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悩める30代女子へ。仕事と人生の暗黒面に落ちたらおすすめしたいあのこと。

「私の人生、しょうもなさすぎ。夫も子どももいない、仕事だって冴えない。このまま年を取っていくのが怖くて毎晩泣いてるんです」
30代後半の女性ライターから、告白された。いや、吐露された。

 それほど親しい間柄ではない。仕事したのも、2回くらいだ。それがいきなり「お茶しませんか」とお誘いが。お茶は大好きだし場所も神保町でOKとのことなので、久しぶりに『さぼうる』にしようかなあ三省堂本丸2階の『コンフォート』もいいな、と気分が跳ねたが、約束の日が近づくにつれ、不安が頭をもたげる。仕事の相談かな? もしかしてクレーム? 誰か有力な人を紹介して欲しいとかだったらめんどくさいな・・・・とだんだんトーンダウン。ところが予想は外れ、冒頭の告白。驚いた。
 そのままを書くわけにはいかないので、彼女の人物像も話の内容も、アレンジしてお話ししたい。彼女は大卒後、編集プロダクションに入社。5年後、フリーランスのライター兼編集者に。私との出会いは2年前、Web記事を書ける人として知人に紹介された。たまたま取材の帰り道のおしゃべりでその日が彼女の誕生日とわかり、スタバのソイラテをごちそうした。35才になったこと、東京に来て8年経ったこと、離婚してからは恋の仕方を忘れて久しいこと(←彼女の言葉です一応)・・・・といった話を聞いたと思う。

 こんにちは、マルチーズ竹下と申します。東京の出版社で、書籍編集をしております。ときどき、シュッパン前夜の活動の一環でnoteに投稿していますが、自ら発信するタイプの編集者に居がちな「ベストセラーたくさんつくりました」派でも、「SNSフォロワーたくさんいます」派でもありません。雑誌編集者時代は、半径5メートルで見えてくる違和感を追いかけ、書籍編集部に移ってからは、「昨日より今日、少しでいいから、読者を幸せにするor人生に役立つ」実用書や啓発本を出版したい思いで、けっこう長く編集者を続けてきました。まあそんな、本の街神保町に、粘り強く生存しているタイプです。

 冒頭に戻ります。
「ひととおり取材が終わると、なんとなく雑談タイムになりますよね。その日は取材テーマが子育てだったので、取材対象者はてっきり私がママだと思ったらしいんです。いや違います、独身です、ちなみにバツイチですって言ったら『あ、すみません、悪いこと聞いて』ってやたら恐縮されて。そういや離婚前の本物の独身のとき(←彼女の言葉です一応)も『独身です婚活中です』って言ったら『あ、そうなんですねすみません・・・・』って謝られたこと思い出して。独身なのも子どもいないのもべつに悪いことじゃないのに謝られて、私そんなに謝られなきゃいけない人生おくってるんですかね?」――的なトークが爆裂。
 いつもヒトコトいつも多いな・・・・いやそれより、なぜにそんな個人的な話を私に?? と面食らったが、なんとなく答えは分かっていた。
 同じ出版業界にいるけれど、話すにはメールでスケジュール調整の必要な距離感。共通の知人はふたり程度。ひとまわり以上離れた年齢。つまり、どうやってもマウンティング合戦に発展しない相手。これがじつは、いちばん、ネガティブ感情を吐露しやすい相手なのだ。加えて、自分とほぼほぼ同じくらいの“パッとしない”属性とパーソナリティね。
 まあ実際そうだけども、なんだかなあトホホ・・・・と思いながら、しばらく聞き役に徹していた。話題は、仕事にも飛び火してゆく。そして今日の投稿の本題は、ここからだ。


「忙しいばっかりで、本当に自分が書きたい記事なのか、つくりたい本なのか、わからないんです。そろそろテーマを定めなきゃならない年齢なのに、目の前の仕事に忙殺されて落ちついて探す余裕がない。そうかと思うと急にポッと時間が空いちゃって、何をしていいかわからない。仕事ばかりしてると、趣味がなくなりませんか? 友だちは子育てで忙しく誘いにくし、そもそも子どもの話をされても私困るし・・・・」
 あああヤバい、彼女はダークサイドに腰まで浸かっている! そこでようやく、私も口を開く。
「ね、アマプラ会員だよね? プライムビデオ見てる? ネトフリ入ってる? これから毎日2時間、必ず観ること! 私がオススメ20選リスト送るから」
 いきなり死んだ目になる彼女との間に流れる微妙な空気に負けじと続ける。
「あ、いま、『そーゆーことじゃない』って思ったよね? でも何もアツくなれるものを見つけられない、ハマれない、動かされないときには映画やドラマのシャワーを浴びるの効くんだよ。世界中が大絶賛してる作品を腰を据えて観るんだよ。まんがでも地上波のテレビドラマでもいい。で、ツボにはまったらとことんスタッフクレジットをチェックして次の候補を探す。オワコンとか言わないで~」
 そんな時間、どこにあるのよ、と彼女の顔がみるみる険しくなる。
「歯を磨く、洗濯物をたたむ、湯船に浸かる。そんなときに手と同時に目も使って。私はツインバード工業の防水ワイヤレスモニターをお風呂でも使い倒していま3代目だよ。初代のには、韓国エンタメ沼の引き金になった『宮廷女官チャングムの誓い』でとてもお世話になった。この話は長くなるのでまた」
 そしてキラーワードを出す!
「ひろゆき、知ってるよね? あのひろゆきも言ってたよ! まんがを10時間ぶっ続けで読んだとき、『ああ、10時間も無駄にしてしまった』と思う人がいるが、自分は『10時間もエンタテインメント業界を勉強した』と思う、って。誰よりも映画鑑賞やゲームをやっている、だから手札をたくさん持っている、って。私もゼロからイチをつくり出せるタイプの編集者じゃないから、せめて誰かがつくった1を10に、10を維持しながら11、12に増やせる人になりたくて(※)、いい年したいまでも手札を増やし続けてるよ」
※ご存じ『1%の努力』(ひろゆき著/ダイヤモンド社)より。

 まあ、彼女が私に本質的なアドバイスを求めていたとは思いません。きっと、どうにも溜まった毒を、生身のだれかに吐き出したかっただけだと思います。でも、ひろゆきさんの言葉は、意外と響いたみたいで、後日、「何を見たらいいか、リストをください」とのメールが届きました。
 パッとしない初老女子、少しはお役に立てたのでしょうか。彼女よ、フォースとともにあれ。

文/マルチーズ竹下

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