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2話 要約力

阿多古神社に

春、桜の花びらが風に運ばれていく。
会社員(25歳男性)が眉間に皺を寄せた独特の苦悩の表情で大鳥居から石段をゆっくり登ってくる。社殿の正面に立ち、お賽銭箱に小銭を投げ入れた。手を静かに合わせて礼を深々とした。

今回のお願い

 「私は、今年入社して3年目です。先輩から、お前の話は長いしつまらない。聞いてて時間の無駄だし、要点がわからんと言われます。私は私なりに〜(中略)〜という訳で、話をまとめるのが上手くなりますように!」

神様の茶屋へ

(な‥‥が‥‥い‥‥)
(暇を持て余してたところじゃ、ちと遊ぶか。)

願いを終えた会社員の頭に声が響く。
──後ろにある茶屋に行くのじゃ

会社員は社殿を後にし、茶屋へと向かった。旅館の様な雰囲気のある茶屋、台所らしき場所の窓柵から甘い香りが漂っている。扉を開けると、室内には2名掛けのテーブル席が5席と、奥には和室が3室ある。店員はみな女性で巫女服を着ている。

 「いらっしゃいませ!」
 「そちらでお待ちください!」

会社員は入口で立っている。
奥の厨房からひとりの巫女が現れた。巫女の目の奥は金色に輝いている様に見える。

会社員(なんか、気になる‥‥)
 「待たせな、こっちの和室にくるのじゃ!」

会社員は言われままに、巫女の指示に従って奥の和室に入った。会社員が靴を脱ぎ、敷居を跨ぎ座敷に上がると、後ろから巫女が続き静かに襖を閉めた。

 「余の名はミヅハノメ、そこに座るのじゃ」
 「さて、長い話じゃったが、
  要約するのが上手くなりたいんじゃな〜?」

会社員は座布団に正座しているが、巫女はテーブルの向かい側で胡座をかいて膝に肘を置いて喋っている。信じられないが、浮いている。
現実を理解できないでいる会社員が一切気にしないミヅハノメは、

 「まずは、この虎の巻を読めば良い。」

そう言い放ち、ミヅハノメの肩越しから巻物がフワリと飛んで来て、巻物は空中で捻れるように回転し、縛られてた紐が解けてテーブルに広がった。

ミヅハノメの「虎の巻」

虎の巻解説

ミヅハノメのは胡座のまま、前屈みになり虎の巻が置かれたテーブルの上で浮いている。豊満な乳房が露わになりそうである。かろうじて、興味がそそられる突起部分が見えない。

 「つまり、お主は一番言いたいことを
  整理できていないのじゃ!
  焦らず何を言いたいのか時間を使え!」

──会社員の頭に直接、ミヅハノメの声が届く。
 まず、お主は言いたい事が沢山ある。気付きが湯水の如く湧き出る事は良いことだ。しかし、相手に全てを伝えたからと言って、そのまま喋っては伝わらない。
最初に【何の話をするのか】という総論が大事、一番大きな枠で話を捉えると話が外側に行く場合、自分で気付けて起動修正でるんじゃ。

会社員は頷きながら、真剣に聴いている。しかし、さっきから会社員の周りが甘い香り漂っている。その空気の色気がどんどん濃くなってきた。

 「出典はあるのでしょうか?」
 「なにぃ?神の教えこそ原点じゃ、
  何を戯けた事を!
  頭はスッキリしただろう、
  それじゃ、褒美を貰うぞ!」

ミヅハノメのご褒美

 ミヅハノメの周囲には小さな水滴が幾つも浮遊している。その水滴は金色に輝いて、会社員の唇に触れると会社員の内側から強烈な性欲が盛り上がりをみせた。
 ミヅハノメは何かを悟ったかのように微笑みながら、身体をひねり背中を会社員に見せた。

 「余は恋愛の神じゃ、
  この部屋は次元を絶っておる、
  何をしても外界から干渉されない。」
 「‥‥はぁはぁ」
 「端的にどうしたいか、云ってみよ。」
 「◯◯◯したい!!」
 「ほぅ‥‥」

会社員はミヅハノメを背後から抱きしめて、豊かに膨れる丘状の幸せを掌で感じた。許されたような緩やかで会社員を包み込むような風が舞う。
会社員は理性を失い、巫女に覆い被さった。

──夕刻が近づき

 会社員は目を覚ますと、お賽銭箱の前に立ったままだった。会社員は万能感を手に入れたような気分が高揚している。一体何があったのか、記憶にないが参拝した効果は抜群のようだった。悩んでいた事すら忘れて、足取りは軽く階段を降りていく。
 美琴はバイトを終えて、帰宅した。
いつもよりも強い疲労感を感じている。しかし、気分は良い、肌艶も心なしか状態が良いと思う。

2話完 
以下、関連する書籍(抜粋)

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