護身グッズのグレーゾーン
防犯護身という話題になると一度は話題に上がるのが「防犯グッズ」「護身グッズ」ではないでしょうか。
ただ種類によっては持ち歩いていると法律に違反するものあります。
法律違反かどうかよくわからずに持ち歩いて警察官に職務質問されることを考えると、持ち歩くことに抵抗感を覚えてしまうかもしれません。
ということで今回は「防犯グッズ」「護身グッズ」と法律との関係について解説していきます。
まず防犯護身グッズに引っかかる法律は2つあります。
・銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)
・軽犯罪法
【銃刀法違反】に該当する可能性があるとしたら
・銃砲に関する法律違反行為を行なった場合
・所持の許可を受けていない銃砲刀剣類を所持している場合
・銃刀法違反に該当する刃物を正当な理由なく持ち歩いている場合
などです。
例えば銃刀法に該当する包丁を持ち歩いていた場合に、
「料理人として出張料理で移動中であること」「購入して家に持ち帰る途中であること」
が証明できれば、正当な理由があるため法律違反になりません。
銃砲刀剣類の定義に関しては銃刀法から以下に抜粋
長いので飛ばしてOKです。
↓
(定義)
第二条 この法律において「銃砲」とは、拳銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃(圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるものをいう。以下同じ。)をいう。
2 この法律において「刀剣類」とは、刃渡り15センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくち並びに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ(刃渡り5.5センチメートル以下の飛出しナイフで、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であつて峰の先端部が丸みを帯び、かつ、峰の上における切先から直線で1センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して60度以上の角度で交わるものを除く。)をいう。
(刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物の携帯の禁止)
銃砲刀剣類所持等取締法 第22条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが8センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。
銃刀法に気をつけないといけない一般の方は限られるでしょう。
例えば居合をしていて真剣を所持している場合などでしょうか。
実は防犯グッズ、護身グッズがこの銃刀法に引っかかることはほぼありません。
むしろ銃刀法に引っかからないことをウリにしていることも多いでしょう。
防犯・護身グッズが実際に引っかかる可能性が高いのは二つ目の「軽犯罪法」です。
軽犯罪法違反となると拘留(1日以上30日未満、刑事施設に収監される)または科料(1000円以上1万円以下の罰金)が科されます。
防犯グッズ・護身グッズが該当する項目は以下になります
軽犯罪法
二 正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
ポイントは
・正当な理由がなく、隠して携帯していること
・刃物、鉄棒その他人の生命を害し、または身体に重大な害を加えるのに使用される器具であること
この2つです。
*「じゃあ」と隠さずに堂々と持ち歩けば都道府県条例など他の法律違反になります。
軽犯罪法2項が禁止しているのは「携帯」であり、自宅などに「所持」している分には法律違反にはなりません。
刃物、鉄棒はイメージがつきやすいですが「その他人の生命を害し、または身体に重大な害を加えるのに使用される器具であること」って具体的に何かわかりにくいかもしれません。
「一般的に考えて人の殺傷目的に使用されるもの」と考えましょう。
例えば
・メリケンサック
・鎖分銅
・暗器類(手裏剣など)
・クボタン
・タクティカルペン
・警棒(警備員が持つことは業務上正当な理由に当たる)
・木刀(武道の稽古は正当な理由に当たる)
・ハンマー(正当な理由が必要)
・鉄製の鞭
これらは人を殺傷する目的で作られているものなので隠して携帯した場合に軽犯罪法違反になります。
ですが自宅などへの「所持」はOKです。
反対に使い方によっては人は殺傷できるものは含みません
・ベルト
・鉄扇(護身用に販売されているものは違反)
・馬用革製鞭(乗馬に行くなどの正当な理由)
・シャベル、スコップ(軍用のものは違反の可能性あり)
・盾
・フラッシュライト(他に侵入工具を持っていると別の項目でアウト)
ではメジャーな「スタンガン」「防犯スプレー」はどうなるのか。
よく調べてみると「警察官による」という内容が多いですね。
実際とってもグレーゾーン。
違法に改造されたスタンガンや強烈な成分を含んだ防犯スプレーは、身体に重大な害を与える可能性があるため軽犯罪法に引っかかる可能性も高くなります。
そもそも実際にスタンガンを使うことを考えると間合いが狭く、実際に襲いかかってきた犯人に使おうと思えばかなり接近しないといけません。
基本的な戦闘技術を身につけ、かつスタンガンを活かす動きができるような訓練をしなければ犯人に奪われる危険性もあります。
むしろ死角から近づき、不意打ちする際に使用することが簡単かつ効果的です。
普段から戦闘訓練をしていないのならスタンガンを持っているから安心だと思うことは危険ではないでしょうか。
犯人に押し倒されて覆い被さってきた時に死角から使うというのが最も現実的だと考えています。
しかしそのような状況で冷静にスタンガンを見ないで手に持ち犯人に押し当てるのはハードルが高いでしょう。
反対に防犯スプレーは遠い間合いで使用できることが大きなメリットです。
犯人の顔に向けて噴射するだけですし、注意することは犯人との距離が必要なことと、風向きぐらいでしょうか。
そもそも防犯グッズで通常販売されているスタンガンは犯人を怯ませる程度の威力に抑えられていたり、防犯スプレーの成分も後遺症が残らないようにしているものが大半です。
それでは軽犯罪法の「その他人の生命を害し、または身体に重大な害を加えるのに使用される器具であること」に該当するとは厳密にはいえません。
ここからは個人的な意見ですが、なぜ警察官はそれでも軽犯罪法違反としてスタンガン、防犯スプレーを扱うのかを考えてみました。
それは「他の犯罪の手段として使用された場合の有効性が非常に高いから」だと考えています。
ストーカーがスタンガンや防犯スプレーを持っていることを想像したらかなり恐ろしく感じませんか。
それを「夜道が不安なので護身用です」という説明を正当な理由としてしまえば、それは誰でも持つことができることと同義です。
「護身用です」と言われて警察官が納得し、その後に犯罪に使われたとしたら、そう思うとそう簡単に見過ごすことはできないものです。
しかし防犯グッズ、護身グッズの購入を検討する人の大半は自分や家族の身を守りたいと思っている方たちです。
そういう人たちからしたら「じゃあ犯罪が起きようとも丸腰でいろってことか!」と納得できないことでしょう。
この問題はどっちの主張も間違いではないため「これが正しい!」と決めることは極めて難しいことです。
インターネットで色々調べると
「具体的な危険が迫っていた場合に警察に相談に行き、記録に残した上でグレーソーンの防犯・護身グッズの携帯していいか聞きましょう」
とか
「軽犯罪法を厳密に解釈すれば防犯護身グッズで販売しているスタンガン、防犯スプレーは違反ではない」
とか書いてありますが、警察官の視点に立てば、国民の生命・身体・財産を守ることを前提に考えれば見過ごせるわけがないのです。
しかし本当に深刻なストーカー被害に遭っていて"すでに警察に相談もしている"けど、被害が継続している状況だった場合を考え、
「やむなし」と現場で判断できるように余白のある法律の内容にしていると考えています。
なので持ち歩くのならば自己責任で職務質問をされて没収、罰金などを科されることを覚悟しましょう。
私は正直、職務質問されて交番や警察署に連れて行かれて時間を取られる可能性があるほうが嫌だと思っています。
その代わりに合気道もしつつ、アマチュアの異種格闘技のようなこともして戦闘訓練を継続しています。
今は防刃Tシャツや海外製の防刃性能の高いアウターの購入も検討中です。
もし私と同じように法律違反になるかどうかを考えてストレスを感じるのならば、違反にならないものを選ぶようにしましょう。
もちろん違反性がないということは、殺傷能力はかなり低くなるため使い方の訓練は必要にはなります。
最もオススメなのが「防犯ブザー」です。
しかもボタンタイプではなく、引っこ抜くタイプ。
↓
ボタンタイプはボタンを押下しているときに鳴るので犯人に奪われる可能性があります。
しかしひっこ抜くタイプは一度鳴らしてしまえばそうすぐに止めることはできません。
効果的なのは一気に3つ鳴らして、そのうち2つは道端に投げ捨てることです。
目立ちたくない犯人からしたら最もして欲しくないことではないでしょうか。
二つ目はフラッシュライトです。長い物だと棍棒の要素も含むとされる可能性があるので、あまり長さがないものを選びます。
注意が必要なのが、ライトの他にドライバーなど家に侵入するときに使う工具を持っているとアウトです。
軽犯罪法
三 正当な理由がなくて合かぎ、のみ、ガラス切りその他他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
この侵入工具に該当してしまいます。
フラッシュライトも遠い間合いから使うことが可能で、犯人の顔に当てて目眩しをし、その隙に逃げることができます。
フラッシュライト自体も頑丈なので、近距離武器としても使用は可能です。
しかし使い方がわかっていない状態で近距離武器として使うことは危険なのでオススメできません。
防犯ブザーもフラッシュライトも基本的には犯人と間合いを取って使用すると効果的なグッズです。
犯人との間合いが近くなるにつれて危険度と必要な戦闘技術が増していきます。
まとめると
・殺傷性の高い護身グッズは基本的に携帯できないので自宅に保管
・スタンガン、防犯スプレーはグレーゾーンのため携帯する際は自己責任
・犯人と間合いをとって使用すると効果的、かつ法律にも引っかからない防犯ブザー(引っこ抜くタイプ)や短いフラッシュライトがオススメ
・いくら武器を持っていても犯人と間合いが近くなるなら訓練は必須
防犯グッズ、護身グッズは携帯したい側も正しいし、悪用されて国民に被害が出ることを防ぎたい警察側も正しいことが問題を難しくしています。
防犯スプレーやスタンガンなどは製造番号と購入者の名前と住所を紐づけたものを警察署に提出する、といったこともするといいのかもしれませんね。
私はフラッシュライト付き防犯ブザーを持ち歩くようにしています。
特に帰りが遅くなる日や、治安が不安な地域を通る時はいつでも鳴らせる位置に取り付けます。
先ほども載せた引っこ抜くタイプですね。
↓
実際にストーカーなどの被害に遭っているのなら警察署の生活安全課にまずは相談、特に動いてくれないのなら被害届を出すのもありです。
被害届は「犯人を捕まえてください」という具体的な意思表示になりますし、かなり強い物的証拠になります。
もし被害届を出せなかったのなら具体的な理由を問いただしてください。
それでも渋ってきたら副署長に電話をしましょう。
それをきちんとメモや音声録音をし、法律家の人に聞いてみましょう。
被害を防ぎたいのなら警察を徹底的に利用してください。
その上で防犯護身グッズを持つかどうかは私たち一人一人の判断になります。
では。
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