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海外就職・外資で働くのための『完璧を目指さない1日15分英会話練習法』

筆者は十数年ほど英語圏(🇯🇵東京→🇸🇬シンガポール→🇺🇸アメリカ西海岸)で、ソフトウェア・エンジニアとして転職をしながら日本語を使わない環境で働いてきて、現在は早期引退・サバティカル中です。この記事では筆者が最初に海外転職の準備のために実際に使った、短期間で通じる英語を喋られるようになるための「再現可能な練習方法」を紹介してみました。

日本語と英語では口の動かし方や舌の使い方、イントネーションの置き方などが全く異なります。周りを見ていると、この点への無理解が予想以上に悪影響をあたえていると長年感じています。

過去に米系企業の🇯🇵東京オフィスの優秀な同僚たちを見て、英語の読み書きはできるのに、英語のプレゼンテーションやミーティングになるとしどろもどろになって、その方の能力や魅力が他の人に正しく伝わらないという事例を多数経験しました。見せ方、伝え方も含めて、その人の能力と言えるかもしれませんが、でもその人の本質が評価されないのはとても勿体無いですよね。

この記事では以下のような方々を想定して、正しい発音技術の理解と反復的な音読を中心にした、英語をスムーズに喋る技術の習得方法を解説しています:

  • 日本で働いるけど、いつかアメリカなど英語圏の外国で働いてみたい。

  • 外資系企業の日本オフィスで働いているけど、英語のミーティングがつらいので、伝わりやすい英語をなるべくスムーズに話せるようになりたい

ゴールと正しい期待値の設定

英会話を練習し始める際、ネイティブスピーカーのようにペラペラ喋れるようになりたいと考える人が多いと思います。高い目標を設定するのは良いことなのですが、たとえ留学や英会話学校などを利用しても、片手間の学習でネイティブスピーカーとの差を埋めていくのは現実的ではありません(し、海外就職というゴールにはあまり重要ではないと考えています)

我々の目的はあくまでも「英語圏で自分の専門分野を活かして働く」ことです。まずは練習を始める前にネイティブスピーカ並みに完璧に喋りたいという意識を捨てた方が、ゴールの達成(海外就職など)がしやすいです。

筆者が取り組んだ際は、最短で海外に転職・移住することがゴールだったので、まずは数ヶ月で(かろうじて)面接に通るレベルの英会話技術の習得を目指しました。当時想定していたタイムラインは以下のような感じでしょうか:

実際には真剣に準備を始めてから仕事を見つけて🇸🇬シンガポールに移住するまで半年ほどかかりましたし、そこから十年以上英語のみの環境で仕事をしてきても、流暢に喋れるようになったという実感はありません。ただ🇺🇸米国への移住や憧れていた大手テック企業への転職など、当時想定していたマイルストーンはなんとか達成できているので、ゴールを設定してそこから逆算して必要なステップを計算していくのはとても重要だと思います。

『システマティック』に『アウトプット』の練習する

章のタイトルに横文字使いすぎですね。でも短期間で英語の会話技術を身につけるために、この「システマティック」にという点と、「アウトプット」に注力するというアプローチはとても大事だと思っています。

この記事で紹介する練習法では、まず一週間程かけて、発音の参考書をベースに、集中的に英語特有の発音技術を身につけます。英語らしい発音を自分の口を使って再生できるよう、発音記号の読み方やイントネーションの置き方などの技術を理解することを目指します。筋トレに例えると、正しいフォームを身につけるイメージですね。

その次に二、三ヶ月ほどかけて、簡単な英会話のテキストを繰り返し音読していきます。この際、まるで実際に会話をする声量で、きちんと発音記号にそって単語のアクセントや「R/L」、「th」の発音などを丁寧に音読します。ゴールはシンプルな英会話のパターンを、自然に口と舌を動かして再生できることを目指します。

練習方法を図にまとめると以下のようなイメージでしょうか。モバイルデバイスでは見にくいかもしれません。

システマティックな取り組み方の一例

具体的なステップは以後のセクションで詳しく紹介していきますが、取り組むにあたって英文や英単語を「勉強」して「暗記」をするというよりも、歌の練習のように反復トレーニングを通じて上達してくという意識が大切です。繰り返しになりますが、頭の中に英文の組み合わせを徐々に脳みそに浸透させて行って、日々の音読を通じて 「脳みその中の英文を、口を使って正確かつスムーズに再生する」回路を形成することを目指します。

ステップ❶参考書を一読して『発音記号』を理解する(〜1週間)

なぜ発音への投資を先にするのか

我々が英語で自分の考えを話す際、(1)頭の中にある英語の短文の組み合わせを、(2)口と舌を動かして発声するというステップを経ると思います。

この際に、(1)については短い会話のパターンをたくさん頭に入れておけば、それらを組み合わせて自分の考えを説明できるようになります。この部分は反復練習を通じて短い会話のパターンを組み合わせを増やすことで、機械的に会話の解像度をあげることができます。

これに対し(2)の発音・発声については、筋トレの一種と考えた方がいいと思っていて、スムーズに頭の中で考えた通りの英語を口に出して喋るためには、歌の練習と同じように、英語特有の発声方法(舌や唇の動かし方や、アクセントの置き方)を反復練習を通じて脳に定着させる必要があります。

そこで本格的に反復練習を始める前に、まずは正しく正確に発音する技術を理解するというステップをとるわけです。このステップは参考書を読んでいきますが、英語の発音を「勉強」して「暗記」するのではなく、筋トレと同様、正しいフォームを身につけるために「練習」するという意識で取り組むと良いでしょう。

具体的な練習方法

薄めの発音に関する参考書などを入手して、一週間ほどかけて一読してみましょう。使う参考書は「発音記号(Phonetic Symbol)の発声方法(舌と唇の動かし方など)」と、単語の「音節(Syllabul)」と「アクセント」(テキストによってはストレスと呼ばれたりします)」のルールや、「イントネーション」の発声方法などが丁寧にカバーされていればなんでも良いと思います。あまり分厚いものは途中で飽きるので、薄くても良いので読みやすいものを書店などで見つけてください。

今は英語の発音に関するビデオなどがYouTubeに大量にあるので、それらを活用してみるのも良いかもしれません。

このステップで大切なのは発音記号の組み合わせをきちんと自分の口と舌を使って再現できるようになることです。当然ですが英語は日本語と発声方法が異なるので、ここできちんと筋肉の使い方を理解しておくと、次のステップで反復練習をする際の効果を最大化することができます。

また音節ごとのアクセントの置き方や文のイントネーションなどのルールも頭に入れておきます。単語ごとのアクセントをきちんとしゃべり分けれるようになると、グッと英語らしい発音になって驚かれると思います。

あと個人的な経験では個人的には日本語の話者として注意するポイントは「RとLの喋りわけ(舌の動かし方が違う)」と「thの発音(舌を歯に当てながら濁らす)」 だと思っていて、ここがちゃんと発声できるとかなり英語らしい喋り方になる印象です。

例えば「right(/rʌɪt/)」を発音する時に、唇を広げつつ口の中で舌を後ろに曲げながら発音します。それに対して「left(/lɛft/)」は舌を前に動かしながら発音していますね。

単語の読み方がわからない場合はGoogleで「How to pronounce right」のように知りたい単語を検索すると下のようなダイアログが出てきます。

Rightの発音

もう一点注意を払いたいのが英語特有の抑揚で、英語のスピーチなどをみると良く分かりますが、英語のネイティブスピーカーは日本語と比べて口を大きく動かしてハキハキとしゃべる印象があります。

日本語はどちらかというと口をあまり動かさず平坦に喋りがちですが、はっきりと単語のアクセント(音節の強く発音する部分)や単語のつながりを注意して喋ると、それだけで通じるようになるのでお勧めです。

ここでも完璧に発音を理解することにこだわらず、英語の発音記号の読み方(舌の動かし方など)やアクセントのルールががある程度身に付いたら、次のステップに進んでしまいましょう。完璧を目指すのは時間の無駄です。

ステップ❷情報カードを使って音読の反復練習/会話のパターンを増やしていく(〜3ヶ月)

使用するテキストとカードのイメージ

なぜ簡単な英会話文の反復練習をするのか

発音記号を読んで英語の発音を再現できるようになったら、次は比較的シンプルな会話文を繰り返し音読して、会話のパーツが自然に口からでてくるように練習していきます。

難しい言い回しを知らなくても、シンプルな会話のパターンの組み合わせがスムーズに口から出力できるようになると、自分の言いたいことを解像度が低いなりにきちんと説明するできるようになります。簡単な英語を絵筆に例えると、一発で線は決まらないけど、繰り返しストロークして絵を描けるようにはなるというイメージです。

英語を「勉強」していると、どうしても「暗記」が中心になってしまいます。留学の準備などではとても大切なんですが、われわれのゴールは頭に入っている英語を、口からスムーズに再生できるようになることです。

この口から出てくるという点が重要で、頭にいくら英文がインストールされていても、それを口を動かして発声する「練習」をしておかないとスムーズに会話をすることができません。なのでこのステップでは目で読むのではなく、実際に口と舌を動かして簡単な英文を繰り返し音読します。

英会話は勉強するのではなく、練習するものだという意識はとても大切です。

簡単な英文だけを練習していると、幼稚な英語しか喋れないんじゃないかという懸念があるかもしれません。まあその通りなんですが、ここでのゴールはあくまでも、自分の専門分野を活かして海外へ就職するための最初のステップを身につけることなので、まずは日常的に使える会話のパターンを脳みそに定着させる練習に集中します。それぞれの職場、業界特有の言い回しや、いわゆる「ビジネス英語」などの応用は実務を通じて意識的に身につけていけばいいという考えです。

たとえば我々エンジニアにとって、英語は仕事をするためのツールの一つでしかありません。要は相手の考えが理解できて、自分の意見が伝えられれば良いわけです。繰り返しになりますが完璧を目指さず気楽に取り組む姿勢が大切です。

準備するもの

この記事で使用する資料を紹介します。リンクにアフィリエイトなどは貼っていませんので参考にしてください。

英会話のテキスト
NHKの「ラジオ英会話」が難易度的にも会話のボリューム的にもお勧めです。このテキストの会話部分を繰り返し音読して練習していきます。より難易度の高い「NHKビジネス英語」などのテキストもありますが、内容的にも量的にも反復練習には適していません。

発音の確認のためにオンラインやラジオで実際の放送を聞くと、ネイティブの発音を参考にできます。もちろんGoogleやSiriの音読機能に読ませるだけでも違うと思います。

情報カード(A6のもの)
テキストから会話部分を切り取ってカードに貼り付けるために、A6サイズの情報カードを使います。1日分の会話がカードに貼ってあると、読めない単語の発音記号や意味などをメモったり、練習した回数を管理できて便利です。筆者が練習した当時はいわゆる京大式カードのサイズに収まっていましたが、最近のテキストを確認したら印刷が大きくなっていたので、A6サイズのものを紹介しています。

具体的な練習方法

NHKのラジオ英会話のテキストは、基本的には月曜日から木曜日まで10行程度の会話文が載っています。なのでこの4つを練習の単位として組んでいきます。

月曜日〜木曜日:カードを追加して音読練習
その日の会話分をテキストから切り取って、新しい情報カードに貼り付けます。日付や練習した回数を書き込うので、上に1.5センチほど余白を開けて貼りましょう。また知らない単語や読み方があやふやな単語があったら、この時にきちんと調べて単語の上にメモしておきます。最初のうちは文章のイントネーション(疑問文は文末にかけてあげて行く)なども書き込んでおくと、音読する時に参考になります。

カードのイメージ

次にその日のカードを、ゆっくりと丁寧に発音記号に沿って単語を発音しながら五回続けて音読します。アクセントやイントネーションに注意を払いながら、目の前に人がいるつもりで会話をする声量で練習することがとても大切です。その日のカードを五回読んだら回数をメモしておきます。

次に前日のカード(月曜日だったら前週の木曜日のカード)を取り出して、同じように五回読みます。そして時間があったらその前の日のカード(火曜日だったら月曜日など)をトータルで四枚読むことを目標に練習します。個人的には朝に15分から30分ほど時間をとって練習していました。

金曜日:一週間分のカードをまとめて音読
金曜日は復習を兼ねてその週のカードを、同様に繰り返し音読します。月曜日のカードなどは二十回ほど読まれているのでだいぶ滑らかに音読できるようになっているんじゃないでしょうか。

土曜日・日曜日:シャッフルして記憶をリフレッシュ
土日はカードをシャッフルして、古いカードなどを音読して記憶をリフレッシュします。読んだ回数をカードにメモしておくと達成感があってお勧めです。

💡音読練習の際は以下の点に注意しましょう

  • 意識的にゆっくりと口と舌を大袈裟に動かしながら音読する

  • 発音記号にそって単語のアクセントやイントネーションをきちんと読み分ける

  • 言葉がスムーズに出てこない場合に、「あー」とか「うー」という音で単語と単語の間を繋げない(フィラーといって聞き手にあまり良い印象を与えません。癖になるので意識的に黙っておく練習をすると良いです)

  • 具体的な場面をイメージしながら会話をする声量で音読する

この練習の目的は単に会話を覚えるのではなく、頭に入っている会話のパターンを口からスムーズに出力できるようにすることです。なので普段の会話の声量で、唇と舌をきちんと動かして発声することが大切です。家で声をしずらい場合などはカードを持ち歩いてお昼にミーティングルームを取るなど、空いている時間を見つけて練習すると良いかもしれません。

この練習を2〜3ヶ月ほど続けると、英語をスムーズに再生する技術が身につくはずです。

ステップ❸ 語彙力の強化と実践練習

現実的に反復練習だけでは足りないので、2ヶ月目くらいから語彙の強化や日常的に英語に触れる機会を増やして行きます。

英単語の参考書を流し読む
色々な英単語についての参考書が売っているので、買ってきてさらさらっと何回か読んでみます。なるべく例文が載っている単語帳を選びます。ここでは単語の日本語訳を覚えるというよりも、単語の存在や発音方法を知っておくというイメージでざーっと読めば良いと思います。

英文法をおさらいする
簡単な英語の文法に関するテキストを一読して、英文法の理解をリフレッシュすると、会話の際により正確な文を出力できるようになっておすすめです。English Grammar in Use という本が定番でしょうか。日本語の薄い参考書などでも良いと思います。

PC/携帯を英語モードに変更
スマートフォンやPCのデフォルトの言語を英語に設定しておくと、日常的に英語に触れられてお勧めです。これは意外と馬鹿にできない効果があって、例えばブラウザのデフォルトのロケールが英語に変わると、検索結果も英語のものが中心になるので自然と英語に慣れていきます。

英語のドキュメント類を意識的に読んで、英語で読むことに慣れておく
前の項目とも共通しますが、検索などをする際に日本語ではなくて英語のキーワードで検索すると、特に技術的な内容は原典が出てきて便利です。英語で仕事をし始めると、ドキュメント類などもいちいち日本語に訳して読んでいると時間が足りないので、少しずつ英語のドキュメントをそのまま読む練習をしておくと良いでしょう。

右クリックして意味を確認

英語で読めないという場合は、翻訳ツールを使ってもよいのですが、OSの辞書機能などを使って単語の意味を確認しながら、英語のまま読んでいくとそのうちいちいち日本語に変換しなくても、原文のまま理解できるようになっていくはずです。

ミーティングノートなどを英語で取りはじめてみる
これは仕事を始めてからでもよいのですが、英語のミーティング中などに英語でメモをとるよう意識づけると、頭の中の英語→日本語→英語のラウンドトリップを減らせて効率的です。最初は難しいですが意識的にやってみると、そのうち慣れてきてスムーズにメモが取れるようになるはずです。

英会話学校や英語の模擬面接について
個人的には利用しませんでした(*)が、英語のネイティブ・スピーカーとの練習を取り入れる場合は、会話のパターンがスムーズに話せるようになってから、発音の確認や修正のために利用すると費用対効果の面で良いと思います。またピンポイントで「Accent Reduction」(発音矯正)のクラスを取ってみたり、英語の模擬面接などのサービスを受けてみるというのも面白いですね。

(*)むしろ英語圏で仕事を始めれば、給料を貰いながら実践的な英会話が身につけられてお得くらいに考えていました。。。

あとがき

英会話の練習方法について紹介してきました。発音やアクセントについてはいろいろな意見があると思います。ネイティブじゃないんだから英語の発音が拙くても聞く方が合わせればいい、というのも一つの考え方だと思います。ただ一番重要なのは、実は誰もあなたのいうことを聞く必要はないということ。就職面接のように相手に対して何かを売り込むという場面では、(商品としての)自分の実力が正しく伝えるよう努力するというのはとても大切だと考えています。

最後に、エンジニアとして転職する場合、あくまでも主となるのはエンジニアとしての能力だという点を忘れないようにしましょう。英語はあくまでもそれを伝えるためのツールの一つでしかありません。ある程度技術が身に付いたら、英語にこだわりすぎて足踏みするよりも、どんどん面接を受けるなり実践のステップに進んだ方がゴールを達成しやすいと思います。

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