編集者の書籍企画の見つけ方
前回「本が企画されて読者に届くまでに編集者がかかわること」にて、企画から読者の手に届くまでの大まかな流れである「企画→執筆→編集→印刷・製本→書店→読者」の概要を紹介しました。
今回は、この中で「企画」。さらに細かく「企画の見つけ方」について少し詳しく紹介します。
企画の見つけ方いろいろ
書籍の企画がなければ、私たち実用書の編集者の仕事は始まりません。
そのため、編集者は、つねに企画を探し続けています。
企画の探し方、見つけ方は編集者によってそれぞれ異なりますが、今回は私(ゴファン)のケースを紹介しましょう。
私の場合、大きく分けると
・書店で見つける
・ネットで見つける
・著者などとのやりとりから見つける
・仕事以外の時間のときに見つける
という感じでしょうか。
以下、それぞれを見ていきましょう。
書店で見つける
私は、週に一度は本屋さんに行こうと思っています。
それも、できるだけいろいろな書店を見て回ることを目標としています。
なぜなら、本屋さんは、お店ごとにお客さんの層が異なり、品揃えや並べ方が異なるからです。
子育て世代が多い地域には、児童書や生活実用書などが多く並んでいますし、ビジネス街にはビジネス書が多く積んであります。
そのような特徴を踏まえながら、いろいろな本屋さんを回ります。
もちろん、よく行くお店もあります。
そこでは定点観測をします。
定点観測しているお店の読者(=同じ読者の方々)が、求めているものの移り変わりを見るためです。
書店を訪れるとき、私たち編集者は、いち読者の視点だけではなく、編集者としての視点で本を見ていきます。
どのような本が、どこに並んでいるかを観察するのですが、私の場合は、まずお店の入り口付近の目立つところにある「話題書コーナー」を見ます。
話題書コーナーには「現在売れている本」と「その本屋さんが売りたい本」が並んでいますので、それを参考にします。
今の流行りや話題になっている情報を入手するためです。
話題書コーナーをチェックした後は、さまざまなコーナーを回ります。
私の場合、実用書コーナーとビジネス書コーナーには必ず立ち寄ります。
大きなお店の場合は、実用書コーナーも細分化されています。
滞在する時間が短いときは、自分が調べたいコーナー(細分化された棚)に直行です。
時間に余裕があるときは、実用書全体、ビジネス書、健康書、児童書、パソコン書などのコーナーを順番に見ていきます。
まず、そのコーナーを全体的に見回し、平積みや面陳の本を見ます。
平積みや面陳とは、本のカバーのオモテ表紙が見えている陳列のことです。
売れている本や新刊、売りたい本が平積みや面陳にて展開されていますので、これらを見ることで、そのジャンルの今の流行りを確認します。
それらをヒントに企画を見つけ出すのです。
自分の中で、すでに企画テーマを持っている場合は、そのコーナーをじっくりと見ます。
少なくとも10冊は立ち読みをし、そこから選んで何冊か購入します。
そして、それらの書籍を読んでから、企画を起こします。
ネットで見つける
ネット書店で企画を探すこともあります。
自分が考えているテーマがある場合、上記のようなリアル書店でも情報を集めますが、ネット書店でも情報を集めます。
そのテーマのキーワードで検索し、そこから情報を入れていくという作業です。
キーワード検索を行うのは、ネット書店だけでなく、グーグルやヤフーのような検索サイトを活用することもあります。TwitterのようなSNSでキーワード検索するときもあります。
書店の売上データを元に、企画を探す場合もあります。
出版業界で有名なのは、紀伊國屋さんのPubLineです。
PubLineとは、紀伊國屋さんの売上や客層などのデータが有料で公開されているサイトで、ピンポイントにある本の売れ行きを調べることもできますし、ジャンルごとに売れた順に並べることもできます。
とても貴重なデータを見ることができるのがPubLineなのです。
そのため、PubLineの情報を活用している編集者は、とても多いと思います。
著者などとのやりとりから見つける
人と話しながら企画のテーマを見つけるケースも少なくありません。
この方法は、これまで一緒に本作りをした著者や監修者、外部の編集者と行うケースがほとんどです。
つまり、知り合いの人とのブレストから、企画を見つけていく方法です。
著者や監修者などと、ある本を作っている最中に、新たな企画のヒントが生み出され、それを掘り下げていく感じです。
進行中の企画の打ち合わせがあり、その中で雑談のような形から企画の話が始まり、膨らましていくイメージになります。
一方、だれかがテーマを考え(場合によっては、簡単な企画書を書き)、それをベースにブレストを行うという流れで企画を詰めていくケースもあります。
どちらかが企画のアイデアを思いつき、「今度打ち合わせをしましょう」となるケースです。
この打ち合わせは、昼間の時間帯に行うこともありますし、夜の時間に飲みながらブレストすることもあります。
ある本ができあがった後で行う「打ち上げ」の飲み会で、企画について詰めていくことは少なくありません。
仕事以外の時間のときに見つける
実は、これがたくさんあります。
・テレビを見ているときに企画アイデアが見つかる
・友人と飲んでいるときにアイデアが見つかる
・街中の人々の行動が目にとまりアイデアが見つかる
・旅行先の観光名所を見ているときにアイデアが見つかる
などなど、本当にさまざまなケースがあります。
私の場合は、本を読んでいるときに、たくさんの企画ヒントを得ます。
たとえば、「宗教」の本を読んでいるときに、政治とのかかわりの文面を見て、「政治」テーマが思い浮かぶといった感じです。
もちろん、別のテーマと結びつけるケースも少なくありません。
上記の場合、「宗教と政治」というテーマが、その代表でしょう。
企画とは何かと何かを結びつけたものです。
それは、テーマとテーマだけでなく、テーマとレイアウトデザインだったり、テーマと人だったりといろいろなケースがあります。
また、私の場合は、友人・知人と飲みながら食事をしているときに、企画が見つかるケースが多数あります。
「〇〇に困った」「△△が大変だった」という話題がのぼり、それを企画書に起こし、書籍化したことは数え切れません。
「編集者は、働いているのか、遊んでいるのかわからない」といわれることがありますが、私もそう思います。
プレイベートと仕事の区別がないのです。
仕事と関係のない人と会っているとき、テレビを見ているとき、ネットを見ているときなど、遊んでいるのか、企画を探しているのかわからないケースがたくさんあります。
つまり、「仕事時間の後も、つねになんとなく企画を探している」。
多くの編集者は、こんな感じだと思います。
今回は、企画から読者の手に届くまでの「企画→執筆→編集→印刷・製本→書店→読者」の流れのうち「企画」。それも、さらに細かく「企画の見つけ方」について紹介しました。
次回以降では、残りの項目をもう少し詳しく解説していきますね。
(ゴファン)
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