは、人それぞれでいいし、社会や周りの声に惑わされる必要なんて、きっとないんだと言うこと。

だからあの日の希望さんもわたしにたくさんのことを教えてくれました。

ゆかさんにはゆかさんの幸せがあるように

わたしにはわたしの幸せがあって

自分がそれを幸せと思えるなら、わたしはそれがいい、と。

いっぱい頑張ってきたけれど。

自分で稼げた方がいいかなとか、

もっと働いたほうがいいかな、とも思ったけれど。


でも、わたしにとって、ほんとうに大切なことはなんだろう。


そう考えたら、今目の前にある、我が子との時間を大切にともに生きること、それが今は何より大切だった。

幼稚園や学校に行くのを見送りたいし、帰ってくるのを迎えてあげたい。学校や幼稚園から帰ってきたら、一緒におやつを食べたりしながら、きょうのできごとを話して笑い合いたい。

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その時間こそが、実はわたしにとっては何より大切で、お金のためにと、未来の何かを不安に思って、今その時間を削ったり犠牲にすることは、わたしにとっての幸せには、実は遠い。

だったら、もう今ある、この時間を、もっと日々大切に味わう、それでいいし、それがいいんじゃないか。


もっとを求めなくても、

実は私はもう今「とても幸せ」な今を、生きている。

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未来の不安や不足を考えて、そのために今を生きるより、

今ここにある幸せに目を向け味わい感受しきりたい。


どうして、世間はいつももっともっとと、求めることばかりをよしとするのだろう。

きっともう、ここに、十分あるんじゃないかな。


幸せを得るために

もっと、頑張らなくても

もっと、自分を追い立てなくても

もっと、必死に努力をしなくても。


私たちは幸せになっていけるし、幸せなんだよね。

今もうここにあるから。


もっと、に囚われることから自由になったら、もう十分心豊かな毎日が目の前にあると思う


そう話す希望さんの口調はとても確かで、穏やかで、ご自分が出した答えをしっかりと抱いてらっしゃることがわかって、わたしもなんともほっとした気持ちになったのでした。


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つい、探してしまう。

何が、いけないのかな

どこを、変えたらいいのかな

次は、どうしたら、いいのかな


世間は

社会は

こうだけど


と。

もっと変えるべき何かを、つい。


そうじゃなくてもいい、きっと。


あなたは、何が幸せなの?

あなたは、どうしたいの?

今、本当は何に幸せを感じてる?

案外それって、今もうあるものじゃない?


純粋なる自分の心の声に耳をすませば、そこにきっとあなたの答えはあって

誰かや何かの、他人の「答え」と比較する必要なんて、全くなくて。

私がそれを信じたらいいだけ。


きっと・・・

今、目の前にある我が子の、小さな成長を、見逃すまいと、見つめ続けてきた希望さんだからこそ、確かに思えること、なのかもしれません。

今日ここに、もう、あるから。

小さな成長が、小さな変化が。

もっと立派に、もっと大きくなって

そう、理想ばかりを、いわゆる「普通の成長」を追いかけていては、

ギャップに苦しむことしかなかっただろう日々の中で

希望さんは、見失うことなく、見つめ続けてきた人だと、私は感じるのです。


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あの日、ご自宅にお呼ばれして、一緒にいただいた広島お好み焼き。

小さなお子さんがいらっしゃるお家ならではの、わちゃわちゃ感は、私にとっては懐かしく温かい姿。

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食後、コーヒーメーカーでコーヒーを用意しながら、希望さんは言いました。

ゆかさんにとっては、焙煎したてのお豆で丁寧にハンドドリップで淹れるコーヒーがゆかさんの幸せだろうけど、私にとっては近くのホームセンターで買ったこのコーヒーをコーヒーメーカーで入れて飲めることが幸せ。そういうことですよね。自分にとっての幸せ、って。


うんうん、本当に、そう。

あなたにとっての幸せ、喜び

私にとっての幸せ、喜び。

それは、それぞれで良くて。

優劣をつける必要もなくて、比べることもなくて

そして

背伸びして頑張って「もっといいもの」ばかり望まなくていい。


私にとって

あなたにとって


もう、あるものを、今得ているものを、大事に、これが私の幸せの素と、味わう。感じる。大切にする。


それができれば、きっと私たちの「幸せな毎日」は続いていくし、自然と変化も更新もしていく。


もっとではなく、「もう今ここにあるもの」から始まっている幸せを。


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自宅で毎朝、グラインダーで挽きたてのお豆をハンドドリップしていれる、香高いコーヒーも好きだけど。

家族で食卓を共にする賑やかさと温かさに囲まれながら、希望さんが好きというコーヒーメーカーで入れたコーヒーをいただくひとときの、なんとも・・・頭も心も身体も、ふっと力が抜けて、ゆるんでしまうような、ひと口を飲んだ後のため息が柔らかく伸びていくような、安堵の時間。

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随分、生きるのは楽になってきたと思ったけれど。

希望さんと話していて、まだまだ私はつい自分に「欠けている不足」があるんじゃないかと考えては、「もっとこうしないと」って思っているのかもしれないな

そんなことを感じながら、広島を後にしたのでした。


もうから始まる、今日の、今の幸せを。

今のあなたはきっともう、幸せ。

望んでもいいけれど

望まなくても、もうじゅうぶん幸せがあると思えたなら

あなたの世界の景色はどうあなたの目に映るでしょうか。

たくさんの煌めきが、そこにはあるのかも、しれません。


今年4月に広島で導入されたリトルベビーハンドブックは、佐賀でも導入され、現在では日本の各地でリトルベビーサークルが生まれ、リトルベビーハンドブック導入の動きも盛んになってきているそう。

しずくの木を立ち上げ活動してきた希望さんのもとにも、全国各地の未熟児・低体重児のお母さんから問い合わせや相談が来ることもあり、協力をしているとのこと。

生まれた命の大きさに優劣は決してなく、どんな命の成長も喜び励ましあえるつながりが、今後はますますと増えていきそうです。


希望さん、この度は本当にありがとうございました。また、ハラペーニョ入りのお好み焼きが食べたいです。


早産・低体重児・未熟児ママと子どものためのコミュニティ「しずくの木」初め、希望さんの活動一覧はこちらからご覧いただけます。


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