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フリー編集者・元塚B

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塚Bの中央公論新社時代、そしてフリー編集者の元塚Bの記事です。
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夜逃げ、パニック障害、仕事ゼロ……どん底の作家が売れっ子として復活するまで

こんにちは、フリー編集の元塚Bです。 現在、累計120万部突破のハード・バイオレンスシリーズの最新刊『もぐら新章 昴星(ぼうせい)』が発売中の矢月秀作(やづき・しゅうさく)氏。 今回は、そんな矢月氏が売れっ子作家となるまでの波乱の日々をご紹介します。 (前回はこちら) 編集者時代から作家デビューまで 父親の事業の失敗から、東京のボロアパートへと逃げ込んだ矢月一家。 何の保証もないどん底の暮らしのなか、家族4人のうち最も若く、まだ10代だった矢月氏の妹は書店でアルバイトを始

オンライン読書会に参加してみた。

こんにちは、フリー編集者の元塚Bです。 厳しいニュースばかりが聞かれる出版業界。 そんな状況下、私たちにとってもっとも大切なお客様である「読者」の皆さんは、いったいどんな本を、どんな思いで楽しんでいるのでしょうか? 今回は、そんな読者の皆様と触れ合うべく、オンライン読書会に参加してみました。 zoomで集う、様々な面々私が参加したのは、ミゾノクチ読書会。 ネットで「読書会」と検索し、たまたま日時の都合がよかったので申し込みました。 参加は無料。 9月某日、日曜の昼すぎ。Zo

紙媒体を愛する気持ちは変わらない。若き編集者による、これからのシュッパン。

こんにちは、元塚Bです。 気づけば私も40代。 しかし、まるで日本の超高齢社会を象徴するかのように、周囲は、編集者も読者も、私より年上ばかり。 「若い人の意見が聞きたい!」 そんな渇望感から、フリーの編集者として活躍している、あかしゆかさんにお話を伺いました。 出版社に憧れて あかしさんは1992年生まれ、現在29歳の(もはや業界内では奇特な)若き編集者です。 出版業界との最初の接点は、大学時代。 たまたま通った本屋の貼り紙を見て、アルバイトを始めたことが入口となります。

絶版本がミリオンセラーに⁉

今回は、「絶版」になったにもかかわらず、その後奇跡の復活を果たし、ミリオンセラーになった小説をご紹介したいと思います。 絶版になった「もぐら」シリーズ矢月秀作(やづき・しゅうさく)著『もぐら』。 初版は1998年。 今はなき中央公論社(現・中央公論「新」社)より新書サイズで発売されました。 主人公・影野竜司(かげの・りゅうじ)が活躍する、バイオレンス・アクションものです。 2001年までに全6巻が刊行されましたが、「全く注目されることなく絶版」(当時の担当者談)となって

これって職業病!? 「むずむず脚症候群」と「カフェイン依存症」

皆さん、コーヒーは好きですか? こんにちは、塚Bです。 今回は、コーヒーを飲みすぎた私の経験談をご紹介します。 編集者とコーヒー編集部を見てみると、たいがいの人がコーヒーを片手に仕事をしています。 机には、缶コーヒー、セブンコーヒー、どこぞの大手チェーン店のコーヒーカップなどがずらりと並び、なかにはカフェイン量の多さを誇る飲料を飲んでいる者も。 私自身、朝起きたらまずコーヒーをドリップし、朝食時に飲み、さらには水筒に2・3杯分つめて会社へ持参。 水分補給は基本コーヒーで、休

おしり編集者

出版社の編集者というと、ずっとデスクで頭脳労働をしている――そんなイメージがあるかもしれない。 しかし、決してそんなことはない。 時には自らのおしりを突き出し、内臓をも披露しなくてはならない、過酷な世界である。 今回は私=塚Bが、ふんどし編集者につづき、体を張った取材について書きます。 (記事内に私の「体内写真」を掲載しています。苦手な方は閲覧ご注意ください) 「下痢対策」に特化した本を作る!現在製作中の本のテーマはずばり、「下痢対策」。 何しろ私はひどい下痢体質で、ほぼ一

パンツを脱いじゃう子どもたち

雑誌の編集部から書籍の編集部に異動して約1年半。 やっと、やっとわたくし、塚Bのオリジナル企画が刊行されましたー(涙)。 坂爪真吾さん著の中公新書ラクレ『パンツを脱いじゃう子どもたち―発達と放課後の性』です。 今回は、本書の企画立ち上がりから完成までのことをお話ししたいと思います。 (帯イラスト;沖田×華さん) 性風俗の専門家著者の坂爪真吾さんは、いわば「性風俗」の専門家。 重度身体障害者に対する射精介助サービスや、風俗店で働く女性のための無料生活・法律相談事業に取り組んで

嗤(わら)う編集者

「大変すばらしいお原稿ですね」 編集者がそういいながら、上記のような表情を浮かべていたら、要注意。 片側の口角が上がっていますね。 これは、相手を「軽蔑」しているときに浮かぶ表情です。 つまりこの編集者は、言葉とは裏腹に、原稿の執筆者を見下している。 きっとその原稿はボツになるでしょう。 今回は、わたくし塚Bが現在取り組んでいる企画、「表情分析」についてご紹介します。 「表情分析」とは?皆さんは、「表情分析」というものをご存知ですか? 例えば、こちらの表情。 さて、どんな表

体コチコチの編集者と、赤ちゃんと。

こんにちは、塚Bです。 以前、こちらのnoteで下痢の対策本を製作していることに触れました。 今回は、その続き。 先日行った、撮影について書きたいと思います。 日本のウォール街に、baby来る実は前回の取材時、著者である小野咲(おの・さき)さんのお腹には、赤ちゃんがいました。 その後、無事に元気な男の子が誕生。 今回の撮影は、生後数か月の赤ちゃんと一緒にいらっしゃいました。 撮影は大手町にある弊社オフィスにて。 新聞社や経団連、大手銀行などの高層ビルが立ち並ぶ殺風景なオフィ

ローカルチェーンの書店とともに歩む。フリーランス書店員……って?

こんにちは、塚Bです。 前回、小石川にあるPebbles Booksをご紹介しました。 その仕掛け人が、フリーランス書店員の久禮(くれ)亮太さんでした。 しかし、書店員でありながら、「フリーランス」とは、いったいどういうことなのでしょうか? 今回は、そんなフリーランス書店員・久禮さんのお仕事をご紹介したいと思います。 チェーン店から独立 久禮さんは、大学在学中にあゆみBooks早稲田店でアルバイトを始めたことから、書店員としてのキャリアをスタートします。 その後、三省堂書

本屋大賞を獲った編集者の熱意

こんには、塚Bです。 今年の本屋大賞は、逢坂冬馬さんの『同志少女よ、敵を撃て』が受賞しましたね。 思い出すのは昨年、町田その子さんの『52ヘルツのクジラたち』が受賞した時の弊社の賑わい。 今回は中央公論新社で初となる本屋大賞受賞作を生んだ編集者であり、塚Bの同僚でもある山本美里と酒を交わしながら、話を聞いてきました。 出会いは本屋から 『52ヘルツのクジラたち』の著者、町田その子さんは2016年、新潮社が主催する「女による女のためのR-18文学賞」を受賞し作家デビューしま

下町に生まれたシェア書店 西日暮里BOOK APARTMENT

こんにちは、塚Bです。 JR西日暮里(にしにっぽり)駅の改札を出ると、飲食店などと隣接したスペースに本棚があります。 これは、ひと棚ごとに違う「棚主」が本を出品しているブックアパート。 今回は、そんな「西日暮里BOOK APARTMENT」をご紹介したいと思います。 改札を抜けると、そこは本屋であった「西日暮里BOOK APARTMENT」は2019年12月、東京都荒川区にオープンしました。 31㎝四方の棚が80スペースあり、それぞれに別の「棚主」が本を出品する、シェア本屋

楽天ブックス、本屋大賞、そして『ダ・ヴィンチ・コード』。出版界の一大イベントに立ち会って

こんにちは、元塚Bです。 (塚Bは中央公論新社を退職し、フリー編集者の元塚Bとなりました) 今回は、ネット書店や本屋大賞の立ち上げなど、業界の歴史に残る様々な一大イベントに立ち会ってきた、古幡瑞穂(ふるはた・みずほ)さんにお話を伺いました。 日販から楽天へ出向 古幡さんは大学卒業後、日本出版販売(通称、日販・ニッパン)に入社。 日販とは、出版社と、全国の書店とを結ぶ出版取次の最大手です。 古幡さんは、紀伊國屋書店新宿南店の営業を担当することとなり、そこで出版業界の基本を覚え