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脳を理解して、最高のパフォーマンスを出す

こんにちは。広告代理店でプランナー兼マネージャーをしております、ナカムラです。今日も学びの整理を兼ねて、「最高の脳で働く方法」という書籍を紹介したいと思います。

本書は、日常的な悩みや課題に対して「脳の仕組みはこうなっているから、こう対処すればよいのだ。」という形で、実践的な対処法を教えてくれます。自分自身に適用するだけでなく、マネジメントにも有用です。

本書にある14のテーマを簡単にまとめ、関連情報と併せて紹介していきます。4つのブロックに分かれているので、目次から気になるブロックやテーマに飛んでいただいても大丈夫です。1テーマ30秒~1分で読めます。

【1】集中力と知的生産性を高める→1)~6)
【2】モチベーションと感情をコントロールする→7)~9)
【3】他者と協力し、敵を味方に変える→10)~12)
【4】組織に新たな変化をもたらす→13),14)

1)意識的思考の使い分け

判断する、記憶する、思い出すなどの思考を意識的思考と呼びます。意識的思考は、脳のエネルギーを大量に消費してしまうので、①エネルギーの節約②優先順位付けが重要だと言われています。

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例えば、

決断する回数を減らすために行動をルーティン化する
例)服のパターンを決めておく、日用品は定期購入で届くようにしておく

頭の中に溜め込まないですぐに吐き出す
例)ボイスレコーダーに吹き込む、リスト化する、絵に描いて視覚化する

などは、エネルギーの節約に有効です。

そして、創造的な仕事は脳が元気な午前に、作業やルーティンワークは午後に、というように仕事の性質に合わせて時間帯を分ける(優先順位を付ける)ことで生産性が高まります。

2)短期記憶をハックする

情報を短時間保持するシステムを短期記憶と呼びます。短期記憶の最適容量は3~4つで、それを超えるとどんどん記憶力が低下していきます。なので、①情報の単純化②情報のチャンク化③取捨選択が重要です。

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単純化とは、いわば「要点を絞る」ということですね。ビジネスコミュニケーションではよく言われることですが、記憶する際にも有用なアプローチです。

また、チャンクとは「塊」を指します。複数の情報を塊にすることで記憶しやすくするのが「チャンク化」です。1つのチャンクは2秒以内に復唱できるサイズが望ましいそうです。チェスの名人が即座に打ち手を決められるのは、チャンクを活用しているからだとか。

チャンク化の例が紹介されている記事も載せておきますので、ご参照ください。

3)マルチタスクは禁じ手

チャンク化で複数の情報を記憶することはできても、パフォーマンスを維持しながら複数のプロセスを意識的に実行できないのが脳の限界です。同時にできているように見えて、実は細かく切替えを行ないエネルギーを浪費しているそうです。

どうしてもマルチタスクが必要な場合は、組み合わせる作業を「ルーティン作業」にすることが推奨されています。

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常にメールやチャットを並行して行なっていると、知能指数(IQ)が女性は5pt、男性は15pt低下するというデータもあります。睡眠不足と同じくらいの影響らしいですが、男性に関しては大麻吸引の約3倍のダメージだとか…。

4)集中力を維持する

人間の脳は、周囲の変化に瞬時に注意を向けるように進化した結果、注意散漫になりやすいのだそうです。気付いたらSNSを開いていたり、ほかごとを長々と考えてたりしてしまうのは、仕方がないことだったんですね。

したがって、集中力を維持するには「集中するぞ」というアクセルではなく、注意散漫要因を抑えるブレーキが重要なのです。

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外的ディストラクションは可能な限り取り除き、内的ディストラクションは、作業の前に瞑想するなどして頭をすっきりさせておくことで発生リスクを減らすことができます。

それでもディストラクションを完全に除外するのは難しいので、日頃からブレーキを掛ける訓練をして、ディストラクションが勢いに乗る前にブレーキを掛けることが大切です。

例)待ち受けに「No! SNS」と入れる、指パッチンを切替えの合図にする

こんな風に、自分なりのルールや合図を決めておいて、体に刷り込んでおくと効果的です。

5)適度なストレスで最高のパフォーマンス

脳が最高のパフォーマンスを発揮するには適度なストレスが必要と言われますが、これは危機感と興味にかかわる2つの物質(アドレナリンとドーパミン)が適量放出されている状態なのだそうです。

「適量と言われましても…」という感じなんですが、これは個人差があるのでいいパフォーマンスが出る時の感覚を掴むしかないみたいです。

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例えば、

・成し遂げた時の姿や周囲の反応を具体的かつポジティブに想像する
・危機感が足りない時は、その仕事を後回しにした時の恐怖を想像する。
・興味が足りない時は、作業にユーモアを取り入れる。

などを行なうことで、ハイパフォーマンスな状態を意図的に作り出せます。

本書内でも触れられていますが、チクセントミハイのフロー理論も参考にしたいですね。フロー理論では、5つの条件が満たされた時に最高のパフォーマンスが発揮されると言われています。

1. 活動の目標が明確であること
2. 成果に対する迅速なフィードバックがあること
3. 機会と能力のバランスが良いこと。適切な難易度であること
4. 十分に集中できる環境にあること。今の問題に集中できること
5. 対象への自己統制感(コントロールしている感覚)があること。

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(salesforce blog「社員を幸せにするゲーミフィケーション」から抜粋)

6)行き詰まりからの開放

なかなか答えが出ず、堂々巡りを繰り返してしまう時がありますよね。新たな問題に直面したとき、脳が過去の有効な解決策を探すことに活性化してしまい、新しいアイデアが生まれることを阻害しているのだそうです。

ここから抜け出すには活性を抑制する、つまり考えるのをやめるしかないみたいです。そしてリラックスできる状態に切り替えて、深ぼるのとは真逆に問題を俯瞰して、情報と情報のつながりがないかを眺めるのだそうです。

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これでアハ体験的にアイデアが浮かべばいいのですが、そうとも限らない不安を拭いきれません…。もう少し地に足の着いた方法を一つ紹介します。「問いを見直す」という方法です。

ある程度考えて答えが出なければ、今考えている問いそのものを見直す、というのはかなり有用な手段だと思います。よほど創造性が高い問題でなければ、大体はこれで解決できると思っています。

7)思わぬ展開での動揺を支配する

脳には、危険を最小化する回避反応(不安や恐怖)と、報酬を最大化する接近反応(好奇心や満足)があります。木になった赤い実を見つけた時に「危険だよ!」と恐怖心を煽るのが回避反応、「美味そうだよ!」と好奇心を煽るのが接近反応、みたいなイメージです。

特に回避反応は強力で、不安や恐怖、緊張などの情動が起こると抑えるのが難しく、脳機能の低下を引き起こします。

こういう時に、無理に抑え込もうとしてもうまくいかない…という経験は多くの方がお持ちだと思います。しかも抑え込もうとすると、それが周囲に不快感を与えるという実験結果もあるそうです。

効果的な手段として紹介されているのが、①客観的な情動の観察②情動のラベリングです。そこまでできれば、意識を別のことに向けることができます。

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もう一人の自分が、怒りそうな自分を眺めて「これは『ぷんぷんモード』だねぇ」とか言ってたら、何となく静まりそうな気がします。

8)不確実性という脅威に対処する

脳は確実性や自律性を強く求めるのだそうです。経営者に筋トレや料理を趣味にしている人が多いのは、不確実な経営とは逆にトレーニングすれば成長する(=確実性が高い)から、と言われたりします。

確実性や自律性を欠くと、回避反応(7参照)が起こります。本書では、大きく2つの対処法が紹介されています。

1つは「選択肢を生み出す」ことです。誰かに決められたことだとしても、他の選択肢を作り出し、当初の選択肢がベストである理由付けを行うことで情動を軽減できるそうです。

もう1つが「認知的再評価」です。これは4つのタイプに分かれます。少し小難しいのであえて簡略化して説明します。

出来事の再解釈…そもそもポジティブに捉え直しちゃう
ノーマライジング…こんなの普通だよ!と捉えて吹っ切れる
価値観の再整理…自分の価値観が邪魔をする時に価値観を見直してみる
視点の再配置…相手目線や過去/未来など、立場を変えて捉え直す

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再評価を容易にする方法として、

・コーチングやメンタリング…人の手を借りて新しい見方に気付く
ユーモア…とにかく笑える視点に着地させたり、面白いことに目を向ける

なども紹介されていますので、状況に応じて使い分けたいですね。

9)期待値コントロール

期待が満たされない時、脳内ではドーパミンレベルが急落し、回避反応が生じます。その結果、落胆、怒り、悲しみなどの情動が引き起こされるそうです。また期待を高く持ちすぎると、期待に合う情報だけを取り入れ、合わない情報を無視するということも発生します。

「期待」は適度な状態を保ち、ほどよく満たし続けることで幸福度が高まると言われています。そのためには、①不確実な期待は抑制する②確実に訪れる期待に注意を向ける、と良いそうです。

①不確実な期待は抑制する…例)宝くじを買っても過度に期待しない
②確実に訪れる期待に注意を向ける…例)休日がやって来ることを期待する

結婚生活がうまくいかない要因は「相手に期待しすぎているから」という話があります。「夫なら/妻なら、これくらいやって当たり前」という無意識の期待が、日常的に満たされないことで怒りにつながってしまっているとか。「あくまでも他人」というスタンスで過度な期待をしないで、些細なことに感謝できると円満な家庭を築けるのだそうです。

10)敵を味方に変える

人間の脳にとって「社会的つながり」は食欲に並ぶ強い欲求で、これが満たされるかどうかはパフォーマンスに大きく影響します。これがポジティブなつながりであれば「味方」、そうでなければ「敵」と、脳が相手を分類するそうです。前者の場合、パフォーマンスが高まります。

初対面でいきなり何かを提案したり、共同作業をしたりしてもうまくいかないのは「脳は知らない相手を『敵』に分類する」という特性に由来しているそうです。だから、アイスブレイクを通してお互いの人間性を知ったり、非公式な場で会っておいたりすることが有効なんですね。

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心理的安全性が保たれているとパフォーマンスが高まる、というのはチームメイトを「味方」として判断できている、ということです。

ちなみに、「味方」と判断するには相手の感情を自分のことのように脳が感じるとよい(ミラーニューロンの活性化)そうで、環境によってそのレベルが変わるそうです。

環境によるレベルの差…音声<映像<対面

対面機会が減ってリモート環境が主流になっている今、新しいつながりを作るには少なくとも映像があるとよい、ということですね。

11)不公平感の解消

社会的つながりと同様に、公平性も脳にとって強い欲求なのだそうです。「2人の被験者がお金を分け合う」という実験をした時に、10ドルの内の5ドルを受け取る方が、20ドルの内の5ドルを受け取るよりも脳が活性化したそうです。同じ金額でも、公平感がある方がポジティブに感じるわけです。

不公平感への対処法は、テーマ7とテーマ8で紹介したラベリングと再評価が有効です。

逆に、公平感を高めることで幸福感を得ることもできます。そこで有効なのが寄付やボランティアへの参加です。脳が敏感なのは自分の公平性だけではなく、周囲の公平性も対象らしく、前述のような活動で公平感が高まるそうです。

「動機が不純だ!」という方もいらっしゃるかも知れません。が、私は支持します。的を得た意味ある活動であることと、相手に見返りを求めないことが成立していれば誰も損はしないと思います。

12)社会的ステータスへの欲求

人間の脳には醜い回路も備わっています。それがステータスへの欲求です。あくまでも相対的に「相手よりステータスが高い」と感じた時に報酬回路が活性化します。

8),10),11)で説明してきた、確実性、自律性、つながり、公平性と併せて、脳が生存に関わる問題として捉える5つの要素を「SCARFモデル」と呼びます。それほど強い欲求ということですね。

SCARFモデル…Status(ステータス)、Certainly(確実性)、Autonomy(自律性)、Relatedness(つながり)、Fairness(公平性)

だから「人と比べても意味がない」と頭で分かっていても、ついつい比べてしまう…ということが起きてしまうんですね。なので、比較対象を変えて「自分を競争相手に置くことで脳を騙す」ことが有効というわけです。

イチロー選手も「人より頑張る事なんて、とてもできないんですよね。あくまでも、はかりは自分の中にある」と引退会見で語っていましたが、これは科学的にも正しいアプローチだったのです。

あと、年長者や職位の高い人は周囲のステータスが脅かされていないか、気を配ることが必要です。腰の低い方に好感を持つのは、ステータスの脅威が和らぐからなんですね。失敗談を共有したり、脇の甘さを見せたりすることで脅威を和らげることができます。

13)相手が行き詰まった時の対応

自分のチームメンバーや同僚が行き詰まった時に、フィードバックや提案をするより、相手が自力で答えにたどり着くように問いを与えるのがベストな対応である、というのはよく聞く話だと思います。

その理由は、SCARFモデルにあります。フィードバックも提案も、どこかが欠けて脅威になってしまうリスクがあるんですね。

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なので、相手が自分で答えを見つける手助けができると、SCARFを満たしながら問題を解決できるというわけですね。「自分でやった方が速いのに!」というマネージャーの葛藤はよく分かります…が、まずはひと呼吸おいて、SCARFモデルを思い出してみて下さい。

本書の例をみると、まずはステータスへの脅威を取り払う言葉で柔らかく質問を始めて、解決策に目を向けた問いをする、というのが良いそうです。

「理解を深めるために、少し質問してもいいかな?」
「今回のゴールはどこだっけ?」
「最終的にどうなっていればいいんだろう?」
「他に試せる方法はないかな?」など

14)文化を変える

最後は、これまでの総集編に近いです。脳の仕組みについて軽くまとめつつ、複数人の変化を促す(文化を変える)方法について説明します。

・脳には、回避反応(不安や恐怖)と、接近反応(好奇心や幸福)がある。
・回避反応は脳機能の低下をもたらし、接近反応は向上をもたらす。
・これらの反応に大きく影響する要素をSCARFモデルと呼ぶ。
・SCARFとは、ステータス、確実性、自律性、つながり、公平性を指す。
・これらを満たすことで接近反応を起こし、パフォーマンスを高めることができる。

これらの前提をもとに、集団に変化を促すには3つの要素が必要だと説かれています。

①安心できる環境作り…SCARFモデルを活用して接近状態を作る。すべてを用いても、特に脅威に感じやすい点に絞ってもよい。

②目標に注意を集中させる
…解決策に向かう質問を投げかける。13)参照。自律的に考えるので、行動の変化につながる。

③繰り返し目標を意識する仕組みを作る
…一番よいのは共働すること。プロジェクトについて話す機会やアイデア共有会などを定期的に設ける。

この3つのステップを実行する上で、相手の注意がどこに向いているのかに気付くことが重要だと書かれています。まず各自の注意そのものに目を向けて、それから注意を集中させる方法を考えましょう、ということですね。

ここに書かれているのは、あくまで「脳神経学的視点から文化を変える方法」であって「優れた文化を築く方法」ではありません。文化形成について深く掘り下げるなら、ベン・ホロウィッツの「WHO YOU ARE」がおすすめです。


以上、「脳を理解して、最高のパフォーマンスを出す」でした。興味を持った方は「最高の脳で働く方法」を読んでみて下さい。実際は物語調になっていて、一つひとつのテーマ毎に詳細なエピソードが載っているのでよりイメージしやすいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございましたm(_ _)m

ナカムラ

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