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1話 質問の作法

阿多古神社に

春、桜が舞い散る。
会社員(23歳男性)が暗い顔つきで大鳥居から石段をゆっくり登ってくる。社殿の正面に立ち、お賽銭箱に小銭を投げ入れた。手を静かに合わせて礼を深々とした。

今回のお願い

 「僕は、今年入社した会社員です。先輩から、お前の何が聞きたいか解らない、質問が下手だと毎日怒られます。質問が上手くなりますように!」

神様の茶屋へ

(なんじゃその願いは‥‥)
(暇を持て余してたところじゃ、ちと遊ぶか。)

願いを終えた会社員の頭に声が響く。
──後ろにある茶屋に行くのじゃ

会社員は社殿を後にし、茶屋へと向かった。旅館の様な雰囲気のある茶屋、台所らしき場所の窓柵から甘い香りが漂っている。扉を開けると、室内には2名掛けのテーブル席が5席と、奥には和室が3室ある。店員はみな女性で巫女服を着ている。

 「いらっしゃいませ!」
 「そちらでお待ちください!」

会社員は入口で立っている。
奥の厨房からひとりの巫女が現れた。巫女の目の奥は金色に輝いている様に見える。

会社員(なんか、凄い魅力を感じる‥‥)
 「待たせな、こっちの和室にくるのじゃ!」

会社員は言われままに、巫女の指示に従って奥の和室に入った。会社員が靴を脱ぎ、敷居を跨ぎ座敷に上がると、後ろから巫女が続き静かに襖を閉めた。

 「余の名はミヅハノメ、そこに座るのじゃ」
 「さて、ひっどい悩みじゃの〜
  質問が上手くなりたいじゃと〜?」

会社員は座布団に正座しているが、巫女はテーブルの向かい側で胡座をかいて膝に肘を置いて喋っている。信じられないが、浮いている。
悩みを話したのは社殿だった、こっそり聞かれていたのかと思うと会社員は気分が悪くなった。そんな会社員の顔色を一切気にしないミヅハノメは、

 「まずは、この虎の巻を読めば良い。」

そう言い放ち、ミヅハノメの豊満な胸部から巻物を取り出して、無造作に会社員に放り投げた。巻物は空中で左右にステップを踏む様に動き、縛られてた紐が解けてテーブルに広がった。

ミヅハノメの「虎の巻」

虎の巻解説

ミヅハノメのは胡座のまま、前屈みになり虎の巻が置かれたテーブルの上で浮いている。豊満な乳房が露わになりそうである。かろうじて、興味がそそられる突起部分が見えない。

 「つまり、お主の質問は
  何故その質問をしているのか、
  相手に伝わってないのじゃ!」

──会社員の頭に直接、ミヅハノメの声が届く。
 まず、質問をした時には必ず相手は時間を取ってくれる。焦らず、自分の時間を使う。質問の意図が伝わってない状態は、答えようがない。さらに答えようがない状態は、相手からするとなんだか、役立たずのような気分になる。
 【ギャップを埋める為に】【相手の返答を導く為に】質問をする。自分の考えや感想の良し悪しを聞くものではなく、相談相手に議題に乗ってもらうレールを示すのが質問の本質じゃ。言い方は悪いが、引き込むのじゃ。
 会社員は顔を上げれば妖艶なふくらはぎがチラチラと見える。その状況で、話も半ば意識出来ないがミヅハノメが言っている事は全て理解できた。

 「出典はあるのでしょうか?」
 「なにぃ?神の教えこそ原点じゃ、
  何を戯けた事を!
  頭はスッキリしただろう、
  それじゃ、褒美を貰うぞ!」

ミヅハノメのご褒美

 ミヅハノメの周囲には小さな水滴が幾つも浮遊している。その水滴は金色に輝いて、会社員の唇に触れると会社員の内側から強烈な性欲が盛り上がりをみせた。
 ミヅハノメは何かを悟ったかのように微笑みながら、会社員の耳元へ顔を近づけ、小声で言う。

 「余は恋愛の神じゃ、
  この部屋は次元を絶っておる、
  何をしても外界から干渉されない。」
 「‥‥していいんですか?」
 「しっかり質問せい。」
 「◯◯◯してもよろしいでしょうか?」
 「既に意志が伝わっておる!」

ミヅハノメの膝あたりには会社員の勃興した硬いものが当たっていた。
会社員は理性を失い、巫女に覆い被さった。

──夕刻が近づき

 会社員は目を覚ますと、お賽銭箱の前に立ったままだった。会社員は万能感を手に入れたような気分が高揚している。一体何があったのか、記憶にないが参拝した効果は抜群のようだった。悩んでいた事すら忘れて、足取りは軽く階段を降りていく。
 美琴はバイトを終えて、帰宅した。
いつもよりも強い疲労感を感じている。しかし、気分は良い、肌艶も心なしか状態が良いと思う。

1話完 
以下、関連する書籍(抜粋)

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