都市の曇天に香る密林は原始を思わせ、知りえぬ本当の大地を奇妙に懐かしく思う。窓を開けて青い夕方を取り込む。雑踏が遠い。鳥の声は厭世的に反響し、都市の退廃を謳うようだ。この時、総てがくだらなく思える。私は文明に拝謝し、しかし文明を嫌悪する。欲する無限への帰還を畏れる己に辟易する。

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