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2020年初猟初日は珍プレー特集⁉️

毎年、初猟前夜は胸が高鳴りなかなか寝付けないもので、遠足や旅行に行くようなワクワク感が止まらない。

11月15日早朝、暖気運転をする車内には、田中と櫻井が無線であいさつを交わしていた。
「…取れてる?」
「アニさん取れてます。これから出ます。」
リーダーの田中はサブリーダーの櫻井の1つ歳上でありながらも、狩猟・猟銃の経験は10年のキャリアだ。
圧倒的経験値の差から櫻井は田中を兄貴分と慕い、猟場で背中を預けられる絶対的な信用と信頼を込めて「アニさん」と呼んでいる。

待ち合わせ場所までジムニーを走らせる車内には、初冬の眩しい朝日が降り注ぐ。
駐車場に着くと2人の新たな門出を祝し記念撮影。

狩顚童子として新たな一歩を踏み出す瞬間を2人で噛み締めたのだ。ちなみに、写真向かって右側が田中、左側が櫻井。

猟場に到着、山を歩かないことには始まらない!

猟場に着くと装備を整え山に入った。
昨シーズンまで所属していたハンティングクラブは、多い時には20人以上で4、5頭の猟犬を使った「巻狩」でクマ、イノシシ、シカ毎年数多くの獲物を獲っていた。
猟だけではなく、解体、調理、射撃に至るまでレベルの高いクラブだったため、田中と櫻井も少なからずクラブでそれぞれが経験してきたことをベースに渉猟を始めた。

初日から獲れるとは期待していない。犬を使った巻狩から2人だけの渉猟に、更に猟場も変わり、猟果は極端に落ちることは容易に想像ができた。

獲れても獲れなくても狩猟を楽しむ、山で過ごす時間を楽しむ…これに尽きる。

出尾根を登っていくと、もの道(獣道)やガラ(シカ)の糞に寝屋が至るところに確認できた。フィールドサインが濃い…思った以上に期待ができるのではないか?
そう思い、適当な場所で鹿笛を吹いてみると「ピィッ」と警戒音を発しながらメスのシカ4、5頭が50mほど上を翔けて行ったが引金を引くには至らなかった。
静まり返った山に田中が振り向くと
「まさか…今の鹿笛で?普通オスだよな?」
「はい…アニさん(笑)」
「出てくれば何でもいい!この山いるぞ!」

山に入って30分もせずモノを見れたことでさすがにテンションが上がる。
渉猟は続く、ポイントになりそうな場所を確認し、フィールドサインの位置をつなぎ合わせていく。
うっすら額に汗を浮かんできたころ、最初の出尾根に戻ってきたので、休憩を取ることにした。

キャンパー田中のギアでコーヒーブレイク

リーダーの田中は、キャンプも好きで、キャンプ仲間と猟期以外はキャンプに出かけることが多い。
この日、コーヒー好きの櫻井のために、豆を持ってきて手挽きのオシャレなミルで豆を挽くと、キャンパー愛用のコンロで湯を沸かし何とも贅沢なコーヒーブレイクが始まったのだ。

キャンパーではないがSnowpeakのマグを持参した櫻井は、淹れたてのコーヒーを味わう。
まだそこまで寒くない山の風が渉猟で温まった体に心地良い。
マグから昇るコーヒーの薫りに自然と笑顔が溢れた。
狩猟とは何と贅沢な時間だろうか。
「アニさん!コレですよ〜」
「最高だな」
山での贅沢なコーヒーブレイクに大満足した2人だった。

その時は突然に

休憩も終わりに差し掛かり仕度をしていた時、何かが落ち葉を踏み付ける音がした。
狩猟で山に入るととにかく些細な音に敏感になってしまう。
もの音は、2人の右後方から聞こえた。

田中はちょうど立位の状態、櫻井は田中の足元に座っている状態だった。
「アニさん…見えますか?」
「駄目だ…俺からじゃ見えない」
櫻井はそっと立ち膝の姿勢を取り木の陰からもの音のした方を覗くと、メスのシカがこちらを見ながら周囲を警戒していた。
「アニさん、ガラです。撃てますか?」
銃を担いでいた田中は静かに据銃する。
「駄目だ…この位置からじゃ厳しい」
ダメ元で櫻井は体勢を変え銃を手に取り、据銃しようとした瞬間…メスのシカは反転して走り去ってしまった。
一瞬の出来事に静かな緊張感が山に残る。
「惜しかったですね〜」
櫻井が田中に声をかけると
「いや…それが、どのみち弾入ってなかった(笑)」
田中のまさかの言葉に櫻井は笑い、田中もつられて笑い出す。

その後も、山を散策しながら渉猟をした。
笹に囲まれた林の中では、遠く気配に気付き横切った黒い影に大きな角が見えた。
結局、この日は10頭近くものは見れたが獲れ高は0。

何とも珍プレーな初猟初日だった(笑)

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