【第十九場…漁師 vs. 詩人さんの歌】
《E氏→ここはよくできている歌詞だと感心しました》
♪とうちゃん キラい
とうちゃん キラい
「みんな一緒に歌おう!」
詩人さんが、いっしょうけんめいにあおりますが、みんな驚いています。村人の音楽も止まりました。ありがとう星人のおじさんのドラムだけが続いています。
♪とうちゃん キラい
とうちゃん キラい
「ふざけるな!」
怒りだした人もいます。どちらかと言うと漁村には血の気の多い人が多いんです。じりじりと詩人さんににじり寄ってきました。
♪とうちゃん キラい
とうちゃん キラい
「この野郎! ケンカ売ってんのか? そんな歌やめろ!」
ひとりの漁師さんが、詩人さんに殴りかかってきました。でも、詩人さんは、ヒョイとかわします。
♪帰ってこないとうちゃん 大キラい
帰ってこないとうちゃん 大キラい
さっき、殴りかかった漁師さんが、えっ?という顔になりました。詩人さんは平気な顔で続けます。
♪とうちゃん キラい
とうちゃん キラい
帰ってこないとうちゃん 大キラい
帰ってこないとうちゃん 大キラい
♪とうちゃん キラい
とうちゃん キラい
帰ってこないとうちゃん 大キラい
帰ってこないとうちゃん 大キラい
♪とうちゃんに会いたくて
今日も港に行った
カモメたちと一緒に
泣いちゃったゴメン
また肩車してほしいな
腕にぶらさがりたいな
♪夕べ見た嵐の夢
船ひっくりかえった
おねしょと一緒に
泣いちゃったゴメン
海はおっかないけど
ボク漁師になりたいな
♪おねしょするから
帰ってこないのかな
いい子にするから
また遊んでとうちゃん
♪とうちゃん キラい
とうちゃん キラい
帰ってこないとうちゃん 大キラい
帰ってこないとうちゃん 大キラい
♪あんたに会いたくて
港に行こうと思って
子ども寝かせつけてたら
一緒に寝てたゴメン
高い月がきれいだよ
あんたと見たいよ
♪朝日を見たくて
ひとり港に行った
陰膳(かげぜん)持ってきたけど
食べちゃったゴメン
バカなわたしを叱って
やさしく抱きしめて
♪ケンカ売るから
早く帰ってきて
笑い飛ばしてくれる
あんたが好きだよ
♪とうちゃん キラい
とうちゃん キラい
帰ってこないとうちゃん 大キラい
帰ってこないとうちゃん 大キラい
♪ガキの頃から海育ち
じょうずのひとつも
言えねえバカで
度胸と力だけが支え
そんなオレがこんなに
変わっちまった
♪家族の笑顔見たくて
みんな頑張ってら
たくましい野郎どもが
夜中にゃすすり泣く
それでも朝 男は
男の顔になる
♪毎日夢を見る
早く会いたい
お前たちと食う
メシが一番うめえ
♪とうちゃん ダイスキ
かあちゃん ダイスキ
遊んでくれるとうちゃんも
おこりんぼのかあちゃんも
どっちもスキスキ ダーイスキ
何もすることのないキリット大統領は、いつのまにか踊りだしていました。踊ったことなんかない人ですから、とてもヘンテコリンな踊りで、それを見ていた漁村の人たちも笑いながら踊りはじめました。
「とうちゃんキラい」
って叫びながら踊っています。漁港は拍手喝采で、みんな大喜び。元々、陽気な人たちばかりですから、お祭騒ぎは大好きです。女の人たちが、魚で料理を作って、本当にお祭りみたいなパーティが始まりました。もう飲めや歌えの大騒ぎです。パーティは夜中まで続きました。
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