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胡座をかいていた男

建設中の高層ビルの廊下に、一人の男が腕を組み、胡座をかいて座っていた

年の頃は20代、ヘルメットこそ被っていなかったが作業服姿だ

どっかりと地べたに座り、人を寄せ付けない雰囲気を全身から醸し出していた


建築中とはいえ、そこは既にピカピカに仕上げられた場所で、

高層ビルの29階、白く輝く廊下に一人その男はいた

定例会に参加していた私は担当している中でも重要な拠点である、

サーバールームのレイアウト図を鞄から出して会の参加者に配った

「既にお伝えしていたレイアウトと大きな変更はありません」

「我々の設備も予定通りの工程で搬入します」

「え~っと、この空調機はまだ設置されていないようですがいつ頃に設置予定ですか?」

と、別社の担当者へ聞いた

サーバールーム内に設置されているはずの空調機がまだ現場にないことを知ったのはその日の午前中のことだった


サーバールーム内での空調機の役割は大きい

そもそも設置される予定の空調機がまだそこにないなんて????なのだ


"まだないですよね??"

という柔らかい雰囲気の疑問の念を、私はその担当者に向かって発した


我々の設備を搬入したあとでは、空調機の設置は出来ない

もしくはトンデモナイ苦労をして設置することになる

いや、実質ムリだ


"ん~っと、あれ、、サーバールームの空調機???"

と、その担当者さんの顔に書いてあった

私も既にベテランの域に達していたので、そう慌てることもなくそれとなくその場をやり過ごした


しかし、
我々の設備を搬入したあとでは、空調機の設置は不可能なのである

知らんぷりするわけにも行かない

なにか私に出来ることはないか、、、

その日の定例会はお開きになり、各担当者は散開した


我々の待機場所も29階にあった

私は協力業者の待つ待機場所へと戻った


すると、廊下に胡座をかいて座っている作業服の男

無言で座って廊下を通行止めにしている


定例会の内容を協力業者に共有した後、

私は別の階の仕事をこなす為にエレベーターに乗り込んだ


程なくして29階へと戻ると、

先程まで男が座っていた廊下には何本もの脚立が立てられ、

何人もの作業員がピカピカに仕上がっていた天井をガシャガシャと壊し始めていた

天井裏の骨組みが所々で見えた

皆無言で作業に没頭していた


何が起きているのかと思ったが、

時間が経つにつれて作業の概要が見えてきた

それはサーバールームに設置する空調機の為の配管工事だった

仕上がっていた天井を壊してまで、

先程の定例会から2時間後には作業員を集め、作業がどんどん進んでいく

「プロやなぁ」

正直そう思った


実際のところ、空調機の設置とそれに付随する工事を失念していたのだと思う

しかし、その後のフォローが見事だった

あのスピードとあの作業員の数とその真剣さ、、

見習わなければならない


失念することなど誰にでもある、

しかしその後の対応が早かった


もし、私に同じ状況が起きたらあのように出来るだろうか?

相手は国内有数の建設業者とは言えだ


次の週の定例会で、その担当者の方は落ち着いた様子で余裕綽々としていた

懸念は消失したと、その担当者の方のにこやかな笑顔が物語っていた

同じチームでいることを嬉しく思った


私は私の責任を果たさなければならない

いつもご支援頂きましてありがとうございますm(__)m かねてよりの私の嗜好品でありますお菓子ですがいまだに安売り継続中です なのでいまだに買って食べております(^-^)/美味しいから満足です^^)v