小粋な病人の粥のすゝめ

友から貰った米を粥にする。
本当は普通に炊いて、もりもり食べるのが一番贅沢で最高な食べ方だと思っているのだが、明日は病院での検査があり、医師から、
「極力消化の良いものを食べてください。(浣腸するんで、判断次第では地獄をみますよ)」
と忠告されていたため、「それなら粥だ」と粥にした。

2合ほどの米を柔らかく炊き込み、完成。あえて塩は一切ふらない。

それには理由があった。

この晩餐における、唯一のおかずを最大限に活かして楽しむためである。

そのおかずとは……。武田さんちの梅干しである。甘くないスタイルでありながら、そのどこかフルーティな風味には優しい品があり、俺が「世界最強の梅干し」と太鼓判を押す逸品だ。

昔見た健康特集か何かで「梅干しは1日5粒が良い」説にならって、5粒。別の小皿に乗せて、粥をお椀によそうたびに1粒、2粒放り込んで食うのが旨い。

こちとら体中の水分も塩分も限界まで枯渇しているような有様だ。そういうときの、この粥と梅干しは五臓六腑に染み渡る。信じられないほど、味の奥行を五感を通じて、全身で味わえる。

剣山や滝を巡る冒険で空腹のあまり、低血糖なのか低体温症なのかになって、視界が白い靄がかってきたときがあった。その絶望的な状況で食べた塩むすびは、これまで食べた何よりも絶品だったが、今回の粥もそれに匹敵するほど絶品だったな。

俺の好きな食べ物ツートップは、今のところ極限状態での塩むすびと粥(梅干し付き)かもしれない。

さて、明日は検査。人生初浣腸。怖いねー笑

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