日本の品質はやっぱりスゴい!
実は私、職人でした。
職人といっても、漆塗りや和紙の紙漉きなどの伝統工芸品を作る職人ではなく、建設業の職人です。
窓枠や水回りのシーリング(コーキング)防水や屋上のシート防水、塗膜防水、外壁のひび割れの補修などを行う建設業の防水工事屋さんをしていました。
ヘルメットをかぶって安全帯を装着し、足場や高所作業車で外壁や屋根に登って作業します。
当時は富山県に住んでいたのですが、富山県下の多くの工場やマンションの屋上に登り、防水工事作業をしたものです。まぁ、たったの四年間だけの経験なので、職人と自称するのもおこがましいレベルですが。。。
当時、率直に感じた事は、建設業においても職人は職人と呼ばれる所以があり、いわゆる伝統工芸品を創作する職人さんのイメージと同じく「さすが職人!」とため息が出るほど綺麗に仕上げ作業を行うという事です。
数年仕事に携わっただけでは決して真似ができない熟練の技、そして効率的な作業につながる段取りと手際の良さは、感動こそすれ容易に真似のできるものではありませんでした。
何より今、フィリピンに来て、改めて日本の職人の仕上げへのこだわり、精緻さ、繊細さ、細かなところまでの気配りに、その品質の高さを実感します。
だって、フィリピンって須らく↓な感じなのですから。
これ以外にも、シャワーブースのドアの建て付けが悪くて外が水浸しになったり、カーテンレールが一つしかないところにレースと遮光カーテンを両方取り付けてみたり(=レースのカーテンだけを閉める事ができない)、ツッコミどころに例を挙げればキリがない。日本では決してあり得ない仕上げの状態が、彼方此方にありますww
因みに、フィリピン人からしても、やっぱり日本の品質の高さはスゴいと思っています。日本ブランドへの信頼はとても高く、日本っぽい名前が付いていれば、現地資本のモノであっても何となく良く見えてしまうくらいです。
面白いなと思うのは、それだけ日本の高品質なモノやサービスが好きであっても、日本と同じ品質を目指そうとはしない事です。そもそも品質の考え方が違うようです。
日本の最終的な仕上げの綺麗さや完璧さは、実はそこに至るまでの緻密な作業工程と品質管理があってこそだと思います。建設業の職人作業は「段取り八分、仕上げ二分」と言われており、多くを準備作業に費やします。
システム開発においても、如何に上流フェーズから品質を作り込んでいけるかが鍵であり、設計書の高い精度と細かい仕様の定義、開発規約の設定が求められます。そしてその仕様や規約に100%準拠しているかどうかを、各テストのフェーズでエビデンスをつけ合わせながら品質を確認し、最終的なリリースに向けて品質を高めていきます。恐らく実際の開発作業とそれ以外の周辺作業(プロジェクト管理、要件定義、設計、テストなど)の割合を考えると、建設業と同じく8:2くらいになるでしょう。それくらいきっちり段取りし、細かい品質管理を行う過程を経て初めて完璧な結果につながるというのが基本的な考え方ですね。
一方でフィリピンや日本以外の海外のアプローチは、「機能にコミット」する考え方のように思います。途中の工程で人によって多少やり方が違おうがテストの過程で実現イメージが多少ずれていようが、「機能」として要件を満たしていれば、それは品質基準をクリアしている事になる訳です。お風呂のシーリングの色や仕上げの見た目の悪さは、機能面では影響がない訳ですからこだわるところではない。ネットワークBOXのカバーが閉まらなくても、「WifiやLANは使えるからいいよね」となる。
さすがにシャワーブースのドアの端から外に水が漏れるのはどうかと思いますが。。。
そんな感じなので、システム開発においてもフィリピンのメンバーが「できました!」と提出してくるテスト結果のエビデンスは、ことごとく日本人の目から見るとNG(不具合/品質不十分の評価)になりがちです。仕様書と100%の結果の一致を求める日本人に対して「要求仕様通り機能していれば良し」とするフィリピン人ですから、噛み合わないのは当たり前ですね。結果、何度も作り直しになってプロジェクトが遅延していくわけです。
言い換えると、もっと途中の過程に自由度を持たせると、逆にうまくいくのかもしれません。
「具体的に細かく定義をしないと伝わらない」のはその通りですが、最終的な形(機能の要求仕様)を細かく定義すれば良いのであって、その実現までの過程は適度な緩さで任せてみる。。。とか。
うーん。
最初の一歩はかなり勇気がいりますねww
結果が出てから「やっぱり品質基準を満たしていない」となっては取り返しがつかないことになってしまいますから。。。。汗
やっぱり日本の製品やサービスの品質は、総じて本当に素晴らしいと思います。
そこへのこだわりもスゴい。
でもそれが、日本人にしか実現できないままだと、多くの伝統工芸の職人さんが後を継いでいけなかったように、人口減と共に廃れていってしまうかもしれません。
一方で、イノベーティブな発想で新たな次元に進化する事ができた伝統工芸があるのも事実。一緒に働く中で、お互いがストレスなく、何とか日本人以外でも日本が誇る高品質な成果を出せるように、どうにか工夫して新しいアプローチを考えたいものです。
ではでは、今日はこの辺で。
Bahala na! (なんくるないさ!)
※タイトル画像出典:縁ある桂樹舎 和紙文庫 ホームページより。