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裏拍

もう無理!無理無理無理無理テンパってぱってぱってと飛び跳ねており/花山周子

絶妙なリズム感に心地良さすら覚える。音楽的に表現するならば、頭出しが裏拍から入る作りになっている。作者は間違いなく音感が鋭いはずだ。

最近のポップスを聴いていると、まるでリズムゲームをやっているかのような音のはめ方をしている曲が目立つ。昭和、平成初期の音楽に馴染んだ人からすれば、今の曲はとても同じ音楽として聴けないのも無理はない。今の音楽は歌詞の内容はさることながら、リズム的なおもしろさや、韻律のおもしろさが重視されているからである。

最も極端な例で対比しよう。

昭和の名曲、『遠くで汽笛を聞きながら』。

堀内孝雄の歌い方が癖になる。元は四拍子の表拍にきっちり収まるシンプルなメロディだ。元がシンプルでゆっくりだからこそ、歌い手は自在にテンポを揺らす余地があった。

こちらは令和のヒットソング、『感電』。

歌い出しから裏拍。ところどころ韻も踏んでおり、詩としての作りもうまい。米津玄師は天才。

きっちり五・七・五・七・七の枠に収っているのが昔の曲で、三十一文字のトータルで収っていればよいと考えるのが今の曲だと考えたらわかりやすいだろう。私個人としては、どちらも好き。王道の枠があるからこそ、そこからずらした作品も存在できる。

余談だが、カラオケで『遠くで汽笛を聞きながら』の後に『感電』を歌うのは、全国でも私くらいではないかと思っている。レパートリーの広さは誰にも負けない自信があります。

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