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私とマリノス#1

試合終了のホイッスルが鳴る。ピッチの上に崩れ落ちる背番号25。テレビカメラに抜かれたその背中を今でも鮮明に覚えている。

出会いの天皇杯

横浜F・マリノスが優勝を逃した2013シーズン、その年の天皇杯決勝の舞台に僕はいた。改修前最後の国立競技場。偶然チケットが当たったのだ。マリノス側で。

それまでマリノスは好きでも嫌いでも無かった。当時のスター選手であるボンバーこと中澤佑二選手や中村俊輔選手は知ってるしまぁ好きくらい。
ただテレビで崩れさる中村俊輔の衝撃的な姿は、強く印象に残っていた。

天皇杯決勝・最後の国立ともなれば席はなかなか空いていない。父親が名前を呼びながら空きを探していると、声をかけられた。 

「ぼうず、シュンスケっていうのか? こっちの席座るか?」

すでに出来上がったおっちゃんである。
青いトリコロールのユニフォームと酔いの回った顔の赤さのコントラストが鮮やかだった。

「今日やってくれないと!頼むからな!お前のせいにするぞ、ガッハッハ!」

どうやらマリノスのエースと名前が同じで気に入ってくれたらしい。その酔っ払いハイ満面スマイルとは対照的に、苦笑いしてた。

試合が始まった。正直内容はあまり覚えていない。記憶にあるのは熱気。マリノスサポーターが一体となって、鮮やかなトリコロールの波を、チャントの波をピッチの戦士たちに届けていた。自分も自然と声を出し、引き込まれていた。
当時1試合集中して見る忍耐強さは持ち合わせてない。はずだった。

ゴールが決まった。

ウウウォォォォォォォォォォォォォ!!!!

会場が沸く、鳴る、そして全身に響き渡る。
腹の奥底から熱い叫びがこみだしてきて、血が逆流するのを感じる。
気づけば周りの人と立ち上がってハイタッチだの抱き合うだの訳の分からない興奮の渦中にいた。

やがて試合終了のホイッスルが鳴る。ピッチに崩れ落ちるトリコロールの戦士たち。喜びを全身で爆発させるトリコロールのサポーターたち。

優勝である。

この日から、僕はマリノスサポーターになった。

これが横浜F・マリノスとの出会いであり、身体に流れる血の色が「深い青と曇りのない白と鮮やかな赤」に変わった日である。


p.s. あの時のおっちゃん、席入れてくれてありがとうございます

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