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月刊 編プロのケーハク

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シュッパン前夜メンバー、編プロのケーハクの記事まとめ。出版界のあるある、新人ライター&編集者向けのスキル解説、出版界の問題や課題について。
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#出版社

新人ライターや編集者に教えている「その企画の根本に熱量はあるか?」

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 先日、私の数少ない友人に、とある映画プロデューサーがいるのですが、彼と久々に飲みに行きました。 「最近の映画市場ってどうなの? 配信の影響とか受けてない?」と聞いたところ、それほど変化はないとのこと。 映画というのは、いつの時代も若者が友達に会うきっかけだったり、デートに誘うきっかけだったりするので、変わらず若者が劇場に足を運んでいるのだとか。 なるほど、劇場に行くのは、映画のコンテンツだけがきっかけではないわけですね。出版人

後世に残したい出版編集の技術アーカイブ「ラフは原寸で描く!」

今宵、本の深みへ。 この度、独立してフリーになることになった、編プロのケーハクです。 おそらく、編プロ所属で書くのは今回で最後になるかと思いますが、今後も「ひとり編プロ」として出版編集業務は継続していく所存ですので、「編プロの」はそのまま据え置きということでお願いします(どうでもいいですよね?)。 さて、今回は「後世に残したい出版編集の技術」ということで、「ラフ」をテーマに解説していきたいと思います。 最近は、生成A Iが猛烈なスピードで発達してきて、すでに誌面のデザイ

編集者は本をつくるたびに洗脳されている!?

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 今回は、「編集者は自分がつくった本の影響を受けまくる」というお話をしたいと思います。 皆さんは、一冊の本がどれくらいの制作期間でつくられるのかご存じでしょうか? 書籍の制作期間は、数年かかるものもあれば、場合によっては2〜3ヵ月という非常に短いスパンで完成させるものもありますが、ざっくり平均すると半年くらいかかります。 一冊の本に付き合う期間はけっこう長く、その間、その本で扱うジャンルについてかなり研究することになりますし、著

原作をリメイクする場合に「改変」はどこまで許されるのか?

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 年明け最初の記事になりますが、年始からいろいろと暗いニュースが多くて、(多くの皆さんがそうだと思いますが)心が少し「しんどい」です。 年度末に向けた忙しさもあるのでしょうが、社会全体のネガティブな雰囲気に晒されつづけると、マインドがそっち方向に引きずられてしまって、なかなかよろしくないような気がします。 スポーツくらいですよ、明るいニュースは(前田穂南選手、本当にありがとう!)。 さて、漫画原作のドラマ化問題で、最悪の結果とな

出版業界が「改革前夜」っぽい雰囲気になり始めているような気がする件

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 なんとも歯切れの悪いタイトルですよね? 今回は、出版業界にまつわる“ポツラポツラ”とした最近の話題にふれ、なんとなく感じた「変革の雰囲気」について、極めて個人的かつ、正直な思いを綴りたいと思います(笑)。 無人書店「ほんたす」がオープン東京メトロと取次大手の日販、そしてディスプレイ業界大手の丹青社が組んで、溜池山王駅に9月にオープンした無人書店。 冷凍餃子とかの無人店舗はよく見かけますが、ついに無人の書店が登場。店舗面積は約1

発信者目線で「面白いだろう」と捻り出した本は売れず、こんな本が「必要だよね?」とユーザー目線でふんわり生まれた本ほど売れる問題

今宵、本の深みへ。 編プロのケーハクです。 主に実用のジャンルですが、これまでたくさんの本を企画したり、つくったりしてきました。 出版社からのオーダーを受け、企画立案から制作までマルっと一式請け負うわけですが、最近は「とにかくヒットする本をよろしく!」的な恐るべき依頼が増えてきました……。 特にはじめて取引をする出版社の場合は期待が大いに膨らんでいるようで、「すでに成功する気満々」で依頼してくることがほとんど。 こちらも継続的な受注がかかっているため、失敗が許されない

新人ライターや編集者に教えている「文章は“リズムと通り”で読みやすく」

今宵、本の深みへ。 編プロのケーハクです。 先日、とある大物の某先生が、某通信社との修正のやりとりで交渉決裂したという文章を、SNS上に公開するといった出来事がありました。 なにやら担当編集が「体言止めが美しい」という理由で、20ヶ所以上の赤字を入れてきたことが原因なのだとか。 「なるほど」 この展開からすると、完全に編集者が悪者になる感じだな〜と思っていたら、やはり「直す箇所がない!」といった執筆者擁護の反応がほとんどを占めていました。 そもそも、寄稿文なのだから

出版社の「冒険しない」問題

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 今回は、本の顔「カバーデザイン」の話です。シュッパン前夜chでも、ブックデザイナーの鈴木大輔さんをゲストに、いろいろと意見を交わしたのですが、その中で意気投合した話題が「出版社は冒険を避けがち」ということでした。 私のような編プロの編集者や、デザイナーさんは、提案するけれど、決定権がありません。カバーデザインは、最終的に出版社の意向で決まっていくのが普通です。 で、我々のような作り手側としては、ライバルである類書に勝ちたいし、面

新人ライターや編集者に教えている「文章は書き出しが5割」

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 本当は8割とか9割とか言えたほうがキャッチーなのでしょうが、重要さの割合で言えばリアルに配分を考えてこの(5割)くらいかなと……(笑)。 というわけで今回は、文章を書くうえでの「書き出しの重要性」について考えてみたいと思います。 文章の構造は「ファンタジー」と同じ!文章の基本形といえば、「起承転結」です。今さらながらこの基本形を一般的な解釈で説明すると…… 「起」話の背景、事前情報の提示 「承」本題の導入 「転」起承を受け

出版社の「自社本を分析しない」問題

今宵、本の深みへ。 編プロのケーハクです。 今回は賛否があるかもしれないと、少しビビりながらも勇気を出して思ったことを書きます(笑)。 先日、前夜メンバーたちとこのようなテーマを話し合いました。 「売れる本と売れない本」の違いとは?まあ、経験則での話になるので、こうじゃないかという個人的な仮説を述べつつ、実際にうまくいかないことのほうが多いという事実に打ちひしがれ、どんどん声量を失っていくざんねんな展開に……(笑)。 結局のところ、企画に対する熱量を込め、あとは時の運

画期的な「売れるフォーマット」を発明したスゴい本

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 今回は、編集者である私自身が本当にスゴいと感服した本をいくつか紹介したいと思います。 作り手の視点で見ちゃいます本の評価って個人差があって難しいですよね? 普通に読者として評価する場合は、書かれている内容とか、レイアウトの見やすさとか、実際に本を受け取った側が感じとる「届けられたもの」に対しての評価だと思います。 今回、私が紹介するのは、こうした読者側の視点ではなく、作り手側の視点から見た場合に「これはスゲ〜」と思った本。どち

新人ライターや編集者に教えている「わかりやすい文章は“雑踏”でも読める!」

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 最近、わけあって大学受験レベルの現代文の試験問題を解いたりしてます。 これでもベテラン編集者ですから、文章のプロですから、読むのも書くのも膨大な量ですから、当然、勉強せずとも100点でしょうと……。 80点(泣)。 結構、間違えてしまうんですよ。皆さんも思い出してみてください。評論文とか随筆とかが例題にあって、これらの意図するところはなにか? みたいな問題。 ゲラ読みのようにかなり意図を読み込んで、「これが正解でしょ!」と自

美容・健康書でおなじみのビフォア&アフター表現をやめたい話

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 ああ、もうやめたい……ビフォア&アフター。 そうです。ダイエット商品や、健康・美容書でよくある「こんなに変わりました!」っていう比較表現のこと。 ダイエット本などは、かなりの高確率でやらされます。そう、文字通りやらされるんです(笑)。私は毎回、反対してるので……一応。 美容・健康書の場合、ビフォア&アフターは、出版社のオーダーでやることがほとんど。制作サイドから「やらせてくだい!」っていうことはほぼない、と思いますけど……(あ

編集者は本のアンチレビューに傷ついている

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 本がある程度売れてくると、「アンチレビューが増える」のは仕方のないことなのかもしれません。気にするものではないとわかってはおりますが、作り手としてはやはりそういうのを見ると傷ついてしまいます。 批判的な感想であっても真っ当な意見なら「なるほど、次に活かそう」と、しっかり参考にさせていただいておりますし、むしろ感謝しております。 しかし! ただただマウントを取りたがっているような方々の発言には、いけないことだとはわかっておりますが