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第十九話 「この町から出て行く人ばかり、来てくれたのは本当にこの町の希望になる」


移住してすぐのこと。
やはりこの町に移住してくる若者は相当珍しかったようだ。
借りた家のある地区では100世帯あるが、
移住者は実に50年ぶりだそう。

「この町から出て行く人ばかり、
来てくれた三井さんはこの町の希望だよ!」
「若いからパソコンできるでしょ?パソコン教えてね!」
「この重い荷物運んでもらえる?」
「新しい事業をやりたいから智恵をかしてほしい。」

頼られるのが嬉しくて、最初はなんでも引き受けた。
畑の雑草とりのような小さなお手伝いや、
町内唯一のパソコン教室の開設、
漁師の生活を激変させるような
大きなプロジェクトまで。
ありとあらゆることを、できる限りやっていこうと思った。

この町に移住したことは間違いじゃなかった。
そう思える日々だった。
いや、そう、思いたいがために、
なんでも引き受けていたのかもしれない。

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