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本を勧める(1/3)
人に本を勧めることは難しい。「勧められた以上は読まねば」というプレッシャーを与えるし、勧めた本がその人の好みに合うとは限らないからだ。
しかし、そういったリスクを冒してでも人に本を勧めなければならない場面は存在し、俺は今まさにその場面に直面している。(求められたから)
そこで今回、お勧めの本を10冊選出し、その中から読む本を選んでもらうことにした。選出においては、前提知識が要らないもの、寝っ転がって読めるものを優先して選んだ。
1. 宮崎駿『出発点』『折り返し点』
宮崎駿の作品は、後期の作品になればなるほど難解さを増していき、『もののけ姫』あたりから完全にわけがわからなくなるが、実は宮崎自身の自作解説によってある程度のところまで種明かしされている。それが以下の2冊。
宮崎作品についてネットには都市伝説めいた「解説」がたくさん転がっているが、そんなもんをまとめて吹き飛ばすぐらいのパワーがこの本にはある。
共に分厚いが、作品ごとにまとめられているので、好きな作品の章から読んでいけば良いだろう。
2. A・ウェイリー版『源氏物語』
これはイギリスの東洋学者A・ウェイリーが『源氏物語』を英訳したものを、日本人が日本語に再翻訳したものだ。
英訳の時点でヨーロッパの古典文学の引用・翻案がなされており、その日本語訳も終始↓のような感じ。
![](https://assets.st-note.com/img/1708864329071-Ol6eDuo0lR.png?width=800)
これだけ見るととんでもないイロモノかとも思えるが、哀しいかな平安時代の古典世界よりもヨーロッパ古典文学の世界の方が身近になってしまった我々にとっては、こちらの方が『源氏物語』について数多ある現代語訳より読みやすいのである。
そして作中、光源氏という良い男に振り回されて病んでいく女たちの様を見ていると、執筆から千年経った今こそが、『源氏物語』を読むのに一番ふさわしい時代なのではないかと思えてくる。
3. 田川建三『イエスという男』
キリスト教徒ならみんな読んでいる、けれど人前で好きだと言いづらい男、田川建三。
特徴は、論敵を糞味噌にこき下ろしながら論理を展開していく独特のスタイルだ。
これは読んでいて痛快なのだが、「よくこのテンションを維持できるものだ」と感心する。自分でこのスタイルを真似て文章を書いてみると分かるのだが、途中で恥ずかしくなったりアホらしくなったりして止めてしまうのだ。
博覧強記の筆者でなければただイタいだけの本で終わっただろう。
ジャンル的にキリスト教関係者かインテリしか読まない本なのだが、平易な言葉で新約聖書の基礎知識も身に付くし、もっと広く読まれても良い本。
(ただこの本だけ読んで「イエスってのはさ~」と語られるとたぶんイラつく。そんな本)
4. 遅塚忠躬『フランス革命: 歴史における劇薬』
歴史学の泰斗、遅塚先生が子ども向けにフランス革命を説明した本。
・・・なのだが、およそ「岩波ジュニア新書」で本当に「ジュニア」向けな本は少数派だ。ふつうの小中高生はこの本を読んでも何のことやらさっぱり分からないだろう。
ただ学生でも分かるようにしようという熱意は本物で、ちゃんと読めば予備知識なしでフランス革命のことがよく理解できる。
フランス革命を「貧民が王族や貴族に立ち向かった革命」としか思っていない人はぜひとも読むべき一冊。
(つづく)
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