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日々の雑感73【サッカー日本代表の姿に映った私達とは?】

☆リスペクトなき論争に意味なし

オリンピックやワールドカップといった大きなイベントが起こると、私たちは日本代表という姿に自分を映し、何かを期待し、何かを失望し、そして何かを訴える為に生じた自分自身の感情に対して適切な「言葉」を探します。

結果評価とプロセス評価の対立、長期戦略と短期戦術の対立に代表される、そもそもで議論の前提がすりあわされていないまま、正解のない「正解」を主張し、争うことにはなんの生産性もありません。

ましてや、感情的に「黙って信じて応援しないやつは非国民」といった感情論で知性的な分析や見解の議論を否定するなんてあってはなりません。メディアに扇動され、こうした感情論が世論になったからこそ、私たちの過去に「戦争」という選択がもたらされた歴史を忘れてはいけないからです。

なので、ここではこうしたすりあわせのない論争を目的としていないことを最初に記しておきたいと思います。

☆「獲得」と「回避」の心理選択に生まれたギャップ

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし(野村克也)

という言葉があるように、私たちは負けた試合の中にこそ、未来の私たちにとって大事なことがあると認め、痛い記憶と向き合い、繰り返さない為の努力をする必要がありそうです。

今回、メンタルコーチとして僕がこのテーマを選んだのは、過去にもずっと繰り返されてきた私達、日本の心理課題がそこに潜んでいるように見えたからです。

敗れたコスタリカ戦とクロアチア戦の後でギャップを感じたのは「勝ちたい」は共通していたけれど「具体的」「どのように」という部分で選手の間に違いがあった。目的と目標、その為のプランに対し、根底のマインドセットが不十分だった可能性です。

クロアチア戦では90分で勝つという意志が守備陣には希薄だったように感じました。コスタリカ戦の「引き分けでも良い」とクロアチア戦の「延長でも良い」とい思考には、リスクへの怖れ。つまり回避フォーカスが発生していたと指摘できそうです。また、このワールドカップが最後になるという守備陣ベテラン勢のコメントからは「証明」のマインドセットを感じるような言葉を見るケースもありました。

一方、アジア予選からこのチームでは使われる機会が少なかった三笘選手や堂安選手と言った若い攻撃をつかさどる選手からは明確な「成長」のマインドセットとリスクに挑む果敢な獲得フォーカスを感じるシーンが多かったことは皆さんも試合を通じて感じていらっしゃったのではないでしょうか。


☆証明回避と成長獲得による判断、行動の相違

こうした研究の第一人者であるコロンビア大学のハイディ・グラントが語るまでもなく、もし本当に日本代表が世界のベスト8を超えていくのであれば「成長獲得」への思考チェンジが不可欠です。

痛いですが先制点をあげて逆転負けした試合を日本代表は重ねてきました。ドイツW杯でオーストラリア、ブラジル戦。ブラジルW杯でのコートジボワール戦。ロシアW杯でのベルギー戦。そして今回のクロアチア戦と同じように決勝トーナメントでPK戦になり敗れた南アフリカW杯のパラグアイ戦。

先制点をとったり、試合を優位に運べている時ほど、こうした戦っている選手の前提となるマインドセットにギャップが生じ、判断や行動がずれていき、瓦解しました。特に、ドイツW杯ではこうしたマインドセットの違いによる「正解」の戦いの中で、成長獲得思考を持つ選手たちと証明回避思考の選手たちが対立し、チーム崩壊に至ったったようにも見えました。その姿こそが、まさに日本の縮図のようにも感じたわけです。

☆森保監督の功績に思うこと

森保監督が素晴らしかったのは、こうしたドイツ時のようなチームが瓦解するような気配を微塵も感じさせない。そんなチームビルディングを達成したことにあると思います。

一方で、そのビルドされたチームの次。チームワークという点では、ワールドカップという舞台でこれまでの日本代表と同じ落とし穴にはまってしまう結果になってしまいました。

上記に前回のリンクを貼りましたがオシムさんの言葉を思い出すなら、

【サッカーにおいては非インテリジェンス、エゴイスト的な選手はとても分かりやすい。リスクを冒す才能を持っていない選手も分かりやすい。言うまでもなく、リスクを冒す心の準備を持っていない人は成功しない
【問題を他人とは違う方法で早く解決できるプレイヤーをインテリジェンスがあると呼べる。そこにはセオリーというよりもオリジナリティがある】

ということです。もし、ベスト8を本気で目指すならば、その勝負となる舞台には「成長獲得」思考の選手を揃える必要があります。リスクを回避しながらただ現状を維持し、守るという名の後退にエネルギーを消費していては、何かを獲得することは出来ません

迷いなく振りぬいた堂安選手のシュートやTV解説だった岡田氏が「たった一人で違いを生み出してる」とうなった三苫選手のアタックは、こうした「成長獲得」の輝きを示してくれたのではないでしょうか。

☆私達自身はどう? 何を学ぶ?

さて、かくして日本代表を通じて私たちは、様々な私たちの内面にアクセスすることができたわけです。誰に共感し、どんなシーンに私たちは心を動かされてきたでしょうか?

その感情の一つ一つが、今の自分自身の状態を私たちに教えてくれています。僕自身は、1-0であってもリードを忘れてもう一点を取る勝負をしたい自分がいましたし、成長獲得の強い意志を持つ三苫選手と堂安選手、伊東選手らの力にフォーカスした戦術での戦いをみたいという気持ちも湧き上がってきました。

つまり、善戦や努力といった言い訳による「結果」を逃げ道にするのではなく、目的に対して純粋に挑戦し、勝負する姿を求める自分がそこにいたのです。

皆さんはいかがでしたでしょうか?

逃げだすことより、進むことを選ぶ。
そんな誰かと共に歩み、共に物語をこの時代に作っていけますように。





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