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5. 森博嗣『工作少年の日々』
筆者の工作に対する喜びをストレートに語ったエッセイ。
内容は筆者がしてきた工作の話がハイテンションに語られるだけなのだが、筆者はとにかく幸せそうである。人間の幸福の根源的なところに「ものをつくること」があるのではないか、と問いかけてくる一冊。
また、読んでいて「ところでお前は何を作ってるんだ?」と問うてくる批判の書でもある。
6. 安達哲『さくらの唄』
Amazonの内容紹介を読むと「青春漫画の金字塔!!」とあるのだが、その実、これもものづくりの本である。
主人公の市ノ瀬利彦は「オナニーより大切なもの」を求めて絵を描き始めるが、突如転がり込んできた資産家の叔父に翻弄される形で放蕩を重ねるようになる。
利彦はいったんは叔父の論理に飲み込まれるのだが、最終的に絵の道に帰ることになる。
なお、主人公が放蕩を経たのちに本質的なところに帰っていくという筋書きはどうもゲーテの『ファウスト』が下敷きになっているようで、ここから黒澤明『生きる』との共通項が見出せるとより深い理解(感動)を得ることができる。
7. 立花隆『宇宙からの帰還』
田中角栄批判や共産党研究で有名な立花隆が宇宙飛行士に対して行ったインタビュー集。
この本が新しかった点は、インタビューにおいて、宇宙がどのようなところかを聞くのではなく、精神的にどのような影響を受けたかに焦点を当てて聞いているところだ。
宇宙に行って神の存在を認識し、帰還後伝道者になった者や、逆に神の不存在を確信する者など、その影響はさまざまだ。
読んでいると宇宙に行きたくてたまらなくなるのだが、野口聡一はこの本を読んで宇宙飛行士を志したというのだから、さもありなんという感じ。
(つづく)
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