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学位のジェンダー格差がアメリカで過去最大に “非大卒男性”が直面する「絶望的な社会構造」【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.162】

アメリカでは1980年以降、大卒者の数は男性よりも女性の方が多い傾向が続いていたが、「学位のジェンダー格差」はこの5年ほどで加速し、過去最大になっている。

学位を持つ女性が増えることは「社会の発展につながる」とポジティブに見られているが、問題は男子学生の減少である。

学生数自体は5年前と比較して約150万人減っており、「男子学生の減少が著しい」。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校では2013年から2020年に入学者数は約3000人増えているが、男子学生の割合は45%から41%に減少。つまり、増加分のほとんどは女子学生が占めている。

また、この「学位のジェンダー格差」は、学歴による生きがい格差も生んでいる。非大卒者は、不安定な社会のなかで大きな経済的打撃を受けやすく、失業もしやすい。

近年、アメリカでは学位を持たない人々の、薬物や自殺、アルコール性肝疾患による死亡率の上昇が指摘されているが、この「絶望死」の多くを占めているのも、生きがい格差の谷に落ちた非大卒の男性だと言われている。

男性の人生は「ジグザグである傾向が強い」

「アトランティック」によれば、高卒率、大学進学率、卒業率ともに女性の方が高いのは、女性の独立(社会進出)とエンパワーメントへの道は、「学位によって開かれる」と信じられてきたことが大きいようだ。

実際、女性社会には学位を取得してキャリアを築くという「直線的な教育の軌跡」がある一方で、男性の道は「ジグザグである傾向が強い」と書く。

それでも20世紀は「落ちこぼれ」はしなかった。非大卒も製造業や鉱業などに従事し、中流階級の給与を期待できたからだ。だが、21世紀は知識社会が高度化するにつれ、仕事に必要とされる学歴や資格のハードルが上がり、高卒で中産階級の賃金を稼ぐのは至難の業になった。

同時に、製造業の衰退によりブルーカラー同士、また、地域の教会などで育まれていた共同体感覚も喪失した。

最悪のシナリオは 政治的二極化がジェンダーによって強化されること

こういった​学位のジェンダー格差は、文化的・政治的な二極化にも影響していると、「アトランティック」は書く。

アメリカでは、女性と大卒者は民主党を、男性と非大卒者は共和党を支持する傾向が指摘されているが、専門家らは、「政治的二極化がジェンダーによって強化されてしまえば、あらゆる問題が今より悪化するだろう」との懸念をみせている。

また、このまま大学の女性率が高くなり「大学=フェミニンな場所」、「男性のアイデンティティを“教育”と対立したもの」としてみる人が増えてしまうことを懸念する声もあるという。

ペル高等教育機会研究所の上級学者も 「大学が介入するまで待つと手遅れになる」と警告。これは「国全体の問題」であり、「大学だけではなく、社会構造の問題」として扱うべきだと重要性を強調している。

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