追いかけてくる
夏の終わり、会社を退職した。
当時は課長が不在で、役職はついていないものの課長職のような仕事をしていたので、かなり引き止められたし、上司から嫌がらせのような事もされた。
残していってしまう、今まで一緒に働いていた人達に「申し訳ない」という気持ちももちろんあった。
でも、みんな自分の人生にしか責任は持てない。
だから私の人生に責任を持てるのは私だけなのだ。
それなら、私は自分の気持ちに正直になって「ここ」から離れる。
そう決めた。
幸い、一緒に働いていた皆は暖かく背中を押してくれた。
でも連日22時過ぎまで残業のような状態だったので、転職活動は退職後にするしかなかった。
【追いかけてくる】
退職の数か月前、同じ職場の方から食事に誘われた。
例の如く、好意を持たれているとは微塵も思っておらず、何度か食事に行った後、花火大会に誘われてやっと「もしや・・・」と気付いた。
そして花火大会に行った帰り道、お付き合いを申し込まれたが、正直な所、その人の事を「恋愛対象」として見たことがなかった。
タイプではなかったけれど、一緒に仕事をしてきて、真面目で優しい良い人だということは十分分かっていた。
でも問題はそこではない。
どんなにタイプの人でも、好きな人でも、私は受け入れられないのだ。
実はその頃、婚活を始めて1年程経っており、少し疲れていたこと、
仕事の残業が常態化していたこともあって、婚活自体をお休みしていた。
そのタイミングでのことだった。
・・・もしかしたら。
またそんな甘い考えが性懲りもなく出てきた。
「少しずつ変われているし、もしかしたらもう大丈夫かも知れない」
私は「仕事上の姿しか知らないこと」や「もう少し知ってから決めたいこと」を彼に伝え、ゆっくり関係を深めていきたいと伝えた。
彼は快く了承してくれ、なんだか不思議なお付き合いの形ではあったが、友達以上、恋人未満のような関係が始まった。
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