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地域のアートプロジェクトと教育との連携「スチューデントリポーター」活動の可能性

「美術と街巡り・浦和 2019」は浦和の街中に主に地元ゆかりの作家の作品を展示し、街巡りとアートの両方を楽しんでもらう企画です。

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その企画の中で、今回、「スチューデントリポーター」活動を務めました。

 
「スチューデントリポーター」とは、さいたま市の中学校・大学に通う学生さん(合計11名)が、「美術と街巡り・浦和」で展示されている作品を独自の視点で読み解き、その作品を多くの方に伝えようとする活動です。

この企画では、地域アートプロジェクトと学校現場が連携し、実施する上で様々な課題もある中、プログラムを通して、双方向に可能性を感じられた事業となりました。


今回の事業は、

1:事前講座:2019.2/2

2:取材日:2019.3/9

3:記事制作

4:報告発表:2019.3/10

という4つのプログラムの構成で行われました。


まず、1の「事前講座」は、2019.2/2に行われ、新聞記者の方から記事の書き方、加えて、私が講師となり、写真の撮り方をレクチャーし、伝わる記事、写真の撮り方を共有しました。

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レクチャーを受けた後、実際に作品の写真を撮影する生徒たち


次に、2の「取材日」は、2019.3/9の「ガイドツアー」に参加して、作品と街を巡りました。在廊している作家さんに、制作の意図や思いを質問し、積極的に交流をすることで記事のためのネタを集めていきます。

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作家さんに質問する様子。様々な作品の見方が生まれます。

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その後、3の「記事制作」では、学校に戻り、国語科の先生に書いた記事を添削してもらうなどし、自分のテキストを推敲していきます。

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最後に、4の「報告発表」は、2019.3/10に開催された「市民リポーター発表会」で自分の記事を発表しました。

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自分で撮影した写真をスライドで公開しながら、作品の見どころや作品から感じた事、考えた事、作家さんとの交流、街に美術がある事など、自分自身の言葉で語る姿に多くの反響がありました。

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さらに、作家さん本人からも、自分では気づかなかった作品の見方に気づけたと驚きと喜びの声が聞かれました。


こうした取り組みを継続する事で、様々な世代の人や考え方を持っている人が交流し、意見を交換する場が生まれ、アートや地域への理解が深まる一助になると感じました。また、地域やアートの関係者も、教育活動について共に考える機会となればより良い連携が生まれます。学校での学びだけでなく、このような地域で自分の考えや思いを表現し、伝える経験を経た生徒たちが、文化芸術活動へ興味・関心を持つ機会となるなら、地域のアートプロジェクトにも、教育活動にも有意義であると考えます。

教育現場との連携での課題は、実施しているアートプロジェクトの目的と教育の目的の違いをどのように捉え、意識し、両者を結びつける活動に落とし込むか鍵となり、そのズレが大きいと両者にとって残念な企画となってしまうことにあります。

有意義な活動の為には、アートプロジェクトの主体と教育現場の先生との十分な対話が必要です。地域で実施されるアートプロジェクトは、教育の現場にとっても大きな価値を見出せる点はたくさんあります。その点を丁寧に掬い上げて、両者にとって良い実践をつくれれば、とても意義のある活動になります。

そうした長い目で共に豊かな文化をつくっていく第一歩を共有することがとても大事だと考え、今後も継続し活動をつなげていきたいと考えています。

参加していただいた生徒の皆さん、作家の皆さまをはじめ、学校関係者の皆さん、プロジェクトの運営の皆さんに心より深く御礼申し上げます。


スチューデントリポーターコーディネート担当:
浅見俊哉(美術家・さいたま国際芸術祭2020市民プロジェクトコーディネーター)


⚫︎写真作家・造形ワークショップデザイナー ・キュレーター・「時間」と「記憶」をテーマに制作。2012年〜ヒロシマの被爆樹木をフォトグラムで作品制作 ●中之条ビエンナーレ2019参加アーティスト ●さいたま国際芸術祭2020 市民プロジェクトコーディネーター