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迷子ぎみの編集者やライターにおすすめしたい「自分の強み」を探る方法

推しが出来た。
そして、思う。編集者やライターにこそ、推しは必要だと。推しの存在価値に生業が関係ないのは当然だが、断然、いたほうがいい。歴30年以上、その間何度も迷子になった編集者が言うのだから、たぶん、ほぼ、当たっている。

「ひと握りの編集者」ではない私はどうすればいい?
推しは、世界を広げてくれる。日々、企画を探している編集者にとって、世界は広ければ広いほどいい。もちろん、「好き」「得意」「どれだけ勉強しても苦にならない」なものをもともと持ち、ひとつひとつを本やページという形に仕上げていければ幸せだ。でも、そういう人は、ひと握りではないだろうか?

 私はそのひと握りではない。だから、30代になったとき、ちょっと編集の仕事に倦んでしまった。熱を注げるテーマがわからなくなった。読者に何を伝えたいのか、そもそも私自身が何を読みたいのか、わからなくなった。

だから、ほんとうに「好き」を見つける旅に出たのは30過ぎとけっこう遅い。

 自分の強みをようやく見つけた!?

いろんな視点のページを作れる総合雑誌に異動した。ときに芸能、ときに事件、ときに節約ネタ、ときにご近所トラブル・・・・と、テーマや切り口の異なるページをつくるほうが、自分に向いているのではないかと思ったのだ。

ところがフタを開ければ、編集部員はみな、ひと通りのテーマをこなせるのに加え、それぞれに強みがあった。ある人は政界、ある人は女性アナウンサー、ある人は美容全般、ある人はベンチャー起業の社長人脈、ある人は芸能界、というように。

ところが、私には何もない。グラビアページを任されたものの、芸能人の知り合いなどいないし、芸能事務所にツテもない。ネタを提供してくれそうな裏方スタッフとのコネもない。つまり、自力で企画を発信する方法がない!

 そこで始めたのは、「放送中の連ドラ、すべて観る」作戦だ。

 気づいたのだ。意外とみんな、テレビドラマを観ていない。NHK朝ドラと大河ドラマはさすがに目を通すが、民放でチェックするのはフジテレビの月9くらい。つまり、旬の芸能人を知っていても、彼や彼女がいつ、どの局の、どのドラマに出ていたかは詳しく知らない。そりゃそうだ、私と違い、みな自分の強みを生かせる世界線でひたすら走り回っているのだ。ドラマを観る時間なんてあるわけない。

 私には、ある。だから、すべて、観た。超強力な録画機能がついたレコーダーを買い、録画しまくった。入浴・歯磨きしながらも観られるように、ツインバードの防水ワイヤレスモニターも買った(2台使い倒した)。

「ドラマのことなら私がいちばん知っている」状態を作った。

そうすると、自然と「これから〝くる〟俳優」が見えてきた。終盤に流れるエンドロールを何度も一時停止しては、ヘアメイクや衣裳担当者の名前、撮影協力のクレジットを読み込んだ。

 「連ドラすべて観る」ができたのは推しのおかげ

単に「仕事に役立つから」だけで続けられたとは思わない。すべて観れば、いやでも「好き」が登場する。その人に関係するもの・こと、が知りたくなる。そして調べる。つまり「推し」の連続爆誕だ。あるときは役者、あるときは脚本家、あるときは監督、という具合に次々と現れてくれる。過去に手がけた作品も観たくなり、週末は新宿TSUTAYAに通い詰めた。

 当時はサブスクもなく、携帯電話もほぼガラケーで、比較的みんながテレビでドラマを観ていた。木村拓哉主演『ビューティフルライフ』(2000年、TBS)は最高視聴率41.3%、唐沢寿明主演『白い巨塔』(2003年~、フジ)は毎回20%を超えていた。しかもプライムタイムとしては珍しく2クール放送で、最終回翌週には特別版を含む総集編が放送された。

 だから、副編、編集長が「数字が取れるドラマの企画ならどんどんやれ!」と後押ししてくれる空気があった。ようやくつかんだ「強み」が発揮できる! スタジオ収録取材をはじめ、俳優インタビュー、ロケ地めぐり、ヘアメイクや衣裳の紹介、プロデューサー談話、名バイプレーヤー発掘・・・・・なんでもやった。

 仕事してるしてないにかかわらず豊かさをもたらしてくれる習慣

今なら、たいていの情報はスマホでGoogle先生に聞けば、教えてもらえる。今なら、「すべて観た」と胸を張れる私はいない。

ただ、その経験が編集者として役立ったのは事実だし、ドラマ・映画・舞台の魅力を教えてくれたのも事実。そこに身を委ねれば、体やメンタルの不調も一瞬曇る。そう、今も「すべて」は無理だけど、「観る」は大切な習慣だ。

そして「観続ける」先には、推しとの出会いが必ずある。今なら、『虎に翼』(2024年、NHK)きっかけで、三淵嘉子さん推しとなった人も多いだろう。

推しは、世界を広げてくれる。世界の広がりは、ニアイコール、編集者としての知識量の広がりだ。そこには価値の発見がある、発見が溜まれば洞察したくなる。これ、仕事をひっくるめて絶対人生を豊かにしてくれるに間違いない。

ちなみに、私の推しは、若葉竜也です。三瓶先生で射貫かれました。

文/マルチーズ竹下

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